[Analysis]

シスコのお尻に火がついた

2004/06/22

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 シスコシステムズの動きが活発化してきた。新製品や提携、さらには企業買収を相次いで発表。ネットワーク機器の最大手ベンダを駆り立てているのは、新興ベンダの攻勢だ。

 シスコは5月末に通信キャリアやサービスプロバイダ向けのハイエンドルータ「Cisco Carrier Routing System-1」(CRS-1)を発表した。CRS-1は複数のシャーシをクラスタ化し、最大で92Tbpsをサポートするという怪物ルータ。シスコは4年の開発期間をかけてIOSとASICを作り直した。

 シスコがCRS-1の投入で狙うのはジュニパーネットワークスのシェア拡大だ。調査会社のレポートなどによると、ジュニパーネットワークスはハイエンドルータ市場で急成長。トップシェアはシスコが保っているものの、ジュニパーとの差は縮小しているという。新製品のCRS-1を投入することで、顧客の関心を呼び戻すことを狙う。

 シスコが6月7日に発表したトレンドマイクロとの提携強化も、ジュニパーを意識した結果ではないだろうか。提携は、シスコがトレンドマイクロのアンチウイルス技術をルータやスイッチに組み込むという内容。ネットワーク機器ベンダに対するセキュリティ機能強化の要求は急激に高まっている。自前のセキュリティ技術を自社のルータやスイッチに組み込むのはもちろん、技術強化のためにセキュリティベンダを買収するネットワーク機器ベンダもある。その代表がネットスクリーン・テクノロジーズを買収したジュニパーだ。シスコはセキュリティ機能強化を急ぐ競合他社に対抗する意図もあり、トレンドマイクロとのパートナーシップ強化を急いだとみられる。

 では、シスコが6月17日に発表した新興ネットワーク機器ベンダ、プロケット・ネットワークスの買収はどのようにみればいいのか。真っ先に考えられるのは高い技術力を持つベンダを買収することで、将来的に競合となるリスクをなくすということだ。シスコはプロケットが抱えていた元シスコ社員を含むエンジニアの大部分を引き受ける予定で、技術力の強化にもつながる。また、プロケットが持っていた技術や人材が競合他社に流入することもブロックできた。

 シスコはこれまで手薄だった中小規模企業の市場についても低価格のパッケージ製品を投入する予定で、さまざまな分野への新戦略を矢継ぎ早に発表している。ジュニパーをはじめネットワーク機器ベンダはシスコをターゲットに製品を開発し、マーケティングを行うことが多い。挑みかかってくる競合ベンダをいかに打ち負かすか、シスコの真価が問われているといえそうだ。

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