[Analysis]

シンクライアントが生き返った訳

2005/03/15

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 個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)が全面施行されるまで約2週間。対策の焦点の1つになっているのがクライアントPCの管理だ。顧客情報や営業資料などさまざまな情報を保存することが多いクライアントPCは、盗難や置き忘れのリスクが常にある。最近報道された個人情報漏えい事件の多くはノートPCの盗難、紛失がそのきっかけになっている。

 クライアントPCの個人情報保護で注目を集めているのがシンクライアントのソリューションだ。ベンダによっていくつかの仕組みがあるが、米シトリックス・システムズのソリューションではデータとアプリケーションをサーバ側に置き、クライアントPCにはアプリケーションの表示イメージだけが配信される。ユーザーはPC上で通常と同じように操作できるが、データをクライアントPCに保存することはできない。仮にPCが盗まれてもデータがないために情報漏えいが起きない、というのがシンクライアントの売りだ。

 国内でシンクライアントへの注目が一気に集まったのは、日立製作所がシトリックスの技術と自社技術を組み合わせたシンクライアント・システムを2月15日に発表してからだ。日立はハードディスクドライブを搭載しないPCを発売。2005年3月末までに2000台、2006年3月末までに8000台のハードディスクレスPCを社内導入する計画で、取り組みへの本気度を示している。

 3月10日にはNECがシンクライアントの新システムを発表。シトリックスの技術を使ったシステムで、IP電話やWeb会議などをシンクライアント環境で利用できるようにしたのが特徴。NECでは「リッチクライアントとシンクライアントの混在の環境下でもセキュリティを守れることを提案したい」としていて、導入の容易さを訴えている。

 シンクライアントには、PCへのアプリケーション配信を一括で行える、セキュリティパッチの適用管理が容易など運用管理面のメリットもある。情報漏えい対策に加えてこれらのメリットが理解されれば導入するユーザーが一気に増える可能性もあるだろう。Webアプリケーション全盛時代、クライアントPCの位置付けが変わることも考えられる。

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