Spencer F. Katt

勝つために戦うマイクロソフト

2007/04/02


 “Up on Triple Creek, Craig sends me, if I spring a leak, Craig mends me……”。ロビー・ロバートソンの名曲を改変するのは畏れ多いが、ナショナルフォレスト基金が「ミネソタ州トリプル・クリーク・ランチでインテル会長クレイグ・バレットと楽しむ3日間のフィッシング・ツアー」なるものをeBayのオークションに出品したというニュースを聞いて、ザ・バンドを愛してやまない吾輩は周囲の迷惑も顧みず大声でそんな替え歌を歌ったのだ。

 バレットと一緒にフライフィッシングや乗馬、食事を楽しめるツアーのオークションは、4月17日、入札価格2万5000ドルからスタートする。でも、いくらチャリティーとはいえ、ハイテク企業の前CEOと3日間森の中で暮らすための費用としては、ちょっと高すぎるような気がするけど。もし「動物の倫理的扱いを求める人々の会」(PETA)が、パメラ・アンダースンとの30分間の電話デートをオファーしてくれるなら、まぁ、吾輩も考えなくはないが……。

 そのときキャットフォンからポール・サイモンの「One-Trick Pony」のメロディが流れ、吾輩のつまらぬ妄想を吹き飛ばした。電話をかけてきたのは、マイクロソフト・ウォッチャーの友人だった。彼の話によると、元マイクロソフト・エバンジェリストで、最近はブロガーとしても有名なロバート・スコーブルが、レドモンドの大言壮語に苦言を呈しているという。同社は、インターネットで“勝つために戦う(in it to win)”と意気込んでいるが、スコーブルは自分のブログScobleizer.comで、「マイクロソフトのインターネット対応は最低。検索も最低。広告も最低だ。それが“勝つために戦う”の意味だとすれば、まったく理解できない」と叩きまくっているそうだ。

 元マイクロソフティはまた、「もし自分がグーグルの経営者なら、マイクロソフトCEOのスティーブ・バルマーが最近スタンフォード大学で行ったスピーチの原稿を社内のありとあらゆるドアに貼り付け、従業員の士気を鼓舞するだろう」と書いている。グーグルは「自社のデータセンターで膨大な情報をコントロールし、必要なハードウェアを自前で構築して、Live.comよりもはるかな高速性を実現した恐るべき競争相手」であるにもかかわらず、バルマーはスタンフォードの学生たちに「グーグルはワン・トリック・ポニー(一芸だけの仔馬)だ」と述べるなど、致命的な認識不足を露呈したという。

 「まぁ、確かにそのとおりだ。でも、グーグルにはXboxのような凄いゲーム機はないし、マイクロソフトは近年かなりビジネス範囲を広げつつあるけどね」と、吾輩がしたり顔でコメントすると、いきなり通話が途切れた。どうやら相手が電波の届かないエリアに入ったらしい。しかたないので、吾輩はそのままペンギン系の友人に電話をかけ、Linux王国の最新情報を聞き出すことにした。その友人が話によると、サンがDebian Linuxの創始者であるイアン・マードックをチーフ・オペレーティング・プラットフォーム・オフィサーとして雇い入れたそうだ。また友人は、レッドハットがJBossのR&D投資を倍増させる計画であることも教えてくれた。

 そのころ別の銀河系では、JBoss創業者のマーク・フルーリが自分のブログで、デスクトップLinuxの現状を酷評していた。それはフルーリが3月17日にポストした「Linuxオン・ザ・デスクトップ:ちょっと黙ってろ(Linux on the desktop: Give it a rest)」という記事のことだ。彼はその中で、ドライバ・サポート、Windowsの市場独占、統合Linuxディストリビューションの不在、を問題点としてリストアップ。サーバサイドと異なり、デスクトップの状況は「10年前から変わっていない!」と嘆いた。

 「手厳しい意見だな」と友人は言った。「いやいや。手厳しいというのがどんなものか、キミは知らないようだね」と吾輩は笑った。「コメディアンのシンドバッド氏のように、Wikipediaの自分の項目をチェックしてみたらどうだい? 彼は今年の3月14日、心不全で死亡したことになっていたんだぜ」。もちろん喜劇役者ならステージの上で何度も死んだ振りをするかもしれない。だが、まさか自分の死亡記事を読まされるとは思ってもいなかっただろう。

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