[Interview]
ドメイン登録は成熟期へ――.jpを世界に誇るブランドに

2002/4/9

 ドメイン名はインターネットのアドレス。だが、インターネットが普及・浸透するにつれ、ドメイン名の登録件数は増加し、その種類も増え、その役割も、単なるアドレス以上の役割を担いはじめている。「これからはドメイン登録管理も競争。ビジネスとしてやっていかないと淘汰される」と、先日、社団法人の日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)からJPドメイン関連業務を引き継いだ日本レジストリサービス(JPRS)取締役企画本部長 堀田博文氏は述べる。堀田氏に、ドメインのいま、そして将来を聞いた。


JPRS 取締役企画本部長 堀田博文氏

――4月1日より、JPドメイン名の登録管理業務がJPNICからJPRSに移管しました。その経緯を教えてください

堀田氏 JPNICは社団法人でしたが、民間になったという点で、今回の移管は大きな意義があります。この背景には、2つのことが挙げられます。1つ目が、ドメイン登録管理という分野でも競争が起こっているということ。これまで競争は少なかったのですが、今後は“.COM”などのほかのドメイン名と競争していかなければなりません。インターネットは変化の速度が速い世界です。単に登録を受け付けるだけでは、ユーザーはほかのドメインに流れてしまいます。2点目が、ドメイン登録件数の急激な増加。このような動きに対応するためには、システムの先行投資をはじめとして、人と資金の両面で、融通や機動性が求められます。このようなことは、制限の多い社団法人のルーチンワークではカバーできないことです。

 そこで、JPドメインをより広く使っていただくためには、会社組織が“サービス”としてこれらの業務を行う必要があるという結論に達し、2000年の12月、JPNICの総会にて設立されたのがJPRSです。

――移管により、今後どのようなサービスが提供されるのでしょうか?

堀田氏 実績としては、すでに2001年2月にサービスを開始した汎用JPドメインがあります。

 今後は、業務の効率化などを行い、5年以内に新サービス、あるいは新しい料金体系など、何らかの形で市場に提供したいと思っています。民間に移行すると料金が安くなると期待されがちですが、料金については、安くすればよいというものではないので、業務とのバランスを考えて考慮していくことになるでしょう。

――ドメインには“.com”など各種ありますが、JPドメインを魅力的にしていく必要があります

堀田氏 コンセプトと技術の2面で対策をとっていきます。コンセプトという点では、現在、“.co.jp”というドメインを見ると、日本の会社だな、というイメージを抱くと思います。このドメインを取得するには一定の条件を満たしている必要があるのですが、これが信頼感につながっているわけです。インターネットの世界においては、信頼感はとても大切。まずは、これまで築いてきた信頼感を生かしていきます。

 具体的には、われわれの提供する商品には特性があり、これを明確にしていきます。例えば、商品のプロモーションなど期間を限定した用途には汎用ドメインの“.jp”を、会社情報など長く存続させる用途には“.co.jp”というような使い分けができます。これを進めて、簡易に登録できる汎用ドメインの“.jp”、敷居の高い“.co.jp”など、明確に商品コンセプトを押し出していきたいと思います。

 技術面に関しては、DNSサーバの運用強化があります。われわれは単にドメイン名を売っている会社と認識されているかもしれませんが、それだけではありません。DNSの運用管理という重大な業務も行っています。現在、1秒当たりのクエリー件数は1000程度、ルートサーバになると、6000クエリー(2001年)あります。この運用を確実に安定させることは第一の使命です。目標はライフライン、つまり、公共の交通機関のレベルです。交通機関が止まる、ということはめったにありません。われわれのドメイン管理もそのレベルまで持っていきたいと思っています。実際、汎用ドメインがスタートしたときも、DNSを大幅に強化しました。

「今後、ドメインの種類は増加するだろう」と堀田氏、ある組織が複数のドメインを持ち、1つのサイトを運営するようになるという。その後はとうた(淘汰)の時代が来ると予測している

