[Analysis]

結局、品質管理

2004/06/15

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 ソフトウェア開発が真に工学の一分野として認められるためには品質管理の徹底が不可欠である。2000年以降、ソフトウェア業界の各所で頻繁に耳にするようになった。それは例えば、「オブジェクト指向」や「UML」「MDA」「アジャイル」といった耳新しい術語を伴って語られた。アプローチの仕方はさまざまだ。とはいえ、結局は1つのことをテーマとしているに過ぎない。

 ソフトウェア業界における“品質管理のずさんさ”を浮き彫りにするためよく引き合いに出されるのが自動車業界における“高度な製造プロセス”である。そこには、最先端の品質管理が製造工程に組み込まれている。「自動車メーカーのような工程管理や品質管理をプロジェクトマネジメントに取り入れるべきだ」。このような台詞は何度聞いたかわからない。

 ソフトウェア開発コンサルティングの専門企業アイ・ティ・イノベーションの林衛氏は、ソフトウェア開発に、(例えば自動車業界のような)プロジェクト・マネジメントを組み込ませるためには、まず一人一人のエンジニアの教育が重要だという。コミュニケーション力、プレゼンテーション力、リーダーシップという3つの能力はマネジメント能力の基礎であり、このようなスキルを身に付けた人々が増えることで、ソフトウェア開発のプロセスが変わると林氏はいう。雑誌をにぎわせる最新のソフトウェア開発方法論の実際の開発プロジェクトへの適用は、このようなエンジニア一人一人の足腰がしっかりしていなければまともに機能しないのだと林氏は指摘する。

 問題は単純ではない。「ソフトウェア開発において、どんなエンジニアであろうと、完全な単純労働というのは存在しない」とエンジニアは口をそろえて云う。そこには、ソフトウェア技術者としてのプライドのようなものを感じることができる。自動車業界の成功事例をそのままソフトウェア業界に適用するのは無謀なのはいうまでもない。だからこそ、侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論がいまでもさまざまな場所で行われている。

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