「ECサイトの回復はいまから」、コマース21新社長が語る

2004/2/14

 ECパッケージ「Commerce21 Sell-Side Solution」を提供するコマース21は、2月1日付けで小林裕紀氏が代表取締役社長に就任したと発表した。なお、前任のKyu-Hun Park氏は同日付けで代表取締役会長に就任した。

コマース21の代表取締役社長に就任した小林裕紀氏

 小林氏は2002年7月から同社代表取締役副社長として、営業・マーケティング・技術開発・経営管理を含む全社マネジメントを担当してきた。2003年度の営業損益が単年度黒字になったのを機に現職に就任。「副社長時代から『ナンバーワンのパッケージベンダになる』と表明してきた。その思いは変わらない」(小林氏)と、さらなる飛躍を目指す。

 一時期わき起こったECサイトなどのeビジネスブームは、ネットバブルの崩壊とともに下火になっている。この状況について小林氏は「確かに1999〜2000年まではブームだけが先行した感があった。しかしブロードバンドの導入件数増加などネット環境の変化とともに、2003年からは回復期に向かっている」と見る。実際、家電量販店が運営するサイトなど、利益を出しているECは着実に増えている。また小売業や通販業以外にも、顧客と接点を直に持ちたいメーカーなどがECへの関心を示すなど、ECの需要は再び高まってきたようだ。さらにASPやモールからの乗り換えを検討する企業、ECブームに乗ってWebサイトを立ち上げた企業からのリニューアル需要もある。こうした市場へ向かって、コマース21は一気に攻勢をかけていく方針だ。

 具体的には、3月1日に低価格で導入が容易なスタートアップ・パッケージ「Commerce21 Sell-Side Solution SP」(C21 S4)を投入。価格は1CPU当たり200万円で、UNIX、Oracleのほか、LinuxとPostgreSQLもサポート。主要ターゲットは初めてECに乗り出す中堅・中小企業や消費財メーカーなどで、「初期費用500万円以下で本格的なECサイトを早期に立ち上げられるということは、ユーザーにとっても業界にとっても大きなインパクトになる」(小林氏)と語る。例えばモールに出店している売り上げトップの店舗だと、モール運営会社に月1000万円くらい払うケースも少なくない。こうした企業にとって、月々の運用費より安く自前のECが立ち上げられるのは大きなメリットとなる。またEC需要の回復に気付き始めたSIベンダから「低価格で扱いやすいパッケージ」と引き合いが活発化しており、「停滞気味のIT業界にとって、復活の“兆し”になるかもしれない」(小林氏)とも。

 C21 S4は、商品管理や決済、受注管理や会員管理などの主要機能は網羅しており、従来版とそん色はない。また早期立ち上げを可能にするため、導入したその日から使える基本テンプレートを数種類用意している。逆にソースコードの開示や業務プロセスのカスタマイズはできないが、「規模拡大に合わせ、カスタマイズが可能な従来版への移行パスも用意している」(小林氏)とのことだ。本製品のライセンスやサービスを含め2億円、コマース21全体として5億円の売上達成を目指す。

 ECサイトの投資に当たっては、「システム以外にも物流面の整備など費用が掛かる」と二の足を踏むユーザー企業も多い。だが一般的な小売業店舗で考えると、人件費や設備、システム、物流などを含めれば同等かそれ以上の経費が掛かる。ECの場合、人件費と店舗設備費は抑えられるので、3〜5年あれば償却でき、利益を生み出すことも可能だ。懸念されるのは、米アマゾン・ドットコムのように「商品の品質やサービスが一定な、商社的な総合モールが日本国内にはまだない」(小林氏)ということ。続けて、「楽天のように店舗ごとにさまざまな商品・サービスを提供するのではなく、本当にブランド力を持った総合モールが出てくれば、ECも1つの産業として確立するはず。いまはちょうどその過渡期にある」(小林氏)と締めくくった。

(編集局 岩崎史絵)

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