最適インフラビルダーからの提言〜どこまでアウトソースするか?〜

特集:マネージド・サービスの選び方(中編)

IPセントレックスでコストメリットはどこまで創出できるのか?

2004/6/11
大宅宗次

 “通話料無料”の甘い言葉の裏を知ろう

 「加入者同士なら通話料は無料」というIP電話の宣伝文句にも、最近ではすっかり慣れてしまった感がある。しかし、「無料」という言葉の持つパワーはやはり効果的で、各ISPでは、もうけがあるかは別として順調に加入者を伸ばしている。

 ところで、大抵の企業は企業内で用いる内線網を持っている。多くの人が内線同士の通話はこのIP電話と同様に通話料が無料だと思っているのではないだろうか。よって、ほとんどの人が、多かれ少なかれコスト意識を持って内線を積極的に使っているだろう。

 ところが、内線網の維持に莫大(ばくだい)な費用が掛かっていれば、いくら通話料が無料でも意味がない。かつて外線は非常に高価なものだった。よって、企業は拠点ごとに構内交換機(PBX)を配置して、専用線などを用いて接続する自前の内線網を構築し、コスト削減を図っていた。

 従来の電話システムでは、PBXの導入と運用保守の費用は掛かるが、高価な外線に比べれば内線は通話料が無料でコスト削減は明白だったからだ。しかし、通話料に関してIP電話の登場により外線がかつてほど高価ではなくなってきた。そうなるとPBXの導入、および運用保守に掛かる費用がコスト削減の矛先に変わってきたのは当然のことだろう。

 IPセントレックスでコストメリットを創出する
 5つのポイントとは?

 企業の内線網を提供してきたPBXをIPネットワーク上でサービスとして提供する「IPセントレックス」も登場から1年以上が経過した。IPセントレックスサービスを利用すれば企業のPBXを事業者にアウトソースすることができる。つまり、企業がこれまで自前で持っていたPBXの設備をなくすことで導入と運用保守に関するコストを大幅に削減できるというわけだ。

 また、多くのIPセントレックスサービスが提供している格安な外線通話、例えば自社や提携のIP電話とは内線と同様に無料、固定電話には全国一律3分8円などといったサービスを組み合わせることでさらにコスト削減も期待できる。どのIPセントレックスサービスを選べばよいかはコスト削減が大きなポイントとなるはずだ。

 コストの差は、企業が電話を含めたネットワークをどこまでアウトソースするかにより変わってくる。コストの差が出るポイントは、主に以下の5つだ。IPセントレックスは具体的な値段が公開されていない部分が多いので実際のコスト比較はできないが、ポイントごとのその理想的な選び方を見てみよう(図1)。

図1 IPセントレックスサービスの基本的な構成例と選び方のポイント

<コストの差が出るポイント>

  1. 接続回線サービスによる選び方
  2. 企業側設備の導入形態による選び方
  3. IPセントレックスを介した外線数による選び方
  4. 内線以外の無料通話による選び方
  5. 必要なPBX機能による選び方


1. 接続回線サービスによる選び方

 IPセントレックスは事業者側に設置するサーバにより各拠点のPBX機能を実現する。IPセントレックスを利用するために、まずは拠点と事業者のサーバを接続する回線が必要となる。ここで、各事業者が提供しているサービス内容を見てみると、この回線がセットになっているものとセットになっていないものがある。

 インターネットやIP-VPN、広域イーサネットなどのVPNサービスを提供している大手の事業者のほとんどが、その事業者の回線サービスの利用が前提となる。IPセントレックスは回線サービスの付加サービスとしてバンドルされている形態だ。よって、すでにその事業者の回線サービスを利用しているユーザーにとって、IPセントレックス導入に伴う移行がしやすい。いわゆる音声とデータの回線統合もスムーズに行える。小規模拠点などは安価なブロードバンド回線1本で済むケースもあるだろう。IPセントレックスと同時にVPNなどの回線サービスの導入を検討している場合には、IPセントレックスサービスの内容が回線サービスを選択するポイントとなるかもしれない。

 しかし、ユーザー側の立場で見れば、回線サービスとIPセントレックスがバンドルされているメリット、例えば割引サービスなどが見当たらないのは残念だ。IPセントレックスと回線サービスがバンドルされていない形態であれば自由に回線を選べるので、安い回線を選ぶこともできる。しかし、音声通話を安定して実現するためにそれなりの品質を持った回線を条件としている事業者がほとんどだ。とはいえ、音声に必要な帯域幅はチャネル数にもよるがそれほど広帯域は必要ではないので、データ用とは別に音声用に安価なブロードバンド回線を選びコストを削減する方法もある。よって、データと音声との統合の仕方がサービス選択のポイントとなる。

2. 企業側設備の導入形態による選び方

 IPセントレックスを利用するには企業側の設備も変更しなければならない。新規にIP電話機を導入する方法と、既存PBXと電話機を残す形でゲートウェイ機器を介して接続する方法がある。また、各拠点で公衆網に接続するためのゲートウェイ機器も必要になる。各事業者が提供しているサービス内容を見てみると、事業者が推奨する機器を企業側で用意するサービスと事業者側で提供するサービスがある。

