[コラム:Spencer F. Katt]
自分から自分あてに届く不気味なスパム

2006/7/4


 「ビルの時代が終わるなんて……」。マイクロソフトのビル・ゲイツ会長が2008年までに日常業務から身を引くと発表したことを知って、吾輩は嘆き悲しんでいた。すると、「誰か猫を袋詰めにしてイジメてるのか?」と、ダミ声を張り上げる吾輩の部屋を同僚がのぞき込んだ。

 「いやなに、ビルに惜別の叙情詩を捧げていただけさ」と吾輩が説明すると、同僚は苦笑いしながら、「レドモンドからまた1人、ベテランがいなくなったよ」と教えてくれた。つい3カ月ほど前、Windows LiveおよびMSN担当副社長に任命されたばかりのマーティン・テイラーが静かに同社を去ったそうだ。“家族と過ごす時間を増やしたい”などといった、ありきたりな理由も述べずに。

 マイクロソフト社内では、「個人的な問題についてはコメントできないが、会社はマーティンと袂(たもと)を分かつという困難な決断を下した。13年もの長きにわたってマイクロソフトに貢献してくれたマーティンに感謝する」という短い通達でテイラーの退社が明らかにされたという。

 テイラーはCEOスティーブ・バルマーの片腕で、Linuxやオープンソースに対抗して「Get the Facts」キャンペーンを立案するなど、スター街道まっしぐらだった有能な人材だ。ある業界観測筋は、ゲイツの後継チーフソフトウェアアーキテクトに指名されたWindows Liveサービスの開発者、レイ・オジーのビジョンに共鳴できなかったことが今回、退社にいたった理由かもしれないと話す。また別の業界関係者は、オジーが子飼いのマーケティングスタッフにWindows Liveを担当させようとしたことが軋轢(あつれき)を生んだのではないかという。

 そのとき突然、キャットフォンが鳴った。ラスベガスで開催中の「Cisco Networkers」カンファレンスを取材していた友人からの報告だった。なんでもシスコの発表によると、Catalyst 6500スイッチシリーズの売上が発売から6年で200億ドルに達したらしい。アップルのiPodが4年間で85億ドルなので、それと比較すれば大したものだと自賛しているそうだ。そのうちCEOのジョン・チェンバースは、ボノ(U2のボーカル)と仲良くなって、同シリーズ向けのサービスモジュールでも宣伝させるんじゃないかな。

 電話を切ったあと、吾輩は夏至を祝うために、ちょうどオフィスに来ていたセキュリティベンダの担当者を誘って、フライドクラムに舌鼓を打とうとケリーズ・ローストビーフへ向かった。タルタルソースを狙うカモメを手で追い払いながら、吾輩はベンダの担当者に、パームが近くLinuxベースの新バージョンを投入するらしいという噂の真偽を聞いた。すると彼は、「それはない」と言下に否定したあと、「でも、アップルは8月のワールドワイド・デベロッパーズ・カンファレンスで、Mac OS Xカーネルに関する重大な発表をするって、もっぱらの噂だけどね」と答えた。巷では、アップルがMachマイクロカーネルを落すのではないか、と人々がささやきあっているというのだ。「ふむ。Jaguarとか、Leopardとか、Tigerとか、クールなコードネームが続いたけど、そのうちスペンサー・カーネルなんてのが出たりして」と、つまらないジョークに吾輩は1人で笑った。

 その後、ビーチを散策しながらわれわれは話を続けた。セキュリティベンダの担当者によると、最近世間では自分自身のメールアドレスから届く無害のスパムが急増しているらしい。おそらくワーム攻撃の前段階として、有効なアドレスのチェックをもくろむボットネット攻撃者の仕業に違いない、と彼は言う。しかし、自分から自分あてに届いたメールを開けちゃいけないといわれても、何が書いてあるか知りたくて身もだえしちゃうね。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
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