[Interview]
中国でも人気、日本のORACLE MASTER

2003/7/23

 日本オラクルが同社の技術者認定資格「ORACLE MASTER」の大改定を発表したのは6月30日。その後、eラーニングサービスOracle Learning Network(OLN)も新認定資格に合わせて新名称「プレミアム・ライブラリ」として8月8日から提供することを発表した。

 さらにオラクルは、提供する定期コースやセミナーの価格を1日当たり6万円とすると発表した(実施は8月4日から)。入門コースなどでは値上げとなるコースもあり(例えば「Oracle9i入門 SQL編」は9万6000円から12万円)、そうしたユーザーに対する対応を兼ねてか、8月4日から定期コースを受講した全ユーザーには、オンライン学習教材を1カ月無料で利用できるようにする。

米オラクル Senior Vise Presidentのジョン・ホール氏。趣味で始めたばかりという尺八の演奏を披露。今回、日本で尺八を購入したが、「とても高価で、扱いが大変」だという。尺八は瞑想(めいそう)にもいいと語り、禅にも多大な興味があるそうだ

 同社の資格認定制度変更のバックグラウンドにあるのは、「グローバル化」と説明するのは、米オラクル Senior Vise Presidentのジョン・ホール(John L. Hall)氏だ。

 「オラクル技術者認定資格者数は、現在まで全世界で18万7000人いる。このうち最も人数が多いのは日本」と説明しながらも、改定の意義を次のように解説する。「世界全体においては(認定資格は)3つのレベルに分けられる。エントリレベルがOracle Certified Associate(OCA)。OCAの上にあるOracle Certified Professional(OCP)、そして最も難しいトップに位置するOracle Certified Master(OCM)で、これが世界での基準となっている。これに対して日本は、Silver、Gold、それにPlatinumの3つ。しかし、お互いの資格にズレがあった。今回それを世界の基準へ移行を図った」という。「ただし、グローバライゼーションとローカライゼーションとのバランスを取るために、ORACLE MASTERという強いブランド名称は残した」と述べた。

 しかし、日本で最も資格保有者が多い現在のSilver試験(2科目)に合格した場合でも、今年10月以降に資格申請をすると(同社は試験に合格すると自動的に資格が授与されるのではなく、申請方式を取っている)、ORACLE Silver Fellowという「合格証明書」がもらえるようになる。ただし、Silver Fellowは資格ではない。もし、ほかの国との整合性を合わせるのを至上命題とするならば、日本だけこうしたSilver Fellowを設け、合格証明書を発行することに違和感がある。その点をホール氏に問うと、「私はそうは思わない。Silver Fellowがよければ、世界に広めればいいと考えている」と述べ、日本でのSilver Fellowの試みが成功した場合には、グローバルで採用される可能性を示唆した。

 現在、オラクルの3つの資格の合格者の割合は、OCAが45%、OCPが35%、OCMが1%。資格保有者は、「日本のほか、米国、カナダ、オーストラリア、英国が多い」そうだが、「成長率が高いのは、中国、インド、ブラジル」という。この中で中国についてジョン・ホール氏は、「中国では日本のORACLE MASTERを取得したいという需要がある」という。実数は少ないが、中国人のエンジニアが中国に進出している日系企業などで働きたい場合、ORACLE MASTER(当然日本語でとなる)に合格することが、自己PRになるためだ。

人材育成の重要性

 日本では現在、企業は即戦力のITエンジニアを求める傾向がある。もちろん、人材育成の重要性も語られるが、人材育成に掛けるコストは下がっている、との指摘もあるようだ。米国では、ストックオプションを費用計上する流れ、株価の低迷によってストックオプションの魅力が薄れるなど、企業から優秀なエンジニアを引き止める効果は限定的になっている。そこでストックオプション制度の代わりに、従業員の教育などを積極的に行うような企業も現れている。

 ホール氏も「教育への投資は、人材引き止め策になる」とその効果を認める。「多くの企業は従業員の教育を積極的に行っている。人材への投資は大きな価値があることを企業が認めているからだ」という。

 では、日本の現状についてはどう見ているのだろうか。「私の提言は、将来に対する投資を行うためにも、日本の経営陣は人材への投資を行った方がいいというものだ」と述べ、続けて「競合からの圧力は大きくなる一方。そのためにも(競争上の)優位性を保たなければならない。さらに技術進化が早く、そのスピードに対応するためにも人材育成は重要だ」という。また、国レベルでの人材育成については、「競争力を維持する能力は重要だと思う。教育を強力に推進する国が競争力を持つことになる。例えば、韓国や中国が挙げられるだろう。日本も長期的に見れば、こうしたIT分野で人材投資を進めると見ている」

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日本オラクル

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