日本のM&A市場の展望、アクセンチュアのアドバイス

2006/7/14

米アクセンチュア 戦略グループ グローバル マネージング ディレクター ウォルター・E・シル氏

 アクセンチュアは7月13日、エコノミスト・インテリジェンス・ユニットと行ったM&Aに関する共同調査の分析結果を発表した。日本企業のM&A件数は直近10年間で5倍の伸びをみせ、一見良好のようにみえるが、米国企業と比較すると1件当たりの金額規模が小さく、またクロスボーダーM&A(海外企業の買収など)の取り組みは進んでいないという。ただし、情報産業や電子産業を中心に日本国内でもM&A市場は拡大すると同社では予測しており、現在10人のM&Aチームを4〜5年で100人体制にまで拡大する予定。

 今回の調査を通じて、同社はM&Aにおける成否の課題を大きく3点に絞り込んだ。これらの問題点は主に米国およびヨーロッパのグローバル企業の事例から導きだしたものだが、クロスボーダーM&Aは、日本企業がグローバル市場で競争していくうえで必要不可欠な戦略であると同社は指摘し、日本企業のM&A戦略にも有効に作用するとした。

 M&Aを成功させるための鍵として同社が指摘したのは「デューデリジェンスの実施」「組織の活性化と文化的衝突への対応」「統合プロセスの実施」の3点。

 デューデリジェンスとは、M&Aにおいて、買収対象会社や事業の実態とその問題点の有無を把握するために行う調査である。M&Aが失敗する背景には、デューデリジェンスを実施せず、M&AのためのM&Aを行うケースがあるからだと同社は指摘する。つまり、何のためにM&Aを行うのかという基本的な議論を抜かしたまま、買収先の企業を探すケースが少なくないという。あるいは、法務や財務に関するデューデリジェンスに傾倒するあまり、肝心のビジネスデューデリジェンスについて、自社で簡単に済ますケースが大半のため、対象企業のビジネスの実態が把握できていない。

 「組織の活性化と文化的衝突への対応」でよく指摘されるのは、統合企業同士の権力闘争だが、それに加えて、意思決定のタイプが企業文化に依存するケースが多く、統合後のスムーズな組織運営に悪影響を及ぼす場合が多い。例えば、意思決定のアプローチ方法には大きく分けて「トップダウン型」と「ボトムアップ型」があるが、統合した複数の企業で、これらの文化が混在していた場合うまく融合することはなかなか難しい。

 「統合プロセスの実施」はM&Aを実施するうえで常に指摘される問題点だろう。通常、M&Aのプロセスは、「Pre-Deal」と「Deal Execution」「Merger Integration」の3つのフェイズに分けられる。これらの3つのフェイズを展開する主体が、投資銀行であったり、コンサルティングファームであったり、M&Aを実施する企業自身であったりし、プロセス間の連携がスムーズにいかないケースが多い。

 1件あたりの買収金額が小さく、クロスボーダーM&Aへの取り組みが少ないなど、日本のM&Aはいまだスタートポイントにあると同社は指摘。今後、日本においても買収提携案件の立案から、実際の買収案件マネジメント業務、買収後の業務、システム統合にいたるまでのサービスに力を入れていくとし、日本オフィスにM&Aチームを設置した。

(@IT 谷古宇浩司)

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