事例で学ぶビジネスモデリング(6)
ビジネスモデリングの使いどころ
〜IT技術者のための戦略・業務分析入門〜

ウルシステムズ
シニアコンサルタント 村上歴
2006/1/27

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◆3. エピローグ(業務の全体像を把握することの重要性)

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  今回のプロジェクトが終了した後、次のフェーズでは一部の取引先と共同してトライアルシステムを開発することになった。トライアルプロジェクトは引き続き弊社が担当し、筆者は仕様の確認およびC社との調整窓口を受け持った。そこでは、今回ヒアリング対象外だった取引先との業務について、いくつか新たな個別対応も出てきたが、拡張フローの追加で対処することができた。また、実際にシステムを動かしているうちに、システムの新たな利用方法に関する機能追加要求も出てきた。これは、今回の仕組みを発展させて、発注データの最新の処理状況を追跡したいというものだった。

 いずれにせよ、プロトタイプを通じ、このシステムの当初の目的である「個別対応の解消」が、確かに基本フローと拡張フローの組み合わせで実現可能であることが検証できた。

 無事にプロジェクトが終了した後、お礼を兼ねてあらためてM氏の元にあいさつに伺ったところ、M氏は次のように話してくれた。

 「各社の業務を同じ表現方法でそろえて書くことで、どこが同じでどこが違うのかがよく分かりました。いままでは個別の細かいところまで詰めなければ問題を解決できず、時間もかかり、根本対処をどう打てばいいのか分からず、同じようなことを何度も検討する羽目になることもありました。しかし、今回のプロジェクトで全体像がつかみやすくなり、どこに手を打てば良いか分かりやすくなりました」

 「今回は全体像が見えたことが最大の効果です。我々は自社の業務はよく分かっていると思っていたのですが、良くも悪くも自社の業務を知り過ぎてしまっていて、こういった全体像をつかむ表現ができていなかったことに気付きました。この結果、以前よりも建設的かつ具体的な議論が活発にできるようになりました」

 「今回の成果を見た関係者からも相談がありました。自分たちもこのような取り組みを進めていきたい、そのときはC社さんに取りまとめ役をお願いできないかと、相談されているんです」

 実際には、今回の統一モデルには基本フローについてもまだまだ改良すべき点があり、解決できない細かな課題も残っていた。それにもかかわらず、M氏には今回の成果を非常に高く評価していただいた。その最大の理由は、ビジネスへの効果とそこに到達するスピードである。これに関してM氏の言葉を借りれば「100点のものは要らない。たたき台でもよいから、すぐに使えるものが素早くできることが重要」ということになるだろう。

 振り返ってみると、今回のプロジェクトでは、仮説検証や課題分析など、コンサルティングで用いられる手法を数多く採用しながら、最終的にはシステム化可能で、実際に利用できる統一モデルを作成できたことがM氏の満足につながったと考えている。筆者にとっては、自身のエンジニアとしてのバックグラウンドと、弊社で新たに学んだ戦略立案や業務分析をはじめとする上流工程のコンサルティング手法を組み合わせることで実現する「顧客への提供価値」の大きさをあらためて実感できる経験となった。

図6 上流フレームワーク+エンジニアリングスキル=大きな顧客価値提供

 次回に続く。

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 INDEX

事例で学ぶビジネスモデリング(6)
ビジネスモデリングの使いどころ
  Page1
◆ 1. プロジェクト開始まで
  Page2
◆2. プロジェクト作業内容
Page3
◆3. エピローグ(業務の全体像を把握することの重要性)

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