SolarisアプリをLinux上で“そのまま”稼働、米社製品が上陸

2006/7/19

 ネットワールドは7月18日、Solaris/SPARCサーバ上で稼働するアプリケーションを、バイナリを変更することなくLinux上で動かすことができる仮想化技術製品を開発した米Trasitive(トランジティブ)と代理店契約を結んだと発表した。9月末までに同製品を国内出荷する予定。ネットワールドは「これまでRISCサーバを守ってきたLinuxとの非互換性を解消する有効な技術」としている。

 ネットワールドが発売するのはトランジティブが開発した「QuickTransit for Solaris/SPARC-to-Linux/Xeon」と、「QuickTransit for Solaris/SPARC-to-Linux/Itanium」。トランジティブはPowerPC用のアプリケーションを、Intelプロセッサ搭載Macで稼働させるためのコード変換ソフトウェア「Rosetta」の技術を開発し、アップルコンピュータに提供している。

トランジティブの社長兼CEO ボブ・ウィーダーホールド氏

 QuickTransitはLinux上で稼働するアプリケーション。トランジティブの社長兼CEO ボブ・ウィーダーホールド(Bob Wiederhold)氏によると、Linux上に保存したSolaris/SPARCアプリケーションをエンドユーザーが起動すると、Linux OSが検知し、QuickTransitを起動させる。QuickTransitはSolaris/SPARCアプリケーションの命令語のブロックを読み込み、Xeon、Itaniumで利用できるよう変換し、コードを生成する。同時に利用頻度が高いコードを検出してメモリのキャッシュにストアし、高速なアクセスを可能にする。

 QuickTransitの処理はエンドユーザーからは見えず、エンドユーザーは通常のLinuxアプリケーションを利用するのと同じ操作でSolaris/SPARCアプリケーションを利用できるという。「Dynamic binary translatin」「Operating system call mapping」の2つの技術で、Solaris/SPARCアプリケーションを移植する際のバイナリ変換などを不要にした。

 変換後のアプリケーションはSolaris/SPARCのネイティブと比較して80%程度のパフォーマンスで稼働する。ネイティブと比べるとパフォーマンスが若干低下するが、SPARCプロセッサと比べてXeon、Itaniumプロセッサの高速化が進んでいることから全体的なパフォーマンスは向上するとトランジティブはアピールしている。会見ではWebブラウザの「Opera for Solaris」、行列演算アプリケーション「SciLab」のSolaris版をLinux/Xeon上で稼働するデモンストレーションを示した。

 ネットワールドの常務取締役 マーケティング本部長 森田晶一氏は「今後5年のレンジを考えると、IAサーバとの価格性能比の違いでRISCサーバの維持は難しくなる」と指摘し、企業の中にSolaris/SPARCサーバからLinuxサーバへの移行機運が高まっていると説明した。ただ、Solaris/SPARCとLinuxの間にアプリケーションの互換性がないことが移行を妨げていると説明。「特にQuickTransitが必要になるのは自社開発アプリケーションだ。国内には自社開発アプリケーションが稼働するサーバが7000台以上あると推測している」と話した。

 ウィーダーホールド氏はSolaris/SPARCアプリケーションの移植について、「エンドユーザーのサポートが優先されて移植作業に時間が割けない、アプリケーションの開発チームがすでに解散、ソースコードがなくなっていたなどの問題がある」と指摘。QuickTransitを使うことでSolaris/SPARCアプリケーションをLinux上で利用し続けながら、計画的に社内組織の整備やサーバ移行ができるとした。

 QuickTransitは32ビット、64ビットのSolaris/SPARCアプリケーションをサポート。V8、V8+、V9のすべてのUltraSPARC命令セットに対応する。Solaris 2.6以上のアプリケーションを移植できる。QuickTransitは、Red Hat Enterprise Linux AS 4とSUSE Linux Enterprise Server 10で稼働。カーネル2.6.9以降のLinuxでも動くという。VMwareなどを使って仮想化した環境でも稼働し、同一サーバ上でSolaris/SPARCアプリケーションとLinuxアプリケーションを動かすことができるという。

 QuickTransitは現在ベータ1で、7月末にもベータ2を公開し、テストユーザーを募る予定。ネットワールドは、QuickTransit for Solaris/SPARC-to-Linux/Xeonを9月末まで、同Linux/Itaniumを2006年末までに出荷する。価格はCPUソケット単位。Linux/Xeonは1年間の使用ライセンス、サポート、保守で21万円(税込)、2年間の使用ライセンス、サポート、保守で39万9000円。Linux/Itaniumの価格は未定。同社は今後3年でサーバ4000台以上への導入と、売り上げ8億円以上を見込んでいる。

(@IT 垣内郁栄)

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ネットワールドの発表資料
米Trasitive

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