SUN TECH DAYS 2007基調講演レポート

サンがJava FXの実例をデモ

2007/11/07

 サン・マイクロシステムズが主催する開発者向けイベント「SUN TECH DAYS 2007」が11月7日から2日間の予定で開幕した。同イベントは今年で10周年。東京での開催は4年ぶり。基調講演には日本法人の代表取締役社長 末次朝彦氏や、Javaの生みの親として知られるジェームス・ゴスリング(James Gosling)氏が登場。Java関連の最新の話題や、同社の目指す方向性についてデモンストレーションを交えながら語った。

開発者こそががイノベータ

techday01.jpg サン・マイクロシステムズ 代表取締役社長 末次朝彦氏

 末次氏は現在同社が取り組む中長期的なテーマを大きく2つに分けて強調した。1つはコンピューティングやネットワークの普及によって今後、引き起こされる環境への負荷軽減。「すでにデータセンターでは8割が電力不足の問題を抱えている。今後60億人がネットワークに接続するようになれば、環境へのインパクトも大きくなる」(末次氏)と、低消費電力のサーバやプロセッサの開発に同社は今後も取り組むとした。

 もう1つはデジタルデバイドへの取り組み。「60億人のうち、実際に現在ネットワークにアクセスできるのは15億人程度」(同)であるという問題に対して、同社が考える有効な方策は3つある。ユーザーインターフェイスを簡易にすること、ネット上でさまざまなサービスを提供すること、新たなビジネスモデルを構築すること。末次氏は「デジタルデバイドを解消していくイノベーションは、技術者・開発者の皆さまが行うこと」とし、それをサポートする開発環境や技術を同社は提供していくという。

 Java、OpenSolaris、NetBeans、OpenOffice.orgなど、これまで同社がオープンソース化してきたソフトウェアに加え、GNU/Linuxに対するソースコードの貢献を金額に換算すると、総額20億ドル(約2300億円)に相当するという。「まずコアの技術をオープンにし、その周囲にコミュニティや市場を育てていく。コミュニティ活動を通じて技術を共有していくことが、われわれにできること」。

 何らかのJava実行環境を搭載したデバイスは55億台。クルマ、携帯端末、ゲーム機、STB、テレビ、ロボットと適用範囲を広げるJavaは普遍的な開発プラットフォームとなっている。末次氏は「開発者は全世界で600万人を越えている。Java開発者は活躍できる範囲が小さなデバイスから大きなサーバまで広い。チャンスが広がっている」とした。

techday02.jpg 末次氏が示したサンのOSSへの貢献例

「Emacsは消滅すべき」、ゴスリング氏

techday03.jpg 米サン・マイクロシステムズ バイスプレジデント兼フェロー ジェームス・ゴスリング氏

 「Emacsは30年前には、すばらしいものだった。しかし、Emacsは消滅すべき。現在のEmacsが30年前のものと似ているのを見るのは、何だか寂しい」。Javaの生みの親であるジェームス・ゴスリング氏は、UNIX上で標準的に用いられてきたテキストエディタ、Emacsの開発者としても知られている。ゴスリング氏は最近のコンパイラや開発環境の進化について触れ、「もうテキストエディタを使ってはいけない。NetBeansを使ってほしい」と語りかけた。NetBeansは、パフォーマンスチューニングに欠かせないプロファイラや、GUIエディタなどを含む統合開発環境だ。

 Javaの実行速度は遅いという古い先入観に対して、それは事実と異なるのだというメッセージを、ゴスリング氏に限らずJavaコミュニティの人々は発信し続けている。「多くの人が、すべてのJava VMはインタープリタで遅いという10年前の印象を引きずっているが、それはもう何年も前から事実と異なる。最近ではJavaはCやC++に匹敵するか、場合によってはそれらの言語以上のパフォーマンスが出る」という。例えば、Java VMのガベージコレタクのほうがCのmallocやfreeよりも、はるかに高速であるため、頻繁にメモリアクセスを行うアプリケーションではJavaが有利という。また、プロセッサアーキテクチャや実行時の負荷、プログラムの挙動を分析して動的に最適化するダイナミックコンパイルの技術は、静的な型定義しか行わないCやC++よりもパフォーマンスのいいコードを生成するのだという。

