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米ヴイエムウェアCEOが語るZimbra買収の理由

2010/03/03

 米ヴイエムウェアのCEO、ポール・マリッツ氏が3月2日、都内で記者会見を行った。@ITでは、この場でZimbra買収の理由を聞いた。以下がそのやりとりだ。

――Zimbraの買収について聞きたい。なぜ電子メール/コラボレーションを選んだのか。また、ヴイエムウェア自身がアプリケーションを提供することは、潜在的にパートナーであるべき企業と競合する部分もあると思うが、これにはどういう意味があるのか。

vmware01.jpg ポール・マリッツ氏

 第一義的には当社はSaaSアプリケーションをイネーブル(実現支援)したいと考えている。特にプログラミングフレームワークへの投資(SpringSource買収)については多くのベンダがSaaSアプリケーションを開発し、パブリッククラウドにも顧客の社内クラウドにもデプロイできる選択肢を提供できるようにする。SaaSベンダから聞くことは、たしかにパブリッククラウド上の真のSaaSの世界で顧客にサービスを提供できることも多いが、セキュリティやコンプライアンスなどの理由で、顧客が自社の社内でアプリケーションをデプロイしたいと望むこともあるということだ。

 アプリケーションフレームワークによってSaaSベンダがより効率的にアプリケーションを開発できるだけでなく、より多くのデプロイメントの選択肢を提供できるようにする。

 では、当社の第一義的な目標がSaaSアプリケーションをイネーブルすることだとすると、なぜZimbraを買収したかということだが、理由は電子メール/コラボレーションが、SaaSベンダが組み込むことのできる基本的な構成要素になるからだ。当社はCRMやERP、アプリケーションのビジネスに参入するつもりはない。今日、多くの人々(SaaSベンダ)はグローバルなサービスラインナップを提供するために電子メール/コラボレーションを組み込まなければならないと考えている。

 当社はZimbraを、当社の技術を活用してソリューションを構築したい人々にとっての実現支援技術(イネーブリング・テクノロジー)あるいは構成要素だと考えている。

――しかしZimbraはほかの電子メール/コラボレーションとそれほど違った製品ではない。顧客(個人ユーザーあるいはユーザー企業)がZimbraを選ぶ理由はないのではないか。その問題をどう解決するのか。

 当社がその問題を解決する必要はない。彼らが自分の(使ってきた)製品を使うということでも構わないと思っている。Zimbraは当社が顧客に提供する選択肢だ。当社が確実に実現したいのは、Zimbraを当社のプラットフォームとうまく統合するということだ。これにより簡単にデプロイでき、簡単に運用できるようになる。これは選択肢として顧客に提供される。当社はここで成功するために「電子メール戦争」に勝つ必要はない。当社はこれが少なくとも1つの、基本的な電子メール/コラボレーションを提供する高品質で高度に統合されたアプリケーションの例になると考えている。これはオープンなプラットフォームだし、もしほかのソリューションがいいということであれば、それでかまわない。

vmware02.jpg この図では、SaaSレイヤに「File/Print」「Directory」が書かれている

――それでは確認だが、図では、SaaSレイヤでZimbra以外に「File/Print」「Directory」が示されている。これは何を意味するのか。

 このレイヤで、サードパーティが(仮想)アプライアンスを提供するエコシステムを実現したいということだ。Zimbraはこうしたサービスの例として使いたい。そして他社にファイル/プリントやディレクトリサービスなどの機能を提供してもらいたい。

 以上がZimbra買収に関するやり取りだ。ほかの場で得た情報では、ヴイエムウェアは今年の中頃に、VMware vSphereとSpringSource製品の統合を実現する。これにより、アプリケーションフレームワーク側からサーバ仮想化プラットフォームを制御できることになる。従ってアプリケーション側のニーズに応じて、仮想サーバレベルのスケールアップ/ダウンができるようになる。最終的に利用者が求めるクラウド・コンピューティングは、アプリケーションレベルでの自動的なスケールアップ/ダウンだ。現在ヴイエムウェアの環境では、ユーザーリクエストの増減に応じてWebサーバ仮想マシンの数を増減させ、これらの間で負荷分散することはできている。しかし一般的なアプリケーションは、それ自体が複数の仮想マシンにまたがってスケールアップ/ダウンできない。ヴイエムウェアはこの問題を解決するために、サーバ仮想化レイヤからアプリケーションまでの統合を実現しようとしている。

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(@IT 三木泉)

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