次世代キャリアサービス大解剖(2)
キャリアも提供、仮想サーバサービス


小川悠介
IIJグローバルソリューションズ プリセールス
2010/10/5

この記事では、日本で企業間ネットワークサービスを提供するキャリア(サービスプロバイダ)が始めつつある次世代サービスの概要と、それを可能にした技術的ブレークスルーを紹介していきます。

広がる仮想サーバサービス

 第2回は「キャリアが提供する仮想サーバサービス」を取り上げたいと思います。

 いまや多くの企業システムで、サーバ仮想化技術を検討もしくは導入していることと思いますが、キャリア(サービスプロバイダ)もまた、仮想サーバサービスを提供していることをご存じでしょうか? キャリアが回線だけでなく仮想サーバも用意し、キャリア網内で利用できるというサービスです。

図1 キャリアが提供する仮想サーバサービスのイメージ

 この記事では「企業向けネットワークに興味のある方」ならびに「企業インフラシステムに興味のある方」を対象に、キャリアが提供する仮想サーバサービスの特徴から有効利用の方法までを解説していきます。

注1:各キャリアの仮想サーバ提供形態および提供状況はさまざまであり、本稿で解説している機能や利用方法を保証するものではありません。詳細には提供キャリアおよびネットワークインテグレータに問い合わせてください。

パブリッククラウドと似て非なるサービス?

 キャリアが提供する仮想サーバサービスの特徴を分かりやすくするために、すでに市場で提供されているほかのサービスと比較してみたいと思います。具体的には、「パブリッククラウド」「プライベートクラウド」といわれる2形態です。もちろん、クラウドが必ずしも仮想サーバを意味するものというわけではありませんが、特徴をつかみやすくするための表現としてご理解ください。

 パブリッククラウドは、主にデータセンター事業者側がハードウェアリソースを用意し、それを論理的に分割して利用者に提供する形態といえます。何らかのネットワークを用いて接続できれば利用可能となるため、海外のサービスでもインターネット経由で利用できます。

 海外のパブリッククラウドサービスとしてはAmazon EC2Microsoft Windows AzureGoogle App Engineなどが知られており、すでに利用している方も多いかと思います。国内ベンダも多く提供を始めており、一般的に、通信遅延の面で国内設備の方が有利とされています。

 一方のプライベートクラウドは、主に既存データセンター内にクラウドコンピューティング設備を導入し、そのハードウェアリソースを論理的に分割し、企業全体でシェアする目的で利用されます。システムインテグレータが仮想サーバのアプリケーションまでを設計・導入することが多く、企業内システムに仮想化機能をそれなりの規模で取り込んだ形態といえます。

 仮想サーバを用意するというよりは、企業内にクラウドコンピューティング設備を持つという意味合いの方が強いのかもしれません。ハードウェアへの初期投資が必要な半面、占有して自由にカスタマイズできる利便性があります。

 キャリアが提供する仮想サーバサービスは、提供形態としてはパブリッククラウドに近いといえます。キャリア網内にクラウドコンピューティング設備を用意し、論理的に分割したハードウェアリソースを提供する形態となるからです。

 しかしながら、キャリアが提供する仮想サーバサービスは、閉域性回線設備においてパブリッククラウドと一線を画する存在となっています。

 パブリッククラウドの多くはインターネット経由での提供を許可しており、事実上、世界中からアクセスを受けられる状態です。それに対しキャリアが提供する仮想サーバサービスは、企業向けプライベートネットワークサービスの利用者に限られるため、高い閉域性が確保できます。また、パブリッククラウドで必要とされる接続用の回線も、キャリア網内から提供するため不要になるというメリットがあります。

図2 クラウドとの違い

 上記の前提を踏まえたうえで、「データセンター事業者が提供する仮想サーバサービス」と「インテグレータが提供する仮想サーバサービス」との比較を表にしました。前者がパブリッククラウド、後者がプライベートクライドと近い形態となります。

 
キャリアが提供する
仮想サーバサービス
データセンター事業者が
提供する
仮想サーバサービス
インテグレータが提供する
仮想サーバサービス
仮想サーバ設置場所
キャリア網内設備 データセンター事業者設備
利用者指定のデータセンター
追加のWAN回線設備
網内で接続されるため、WAN回線を追加することなく広帯域が利用可能
WAN回線をデータセンター事業者と接続する必要がある
既存データセンターの回線を利用可能
提供形態
仮想サーバ単位
スペック・台数は可変
仮想サーバ単位
スペック・台数は可変
インテグレータがハードウェアから仮想サーバのアプリケーションまでを一括提供することが一般的
価格体系
仮想サーバのスペックに
応じた月額請求
仮想サーバのスペックに
応じた月額請求
ハードウェアの購入と仮想サーバ環境の設計・構築のセットが一般的
利用開始までに必要な工程
キャリア網における
ネットワーク接続
仮想サーバの割り当て
WAN回線の敷設
仮想サーバの割り当て
仮想サーバ環境の設計・構築
カスタマイズ・セキュリティ・管理・運用 提供される
サービスレベルに準ずる
提供される
サービスレベルに準ずる
通常のサーバと同じく、利用者の環境に合わせた策定が可能
表1 データセンター事業者とインテグレータが提供する仮想サービスの違い

 この比較表からも、キャリア、そしてデータセンター事業者が提供する仮想サーバサービスは、一見似てはいるが異なる特徴を持つ仮想サーバサービスであることがうかがえると思います。

注2:どちらも国内で多くのベンダがサービスを提供しており、記載内容がすべて当てはまらない場合もありますので、詳しくは利用しているベンダにご確認ください。

サービスの基本構成

 この仮想サーバサービス以前から、キャリアは、例えばTV会議システムやセントレックスサービスのような、網内から提供するさまざまなサービスを取り扱ってきました。今回取り上げる仮想サーバサービスが、それら既存のサービスと大きく異なる点は、提供対象がサーバそのものであり、利用者側が自由に用途を決められることです。

 では、キャリアが提供する仮想サーバサービスの基本的な構成や共通する機能概要について解説していきます。

 キャリアが提供する仮想サーバサービスの提供イメージとしては、VMwareKVMのような仮想化技術で生成された仮想サーバ区画を、自社のプライベートネットワーク内に持つような形になります。仮想化されたサーバそのものが提供対象となるため、仮想化技術やハードウェアベンダについてユーザー企業が意識する必要はありません。メニュー化されたCPU、HDD、メモリなどのスペックを指定するだけで、仮想サーバが提供されます。OSがプリインストール状態で提供されるタイプもあれば、OS自体も利用者が用意・導入するタイプもあります。

図3 キャリアが提供する仮想サーバサービスが提供する範囲

 仮想サーバは、キャリア網内に設置されるイメージとなるため、広帯域の回線が利用可能です。さらに、仮想サーバと各拠点との距離も近くなるため、ネットワークパフォーマンスの向上が期待できます。また、キャリアはクラウドコンピューティング規模の設備を用意することで、スケールメリットを享受でき、競争力の高い仮想サーバを提供できます。ユーザー企業はそこから利用したい分だけリソース(仮想サーバ)を提供してもらえるため、余分なハードウェアリソースを持つ必要がなくなります。

図4 キャリアが提供する仮想サーバサービスのイメージ図

 

キャリアも提供、仮想サーバサービス
広がる仮想サーバサービス
パブリッククラウドと似て非なるサービス?
サービスの基本構成
  キャリア提供ならではのメリット
導入前に確認すべきポイントとは?
利用方法あれこれ、3つのたたき台
市場に受け入れられるか? 今後への期待
「Master of IP Network総合インデックス」


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