モバイル向けLinux端末市場に「Java FX」

 ゴスリング氏はリアルタイムJavaや次期バージョンのJava言語の標準仕様の策定にも携わっているというが、現在もっとも注力しているのは「Java FX」関連の技術だという。基調講演に挟まれる形で行われた各5分ずつ計6つのデモンストレーションセッションのうち4つがJava FX関連と、この技術にかける同社の意気込みが伺える。

 Java FXはJava VM上で利用するスクリプト言語で、Javaのライブラリやアプレットといった資産をバインドするだけで簡単に使い回せることと、デスクトップ向けでもモバイル向けでも同じスクリプトで似たようなUI設計が行える、というのがウリ文句だ。「RubyやPHP、JavaScriptなどほかのスクリプト言語はWebサービス向けで、リッチクライアント向けではない」(ゴスリング氏)。

techday04.jpg Java FXで書かれたアマゾン専用クライアントの例。ドラッグ移動時にウィンドウ区切りがアニメーションするなど、エフェクトが多く用意されているという
techday05.jpg Java FXで書かれたギター向けチューナーの例。マウス操作で音が鳴る。Javaアプレットをバインドすれば、簡単にスクリプトとして書けるという

 デスクトップPC向けではアドビのAIR、マイクロソフトのSilverlight、あるいはJavaScriptライブラリによるAjaxなど、リッチクライアント向け開発環境の選択肢は多い。後発のJava FXが、このジャンルに入っていくのは難しいだろう。しかし、すでに普遍的な存在になったJava VM搭載デバイスのことを考えると、Java FXは魅力的かもしれない。「Write once, run anywhere」(一度書けば、どこでも実行できる)を実現したJava言語に続き、Java FXが目指すのは「Write once, displays anywhere」(一度書けば、どこでも表示できる)という世界だ。

 Swingのベーシックな表現力だけでは開発者もデザイナも付いてこない。現在同社はデザイナと開発者が共同して作業を行えるツールを準備しており、「名称はまだ決まっていないが、アドビ製品など既存のデザインツールとの連携もできる」(ゴスリング氏)ようになるという。

 デモンストレーションで同社のエンジニアたちは、携帯電話上とデスクトップ上とでほぼ同じUIが実現したというFlickrクライアントや、Javaベースの小型センサーデバイス「Sun SPOT」に対してJava FXによるUI設計などを披露した。Java FXではアニメーションボタンなど各種エフェクトが用意されているという。

techday06.jpg 写真共有サイトのFlickrにアクセスする専用クライアントをJava FXで実装した例。携帯電話でもデスクトップでも、ほぼ同じUIが実現できる
techday07.jpg Java搭載のセンサーデバイス「Sun SPOT」(左)を使ったデモンストレーション。各センサーの情報を取得して表示するUIをJava FXで実現している(右)

 サンはJava FXをオープンソース化して提供する予定だが、モバイル向けソリューションとして、Linuxベースの完全なプロトコルスタック「Java FX mobile」の販売を計画している。ただ、モバイル端末向けのLinuxソフトウェアスタックには、先日グーグルが発表した「Android」や、アクセスが旗振り役をする「LiPS」(Linux Phone Standards)がある。米ABI Researchが今年8月に発表した予測によれば、2012年までにスマートフォン市場でLinuxベースのOSが31%の市場シェアを獲得するという。同社はLinux搭載のスマートフォン市場は年率31%で成長し、今後5年間で3億3100万台を出荷すると予測している。現在、モバイル端末向けのLinuxは、端末メーカーが個別にカスタムLinuxを利用しているケースが多い。今後はモバイル向けLinuxプラットフォームの標準化を巡って競争激化は必至だ。

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(@IT 西村賢)

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