[コラム:Spencer F. Katt]
ギブ・ミー・マネー!

2006/1/24


 友人が電話をかけてきて、英国の学生アレックス・テューが考案したピクセル広告スキームについて教えてくれた。画面を広告版に見立て、ピクセル単位で区画販売する彼の「ザ・ミリオンダラー・ホームページ」は、ついに100万ピクセルを売り切りったという。この斬新なマーケティング・アイデアは、2005年8月のスタート以来わずか5カ月で100万ドルの収益をもたらしたそうだ。

 それに比べればほぼ無一文と言ってよい吾輩は、「ルート22 アメリカン・レストラン&バー」でわが身の不幸を嘆きながら、手早く稼げる画期的なスキームはないものか、とため息をついた。ここはニューヨーク州アーモンクのIBM本社と通りを挟んだところにあるビッグブルー御用達の居酒屋だ。友人からの電話を切ったあと、吾輩はカクテルグラスを口に運びながら、IBM社員とおぼしきスーツ姿の一行の会話に耳をそばだてた。どうやらゼネラル・モータースのCIOで、40社を超える業者とアウトソーシング契約を結んだラルフ・ジゲンダの厚顔無恥ぶりを糾弾しているようだ。

 彼らの会話によると、いまやすっかり孤立無援状態になったGMは、この先、健全な会計ガイドラインを持つ企業(例えばIBMなど)には到底受け入れがたい長期の支払条件を提示する構えを見せているという。もしキング・ラルフの横暴を阻止することができなければ、今後、契約業者はとんでもないコストを肩代わりさせられるだろう、とスーツ姿の男たちはうめき声を上げた。

 ボストンへ戻るため、吾輩は愛車キャットモービルに乗り込み、ロングドライブのアクセルを踏んだ。するとほどなく、キャットフォンから新しく設定したメロディ、キングスメンの「マネー」が流れてきた。電話をかけてきた情報屋によると、日立データシステムズが3月か4月に、EMCの「Centera」とよく似た新製品のリリースを計画しているらしい。急成長するフィックスド・コンテンツ・ストレージ市場向けの製品だという。また情報屋の話では、あるプライベート・エクイティ・ファームがBMCソフトウェアの買収を検討しているもようだ。ちまたのウワサでは、どうやらそのエクイティ・ファームが、BMCの一連の製品に強い興味を持つベンダと裏で手を組んだらしい。

 ステアリングを握りながら、大金を手にする方法をいろいろ考えてみたが、結局、可能性があるのはマサチューセッツ州の宝くじ以外にないという結論に達した。さっそくコンビニエンス・ストアの前でクルマを停め、ロトを買ったのだが、それにしてもなぜ世の中の人々は吾輩と違って大金をいとも簡単に稼ぐことができるのだろうか。例えば、ナショナル・セミコンダクタのCEO、ブライアン・ハラとCOOのドナルド・マクレオドほか3名のエグゼクティブは、先月ストックオプションを行使して総計5300万ドルを手にしている。伝えられるところによると、CEOのハラは1人で2000万ドルを受け取ったそうだ。

 元司法長官ジョン・アッシュクロフトの会社、アッシュクロフト・グループも、最近はずいぶん儲けているようだ。同社はコンサルタント業務で、政府との間に問題を抱える多くの企業から引っ張りだこらしい。聞くところによると、オラクルでも同社の電話番号は短縮登録されていて、企業買収の承認や国土安全保障問題などで、ラリー・エリソンの信頼できる相談相手になっているそうだ。

 はずれたスクラッチを恨めしげに眺めていると、ペンギン系の友人から携帯に電話が入った。そいつの情報によると、マイクロソフトはシェアード・ソース・イニシアティブの一環として、.Net上で動作するオープンソース・スクリプト言語「IronPython」をさりげなく出荷したらしい。おそらく数十億ドルの利益を稼ぎ出したあと、ようやくビル・ゲイツ商会も、世の中で最も価値があるのは無料のものだということに気がついたのだろう。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
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