[コラム:Spencer F. Katt]
AMD Opteronはレトロなスーパースター?

2003/5/7


 4月21日は病欠の電話をかけることから始まった。受話器を置くと、そのままボストン・マラソンのスタート地点まで、友人の車で送ってもらった。吾輩はこの日のために小型のGPSデバイスを用意していたのだけれど、まぁ、2万人のランナーがいっせいに同じ方向に走るわけだから、道に迷うことはなかった。沿道にはマラソンのルートを示す案内板もいっぱい立っていたし……。

 レースは比較的スローペースで展開したため、吾輩は携帯した「BlackBerry」をチェックすることができた。わき腹の痛みに耐えながら、受信した電子メールに目を通すと、その多くがいつものように吾輩の反抗的な態度を快く思わない読者からの苦情だった。とりあえず、その手のメールを全部、『eWEEK』の読者管理部へ転送し、皆さまからの貴重なご意見として分析してもらうことにした。

 火曜日の朝、午前5時に目覚まし時計が鳴った。今度は本当に病欠の電話をかける必要があった。というのも、ベッドから起き上がることさえ容易でなかったからだ。が、そうは言っていられない。吾輩はニューヨーク行きのシャトルに飛び乗り、「AMD Opteron」の発表会に駆けつけた。

 発表会では、スポーツキャスターのボブ・コスタスがスピーチに立った。彼を見て吾輩は思わずうなったね。こいつはマイクロチップと聞いて、ゴルフボールをグリーンに乗せるショットを思い浮かべるような男だ。コスタスがテレプロンプターを見ながら行ったスピーチのテーマは、“爆発的パフォーマンス”だった。彼によると、テニスプレーヤーのビリー・ジーン・キングとプロバスケットボールのドクターJ(ジュリアス・アーヴィング)とAMD Opteronは、みんなよく似ているそうだ。SF小説『小鼠 ニューヨークを侵略』(注1)をほうふつとさせるらしい。しかしそれって、AMDの新しいプロセッサも1970年代のレトロなスーパースター並ってこと?

 頭が痛くなった吾輩は、ファイルの整理とひと息入れるために、近くのスターバックスのホットスポットに向かった。エスプレッソを注文して、しばしの静寂に身を委ねていると、ふとリレーショナル・データベース・システムの父、エドガー・コッド博士(注2)のことを思い出した(ちなみに、この人がいなければ、ラリー・エリソンは一介の自動車セールスマンで一生を終えただろうと言われている)。物事を突拍子もない関連性で結びつける博士の仕事ぶりも、また常にミステリアスではあったね。

 水曜日は移動日だった。Windows 2003 Serverの発表会に出席するため、吾輩はダラス経由でサンフランシスコに向かった。ダラス・フォートワース空港のバーでは、EDSが中西部の販売部門の従業員のうち20%をレイオフするらしい、というウワサを隣の客が話しているのを耳にした。その客がバースツールからピックアップしたデイリー・オクラホマ紙には、ピープルソフトと組んだオクラホマ州のCRMプロジェクトの総費用が、1700万ドルから3000万ドルに膨れ上がった、という記事が掲載されていた。

 次の日、吾輩はサンフランシスコのシビックセンターに立っていた。マイクロソフトのWindows Serverグループ副社長、ビル・ベクティは、先週奥さんが出産したにもかかわらず、とても落ち着き払っているように見えた。それにしてもスティーブ・バルマーは、Windows Server 2003とHP Itaniumサーバ上で行われたTCPベンチマークが好ましい結果を出したからといって、小躍りして説明する必要があったのだろうか? まるで酔っ払っているみたいだったね。

 そんな彼の姿を見ていると、なんだか吾輩も一杯ひっかけたくなり、早々に発表会場を後にして、小雨の中、モスコーンセンター近くのバー「サースティベア」へ足を急いだのであった。

(注1)『小鼠 ニューヨークを侵略』レナード・ウイバーリー(創元推理文庫)。ちなみにこの「小鼠」は、『小鼠 ニューヨークを侵略』『小鼠 月世界を征服』『小鼠 ウォール街を攪乱』『小鼠 油田を掘りあてる』の4部作である。絶版。

(注2)つい最近、鬼籍に入られた。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Spencer began the week Monday by calling in sick.

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