連載
情シスに贈る“社内プレゼンス向上のヒント”(3)


プライベートクラウドは本当に必要か

情報マネジメント編集部

2013/2/21


プライベートクラウドはコスト削減やリソース有効活用による経営への寄与といった利点ばかりが喧伝されている。「情シスの社内プレゼンス向上に役立つ情報」をピックアップした「TechTargetジャパン プレミアム」。今回は“仮想化からプライベートクラウドに至る道のり”を通じて、その意義と合理性を再検証する。

クラウドへのいたずらな期待と情シスの苦労

 仮想化、クラウドが浸透し、ITシステムはますます複雑化している。ITコスト削減に対する要求は厳しさを増し、運用管理スタッフが削減されたり、アウトソース先がカットされたりするケースも増えつつある。だが経営層や業務部門の仮想化、クラウドに対する、主にコストや生産性向上への期待は大きい。いわば情報システム部門は、ちまたで喧伝されている“仮想化、クラウドのメリット”と、運用管理の難しさという現実の板挟みに遭っている状況だ。

●著=内野宏信
●発行=TechTarget ジャパン
●2013年2月

 こうした中、俊敏かつ効率的なビジネス展開に役立つとして、プライベートクラウドが注目されている。IT部門がサービスデスクとなって社内のITリソースを一元管理し、リクエストに応じて各種ITサービスを提供する――その基本概念は、「システムのお守りだけしかできない情シスはもういらいない」などと責められがちなIT部門にとって、まさに“経営に寄与するIT部門”への脱皮を図る上で格好の方策となるものだ。だがその注目度とは裏腹に、実際に導入したり、検討したりしている企業はまだ少ない。それどころか、「プライベートクラウド」という言葉を見るたびに、どこか空疎な印象すら漂う――。

 @IT情報マネジメントの記事から有用なコンテンツをピックアップ、再編集してお届けする「TechTargetジャパン プレミアム」。その第3弾となる『プライベートクラウドが必要な本当の理由〜経営層に伝えたい「勝てるシステム運用、4つの条件」〜』は、“経営への寄与”というゴールばかりが注目されがちなプライベートクラウドについて、なぜビジネスに有効なのか、なぜIT部門にとって必要なのかを、あらためてひも解いたコンテンツだ。

 無論、プライベートクラウドの浸透が進まない理由としては、コストの問題をはじめ、現在のシステム運用管理上の問題、経営層の理解などさまざまな要因がある。しかしこの概念が自社の現実とは全く別の次元にあるもの、非現実的なものとして受け止められがちなことも“曖昧な空気”の背景としてあるのではないだろうか。もちろん“必ず導入しなければならないもの”ではないが、本コンテンツはそうした問題意識に基づき、「なぜそれが求められるのか」「なぜそこに行きつくのか」という視点で、今あらためてプライベートクラウドの意義を探っていく。

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『プライベートクラウドが必要な本当の理由』

仮想化からプライベートクラウドに至る道のりの合理性

 2008年のリーマンショック以降、仮想化によるサーバ統合はコスト削減の格好の手段となった。だが、仮想化という新たなレイヤが増えたことによってシステム環境は大幅に複雑化した。パッチ当てやサーバのヘルスチェックといった従来からの運用管理作業に加え、仮想サーバのプロビジョニング、仮想環境のバックアップなど、仮想化ならでは作業も求められるようになり、情報システム部門の負荷は大幅に高まってしまった。だが、スピーディで無駄のないリソース配備、コスト削減というビジネスサイドからの要求と期待は大きい。

 こうした中、2009年ごろからにわかに注目を集め始めたのが運用自動化だ。ジョブスケジューラを使ったルーチンの自動化だけではなく、仮想サーバのプロビジョニングのような「複数の作業プロセスを、複数のツールを使って行う定型作業」を自動化することで運用管理の効率化を狙おうというわけだ。システムのお守りだけではなく、経営への寄与が求められ始めた情シスにとって、“創造的な作業”に注力する余裕を確保する意味でも重要な取り組みといえた。

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 だが自動化を進めるためには、運用プロセスの棚卸しが不可欠。また合理的・効率的なプロセスに改善しなければ自動化の効果は半減してしまう。そこで自動化に続いて「標準化」にフォーカスが当たっていく。さらに2011年後半に入ると、SaaS、IaaS といったパブリッククラウドの浸透が進み、物理、仮想、クラウドが混在するハイブリッド環境をどう管理していくかというテーマへの関心が高まっていく。ここにきて、従来から求められてきた「システムの構成可視化とリソースの一元管理」「サイロ化からの脱却」といった言葉がキーワードになっていく。

 可視化、自動化、標準化、そして情シス本来の役割の追求――では、これらを実現するためには、具体的に何がポイントになるのだろうか? そしてこれらを実現した先に見えてくるシステム運用体制とはどのようなものなのか? 本コンテンツではアナリストヘの取材を通じてこれらの解を探りつつ、仮想化が運用現場に投げかけた波紋が、新たな運用管理の在り方に向けて収束していく様をあらためてまとめている。

 必要なときに必要なリソースを無駄なく活用することで、ビジネスのスピーディな展開を後押しするプライベートクラウド――そんな出来上がったイメージばかりが独り歩きしている上、中には仮想化によって物理サーバを統合しただけのものを「プライベートクラウド」と称する向きもあるほど、この言葉はあいまいなものになっている。

 運用自動化製品、垂直統合型製品、複数のハイパーバイザを統合管理できるクラウド基盤ソフトウェアなど、プライベートクラウドを実現する手段が充実しつつある今、聞き飽きた感のあるこの言葉の意味をもう一度考えてみてはいかがだろうか。プライベートクラウド実現に至るロードマップとその理由、またさまざまな支援ツールの意義が、あらためて見えてくるはずだ。

 仮想化、クラウドの浸透に伴い、今、情報システム部門には「攻めのIT活用」と同時に、「複雑化したシステム基盤の効率的な運用」という課題も突きつけられている。この2つの背反するテーマをどのように両立していけばよいのか?――「TechTargetジャパン プレミアム」では、多忙な情シス部員に向けて、他社のエンタープライズ系ニュースサイトよりも一歩突っ込んだ情報をピックアップしてコンパクトに提供していく。ぜひ日々の業務の参考にしてほしい。


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