Spencer F. Katt

マイケル・デルも予想できなかったアップルの躍進

2007/10/29


 季節はずれの寒気と湿気のためにブドウの収穫が例年より遅れている北カリフォルニアで、吾輩は今年のワインの出来具合をチェックするため十分な時間をかけてサンプリングを行ってきた。

 吾輩がワイン愛好家であることは、業界や仲間内ではよく知られている。彼らがときどき送ってくれる渋くてすっぱいビンテージワインを味わうときでさえ、吾輩はいつも世界中にハイテクセンターとワイン畑があることを心から感謝しているのだ。

 それはさておき、サンフランシスコ国際空港でボーイング777に飛び乗る前、ある情報屋から、マイクロソフトのUnified Communications(UC)の発表にノーテル・ネットワークスが重要な役割を担っていたことについて、シーメンス・コミュニケーションズが苦々しく思っている理由を解説してもらった。

 どれほど苦々しく思っているかは、シーメンスがUCに関する対応を明らかにするまでに要した時間が物語っている。最高級のカルベネで舌を滑らせながら、情報屋はこの会社の苦悩の原点を解き明かした。

 彼の話によると、シーメンスが数年前に発表したIPテレフォニー製品「OpenScape」は、完全にマイクロソフトの技術をベースとしており、両社の蜜月時代に開発が進められたものだという。そういった経緯から、当然、シーメンスはUC統合化の提携先として自分たちが有利な立場にあるものと考えていた。

 ところが今回、シーメンスにはお声がかからなかった。マイクロソフトはノーテルを選ぶ前、他社との提携を広範に検討していたにもかかわらずだ。フラれたシーメンスは大いに落胆したに違いない、と情報屋は続ける。その時点でシーメンス・コミュニケーションズの未来は、まったく不透明になってしまったからだ。業界では、親会社が同社を売却するか、少なくともスピンオフさせるだろうとの観測が広まった。

 マイクロソフトは、じつは当初、ノーテル以外のパートナーと組んで開発に着手したが、その試みは失敗に終わったらしい。情報屋はもう1杯グラスを勧めても、そのパートナーとなった会社の名前を明らかにしなかった。

 そこで吾輩が、「それはアバイアだな。おそらくマイクロソフトの過度の要求にアバイアが譲歩できなかったんだろう」と推測すると、「マイクロソフトってのは強欲なパートナーだからね」と事情通は相槌を打った。

 その後、吾輩は秋の恒例となったフロリダ州オーランドへの巡礼に向かい、こんがり肌を焦がしながら、「ガートナー・シンポジウム/ITエキスポ」を取材した。かの地で知り合ったあるエグゼクティブは、「ガートナーの賢い連中は今年、ディズニーワールドの陽気な集会にマイケル・デルだけは呼ぶべきでないと思ったはずだ」と笑っていた。

 1997年のシンポジウムに招いたマイケルが、自信たっぷりに述べたアップルに関するコメントは、彼らにとって思い出したくないものの1つだろう。忘れた人のためにもう1度書けば、マイケルは「もし自分がアップルを経営することになったら、どうするか? おそらくすぐにでも会社を清算して、株主に金を返すだろう」と言ったのだ。アップルの現在の株価は、そのときよりもはるかに高い水準にある。

 いまごろマイケル・デルは、iPodやiPhone、スティーブ・ジョブズのクローンを作るにはどうればいいか、一生懸命考えているに違いない。

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