[コラム:Spencer F. Katt]
簡素化を通り越して複雑化?

2005/11/29


 「ここはラスベガスだ。あいまいな結末は許されないはずなのに」。ラスベガスのザ・ベネチアンで開催されたCA Worldを取材した吾輩は、そう苦笑いするしかなかった。来場者の間では、コンピュータ・アソシエイツの新しい共通サービス統合プラットフォームがどのように機能し、どのようなメリットをもたらすのか、同社は明確に説明せず、あいまいにしたままだ、と不満の声が広がっていた。「まぁ、ワーグナーの音楽も聞こえるよりはいいものらしいじゃないですか」と吾輩は、そんな参加者の1人に話しかけた。もちろんそのジョークは、マーク・トウェインの自伝の中でエドガー・ウイルソン・“ビル”・ナイの言葉だとされているものだけど……。

 CAの新しいボス、ジョン・スウィンソンの基調講演は、比較的わかりやすかった。バイクにまたがって基調講演をやったチャールズ・ワング前CEOと比べると、素直で好感が持てた。スウィンソンは泥にまみれた旧経営陣について、スピーチではほとんど触れなかったものの、後半のQ&Aでは退役した老兵たちを非難するとともに、生まれ変わったCAがさまざまな慈善活動に力を入れていることをアピールした。

 スウィンソンの基調講演には、レドモンドも力を貸した。マイクロソフトが提供したビデオの中で、スティーブ・バルマーは「CAのUnicenterとマイクロソフトのデスクトップおよびシステム管理ソフトへの投資拡大で、両社は基本合意した」ことを明らかにした。伝え聞くところによると、マイクロソフトとCAの旧経営陣はそりが合わなかったらしいが、ここにきて両社はSMSとCAの管理データベースの統合化に向けて良好な関係を築こうとしているようだ。

 CAが今年最も力を入れて説明してきたメッセージは、簡素化だと吾輩は理解していた。ところがNBCのニュースキャスター、フォレスト・ソーヤーがホストを務めるパネルで、同社が26もの新製品、新バージョンを発表したときは、さすがに唖然(あぜん)としてしまった。簡素化を通り越して複雑化へ向かったのは、おそらく同社くらいなものだろう。

 精力的な取材で疲れた吾輩は、インターネットの配線と無線が張り巡らされたプレスルームに引きこもるより、ホテルのポーカーテーブルで一儲けたくらんだほうが精神衛生的には有益だと考え、善は急げと席を立ったとき、ボストンでフォレスター・エグゼクティブ・ストラテジー・フォーラムを取材している友人から携帯に電話が入った。

 友人の話によると、フォレスターのCEO、ジョージ・コロニーがマサチューセッツ州知事のミット・ロムニーとステージ上で対談したとき、知事は「マサチューセッツ州の病院に来る患者の多くが、メディケイド(医療扶助制度)を受ける資格があることを知らない」と訴えたそうだ。そのため、そうした人々の支払いを州が肩代わりしているのだという。ロムニーは、病院の窓口で患者がメディケイド受給資格者かどうかをチェックし、もしそうであるなら、その場で申請書を作成できるようなITプログラムが必要だと力説したとか。そうすれば、診療請求を連邦政府へ回すことができて、州の財政負担を減らせるからだ。

 それに対してコロニーは、「問題はいずれまたあなたのところに戻ってくるかもしれませんよ」と皮肉っぽく応じたという。もちろん、ロムニーに米大統領選出馬の野心があるというウワサを知ってのことだ。が、ロムニーは、ただ微笑んでいるだけだったという。さすがに州知事ともなると、ポーカーフェイスは吾輩より上手だな。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Fuzzy Dice

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