 気を付けたいのは、ゲートウェイ機器を事業者側で提供するといってもレンタルと買い取りを選べるものと、選べないでどちらかのみを提供するものがある。また、機器ベンダやシステムインテグレータを事業者側で指定しているサービスもある。これらの方法は自由に選択できるものではないため、ゲートウェイ機器の提供の方法は、IPセントレックスの初期費用と月額料金に差が出るポイントになる。

 企業側で自由に選べるサービスだと、市場価格で購入、あるいはレンタルすることができるため、セットになっているものに比べてコストを安くすることも可能だ。これまでPBXを自社で導入運用してきた際には、PBXの導入運用コストが高価だったため、特に電話機のコストは無視できるほど少なかったという企業も少なくないだろう。

 PBXと電話機がセットになっていたため、PBXをIPセントレックスにアウトソースすることで端末のコスト負担が大きくなったと感じるかもしれない。しかし、IPセントレックスの事業者と設備の調達先が異なることが、アウトソースの観点からは負担となる場合もある。よって、アウトソース先を一括にするか分割するかがサービス選択のポイントとなる。

3. IPセントレックスを介した外線数による選び方

 IPセントレックスでは内線通話は端末当たり月額1000円前後の定額性で通話料は無料となっている。これとは別に各事業者が提供しているIP電話網を介した格安外線を提供しているサービスがほとんどだ。このIPセントレックスを介した外線は必要な本数分だけの月額費用が掛かるサービスが多い。もちろん普通の公衆網に比べ安いとはいっても、通話料は掛かる。この外線には050で始まる番号が付けられる。内線端末数の定額料金の差でコストが変わるのはもちろんだが、この外線数によってもさらにコストに差が付く。

 ここでIPセントレックスを介した外線にはこれまでの公衆網に接続する形態に比べて、発着信に制限がある点に注意しなければならない。例えば着信はまったくできないサービスもある。よって、拠点ごとに公衆網への接続が必要となるが、この公衆網への接続数と併せて必要な外線数を決めなければならない点に注意が必要だ。つまり、発信と着信に必要な回線数を分けて算出し割り当てなければならない。IPセントレックスを介した外線数による選び方はこの特徴を考慮することがポイントとなる。

4. 内線以外の無料通話による選び方

 先ほどのIPセントレックスを介した外線を利用してその事業者のIP電話網の加入者、あるいは提携の加入者との通話料が無料になるサービスがある。これはIPセントレックスを利用した内線通話ではないが、通話料が無料であれば内線である必要はない場合もある。
 例えばSOHOなどで端末が1台のみで、その拠点でPBX機能が必要ない場合だ。よく知られたとおり、無料通話が可能なIP電話は事業者間でグループ化されつつある。SOHOで使用している、あるいは使用する予定の事業者のIPセントレックスを選ぶことが、結果的に無料通話の範囲を広げるポイントとなる。事業者の動向も洞察しておくといいだろう。

5. 必要なPBX機能による選び方

 IPセントレックスサービスでは事業者側でPBX機能を提供する。各社ともこれまでのPBXの基本的な機能、例えば保留や転送、代表着信や番号通知、着信拒否などはカバーしている。これらの機能ごとに付加料金を設定している事業者もいるが、端末数に関係なく非常に安い料金を設定している事業者が多いのでコストに差が出るほどではない。

 しかし、提供するPBX機能を限定してIPセントレックスサービスを安く提供するという戦略の事業者もいるので、サービスの選択で自社に必要な機能を提供できるかを確認するのは重要だ。

 余談になるが、中にはこうした一般的な基本機能だけでは満足できない企業がいる。従来のPBXにはほとんどのユーザーは使わないが、ある特定のユーザーのために実装したニッチな機能がある。もちろんこの機能はその企業の業務形態に依存している。こうした特定機能の提供によりPBXベンダ間で差別化を図ってきた経緯があるのだ。これまでこうした機能を利用してきた企業にとって、コストを削減するためにIPセントレックスを導入したことにより使えなくなったでは済まない場合もある。

 こうしたケースが予想される場合はこれまで付き合いのあるなじみのPBXベンダに相談するのが得策だ。そのPBXベンダがIPセントレックスを提供している場合は、一般的なサービスメニューにはないが対応してくれる可能性が高いからだ。IPセントレックスを提供している事業者はISP、電話専門の事業者を含む通信事業者やPBXベンダ、システムインテグレータと多岐にわたる。

 しかし、通信事業者の多くが実際にはPBXベンダなどにアウトソースしているという点にも注目したい。どこにアウトソースしているかを協業という形で公開している通信事業者もいる。よって、事業者の最終的なアウトソース先のPBXベンダがサービス選択のポイントとなる場合があるといえる。

 IPセントレックスサービスを新しい通信サービスとして宣伝している事業者もいるが、実際はかなりアウトソーシング色が強い。よって、企業側でもここで挙げた5つのポイント以上に自社の環境や要求に基づいたアウトソース先を選ぶという観点から、サービスではなく事業者を選ぶ必要性があるといえる。以上に述べた選択のポイントを参考に、自社にとって有利なサービスを選んでいただきたい。



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