「インテグレーション技術で差別化する時代は終わった」、米ビトリア

2004/3/20

ビトリア・テクノロジー 共同創立者兼CTOのデイル・スキーン博士

 ビトリア・テクノロジー(以下ビトリア)は3月18日、共同創立者兼CTOのデイル・スキーン博士(Dr. Sale Skeen)による同社戦略の方向性とビジネス状況の記者説明会を行った。スキーン博士は「いまや統合プラットフォームの技術だけで他社と差別化するのは難しい」とし、「業界別ソリューションの提供に注力していきたい」と述べた。合わせて第3四半期にリリースを予定している同社BPM製品「Vitria:BusinessWare」バージョン4.3についても言及した。

 ビトリアは2003年9月、バイスプレジデントのポール・テイラー氏が来日した際に「今後は金融・テレコム・製造・ヘルスケアを中心に、業界別ソリューションを積極的に打ち出していく」という旨の発表を行っている(「EAI市場は飽和、ビトリアが新ビジネスモデルを提示?」)。今回スキーン博士はその具体的な製品として、米国ですでにリリースされている業界別ソリューションの概要を説明、また現在これらの製品を導入中のユーザー企業の存在も明らかにした。

 現在同社が提供している業界別製品としては、テレコム業界向け統合オーダー管理システム「Vitria:OrderAccelerator」や、金融業界向け「STP インテグレーション・プラットフォーム(STP IP)」、製造業向けのオーダー管理システムなどが挙げられる。このうちSTP IPは米アクセンチュアと共同で開発した製品で、バックエンド・フロントエンドを含めたトレーディングシステムの統合や、トランザクションの迅速化・可視化を実現したもの。海外ではRoyal Bank of Canada、国内ではUFJつばさ証券で導入プロジェクトが進められている。またVitria:OrderAcceleratorについてはスペイン大手プロバイダのR社が、オーダープロビジョニング効率化のために採用を決定した。

 こうした業界別ソリューションの提供についてスキーン博士は「インテグレーション技術は開発効率というメリットをもたらすが、それだけで具体的な利益を生み出すのは難しい。業界特有の課題解決策や、最適なビジネスプロセスを提供してこそ、顧客企業が真のビジネスバリューを享受できるようになる」と説き、この戦略がビトリアにとってさらなるビジネスの発展につながると述べた。「当社は金融・テレコム・製造・ヘルスケア業界に多数の顧客を持っている。そのノウハウを製品に実装することで、ほかのプラットフォームベンダと明確な差別化を図る」(スキーン博士)。そのためにはノウハウ汎用化を許諾してくれるユーザー企業の存在はもちろんのこと、多くの業種・業界に顧客を抱えるパートナーとの密な協業がカギとなる。今後この点について、同社がどのような戦略を打ち出してくるのか興味深いところだ。

 もちろん標準技術への対応も視野に入れている。現在リリース中の「Vitria:BusinessWare」ではJ2EE対応により、ビジネスロジックのコンポーネント化やアプリケーションの相互運用性を確保。また次期バージョンの4.3では標準でルールベースエンジンを組み込み、「例外処理のルール化など、より洗練されたビジネスプロセスを可能にする」(スキーン博士)という。さらにビジネスプロセスを設計するモデリング環境もエンハンスを予定しており、使いやすさを追求するとのことだ。

(編集局 岩崎史絵)

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