[コラム:Spencer F. Katt]
Hamachi VPNを買収したのは?

2006/8/16


 「暑いのもなんだが、この湿気はなんとかならんのか」と、滝のように流れる汗を拭きながら吾輩はため息をついた。温度計の針はまたしても3桁(摂氏38.7度)を超えていた。

 電源のない寝室を抜け出し、玄関先で電子メールをチェックしていると、吾輩のBlackBerryにSCOから、CEOダール・マクブライドとのインタビューに招待するというメールが届いていた。「おぉ、ダールが吾輩に会いたがっている!」。こんなことは滅多にないぞ。興奮を抑えきれないまま、吾輩は編集長に「これからユタ行きのフライトを手配する」とメールを送った。

 ところが編集長からの返信を見て、吾輩はいささか気落ちした。どうやら世界中のジャーナリストに同様の招待状が届いているらしいのだ。マクブライドは、SCOのモバイル・ソフトウェアと各種サービスに関する新戦略を明らかにするらしい。今回、大量にメールを送信した背景には、どうやらIBMとの訴訟問題で失いかけつつあるSCOのマインドシェア奪回をもくろむ切羽詰った意図があるようだ、と編集長。なるほど、暑いのもなんだが、むしろ湿気に耐えられないというわけか。

 冷たい缶ビールをもう1本開けたとき、CA関連のニュースがメールボックスに飛び込んできた。友人の情報によると、コンピュータ・アソシエイツ改め「CA」は、プロフェッショナルサービス部門の従業員をForm 1099に移すことを検討している模様だ。そうなると、従業員たちは自己責任で税金を支払うことになり、客先までの交通費などを自前で負担しなければならなくなるという。会社にとっては、投資家向けにボトムラインの見栄えをよくできるメリットがある。つまりは、ごまかされるというわけだ。

 あまりにも外が暑かったので、エアコンの効いた映画館でちょっと涼もう、と吾輩は考えた。往年の動物俳優協会の仲間が活躍しているというので、アニメ映画「Barnyard」の上映館に向かったのだが、チケット売り場の前で携帯電話が鳴った。レドモンドに潜入中のスパイの1人からだ。「つい最近行われたマイクロソフト上層部の異動は、Windows部門の大掛かりな組織変更の始まりになるかもしれない」と彼は分析した。Windows開発チームリーダーのブライアン・バレンタインが別のポジションに異動し、Windows部門の新しいボス、スティーブン・シノフスキーが気心の通じた仲間をどんどん呼び込もうとしているらしい。

 映画を見終わったあと、空きっ腹を抱えた吾輩は牛たちに別れを告げ、「レフティ・オドールズ」へ向かった。カウンターでハム・アンド・チーズをほおばっていると、情報屋から携帯に連絡が入った。300万人のユーザーが利用する仮想プライベート・ネットワーキングが8月7日に買収されるという。目を白黒させながら、そのVPNの名前を聞こうと身を乗り出したとき、通話が途絶えた。ええい、キャットフォンはここぞというとき、なんでいつも不調になるんだ? 「聞こえるか?」って、そっちは聞こえないのか? おい、どうした? と吾輩は大声を上げた。しかし、すぐに吾輩が話しかけているのは電話の相手ではなく、皿の上の茹でたポテトであることに気がついた。

 キャットフォンから最後にかすかに聞こえてきたのは、「来週月曜日に“logmein”すれば、Hamachi zero-config VPNをどこが買収したか分かるよ」というメッセージだった。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
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