 DNSの安定運用ということでは、1997年に“.com”のDNSサーバが落ち、一部アクセス不能になるという事態が発生し一大事件となりました。また、“.cx”というドメインの登録を行っていたイギリスの事業者が倒産し、DNSサーバを放置したために、数カ月間.cxが使用できなくなったこともありました。このようなことは、あってはならないことです。DNSの運用は、見えないだけに重要です。DNSの運用はもともとボランティアベースで発展してきた経緯があるのですが、インターネットが学術界のものではなくなったいま、これには限界があります。セカンダリDNSの強化など、安定運用のためにとるべき対策を積極的にとっていきます。

 将来的には、ドメインの最終目標は、登録ではなく使用です。この先、使用のためのサービスを提供していきたい。これは、JPNICでは着手していなかったことです。パートナーであるISPやWebホスティングなどの指定事業者と組んで、仕掛けをつくったり、使いやすさの面で改善できればと考えています。これも、単純にパートナー関係を組むのではなく、パートナーのビジネスにつながるようなものにしたいですね。例えば、DNS設定を簡単にするツールを配布するなど、インフラ側から広く使えるものを提供できるとよいですね。

――今後のドメインの動向をどう見ていますか?

堀田氏 世界的に見ても日本を見ても、登録ブームが一段落し、利用の時代に入ったという印象をもっています。“.info”などの新ドメインが7個追加され登録が開始されていますが、ドメイン名そのものがある意味での成熟度に達しつつあります。

 もう一点が、ドメインのあり方です。URLに企業名などのキーワードなどを入力すると、それに近いと思われるサイトに飛ばすというサービスなどが登場しています。また、従来からの検索エンジンもあります。ユーザーがURLを直接入力する機会が減るため、ドメイン名が長くてもよいという見方がありますが、これには懐疑的です。新聞広告に、電話番号や住所とともにドメイン名を併記することはやはり必要ですし、バスの車体広告に長い文字列が並ぶのでは、訴求力があるとはいえません。

 ドメイン名、キーワード入力、検索エンジン、それぞれの得意分野があるため、ドメイン名がなくなることはないでしょう。そういった点から、どのようなケースでどの使い方が適しているのかなどを考えていく時代に入ったといえます。

――世界の中でのJPドメインの役割は何だと認識していますか?

堀田氏 技術面とビジネス面と2つで考えています。

 歴史を振り返ると、JPNICはccTLD(国別ドメイン名管理組織)の中では古く、10年以上前の村井純教授(慶應義塾大学 環境情報学部 教授、WIDE プロジェクト代表)による創立以来、技術で見てもビジネスで見ても非常にうまく運用してきた歴史を持っています。これをJPRSは引き継いだことになります。

 JPRSは、ccTLDの登録数としては世界では多いほうから5本の指に入ります。これまで培ってきたDNSの安定運用などの技術や経験を広く紹介していきたい。実際、今年3月にAPRICOT(Asia Pacific Regional Internet Conference on Operation Technology)でDNSの運用について講演を行いました。このように、われわれの方から先進技術情報を提供して、インターネットのコミュニティ(社会)自体に還元していきたいと考えています。また、海外の団体と共同で、安定運用に関する技術を開発することなども視野に入れています。

 ビジネス、あるいはコミュニティという面では、コミュニティからの支援を得られる組織である必要があります。ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)との契約の際、ICANN側は、JPドメインの安定運用に関し、政府が関与することを望んでいました。ですが、JPドメインは政府だけのものではなく、インターネットコミュニティ全体のものです。コミュニティの声をJPRSに伝えることができるように、JPNICとともに良いJPドメインにしていきたいと伝えました。これは新しいインターネットのガバナンズモデルを日本から提示したという意味で、誇れることだと思っています。

(編集局 鈴木淳也、末岡洋子)

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