帳票ベンダ・インタビュー 第13回

メインフレームからインターネット環境まで、
大量帳票の生成・出力・配信を
トータルサポート。


吉田育代
2007/3/13


オープン環境の企業情報システムにおいて、帳票ニーズはいまどのような状況になっており、それに対して帳票ベンダはどのようなソリューションを提供しているのか。帳票ベンダへの直接取材でその解を探るシリーズ。第13回は、ビーエスピー・プリズムを取り上げる。

 

 ビーエスピー・プリズムは企業がシステム環境をメインフレームからクライアント/サーバシステムへと移行するころから、一貫して帳票ソリューションを提供してきた老舗ベンダ。その製品のラインアップそのものが、同社の長年にわたる実績を語っている。2006年10月、ビーエスピー・グループの一員となり、製品提供だけでなく、コンサルティングから帳票のライフサイクル全体をサポートする体制も整い始めている。

   オープンシステム時代の幕開けとともに

 かつて企業でコンピュータといえば、おのずとメインフレームを意味していた時代があった。それが1980年代後半からクライアント/サーバシステムの先駆けであるUNIXという世界が登場し、先進性とコストパフォーマンスの高さを猛然とアピールし始めた。

 企業は、ダウンサイジング、オープン化という旗印の下に企業情報システムの 在り方 を徐々にシフトさせていく。といっても、まだパッケージ・アプリケーションも潤沢にはそろっていない時代のことで、情報システム部門は自らハードコーディングで開発を行った。

 その中には当然、帳票回りのプログラムも含まれていた。メインフレームと同じレベルの業務を実現したいと思うものの、アーキテクチャの壁もあってなかなか一朝一夕にはいかない。

 そんな様子を見ていたのが、当時受託開発を手掛けていたプリズム(現在はビーエスピー・プリズム)だった。帳票フォーム作成エディタとして「FormHelper」をリリースする。簡単に設定できるプロパティやメインフレームの既存フォーム資産を有効活用でき、ワープロ感覚でフォームを作成できるツールとして、メインフレームからUNIX環境へ移行しようとしているユーザーに好評を博した。オプションではあったが、画面で帳票を見る機能、いまでいう電子帳票としての機能が備わっており、当時としてはなかなか画期的な製品だったという。

 いざ帳票を作り始めると、いろいろと資源がたまり始める、帳票フォームの書式や独自に作成した外字といったものだ。紙の伝票に保管場所が要るように、そうしたデジタルデータも置いておくところが必要だ。

 また、帳票出力をスムーズに行うためには、給紙トレイの指定や印刷履歴の記録、障害時のプリンタ変更指示など、プリンタそのものを完全に制御し切る必要があることが分かってくる。そこで開発されたのが、印刷・帳票資源管理サーバ「DURL」(デュール)である。

 DURLは、Down Up Right Leftの略称で、Downはプリンタ、Upはメインフレーム、それを情報システム環境のどこにでも出力できるからRight Leftなのだそうだ。プリンタ、帳票フォーム、印刷ジョブを一元管理するとともに、プリンタドライバを介さず、自らがプリンタ言語で命令を出すことで、プリンタの持つスペックを最大限に引き出すことを可能にする。

 当時、企業の情報システム部門はメインフレームとメインフレーム専用プリンタで行っていた、数千枚、数万枚規模の定型帳票出力をオープン環境に移行したいと考え、プリンタメーカーもオープン環境に対応した大型のレーザープリンタをリリースしたばかりだった。

 「DURL」はそのどちらの思惑にもはまり、同社における大きなヒット商品となったという。オープン環境で汎用プリンタを使いながら、メインフレーム並みの大量・高速印刷ができる点が受けたのである。プリズムは、メインフレームを引き続き利用する企業のために、そのデータを「DURL」で扱えるよう変換するアダプタ「GateWareServer」もリリースした。

   XMLを利用したファイルフォーマットを開発

 「DURL」は、これまでの記述でも分かるとおり、定型帳票をバッチ処理でペーパー出力するのに適した帳票サーバである。そうした業務はいまも変わらずにあるが、インターネットが登場し、それが企業内で浸透するころになると、このプラットフォーム上で帳票を、つまり電子帳票をということだが、扱いたいというニーズが高まってくるようになった。

 すでに標準的に利用されている電子帳票のフォーマットは、大量に生成しようとすると時間がかかったり、ファイルサイズが大き過ぎてクライアントPCで開けられないという問題が起こっていた。それに対抗するため開発したのが「ROF」(Report Object File)というファイルフォーマットだ。

 標準的に利用されている電子帳票に比べて、ファイルサイズも生成時間も1/10という特徴を持つこのROFは、市場に投入するやある大手企業の社内業務で標準ファイルフォーマットとして導入された。

 しかし、このROFが単独で権勢を振るった時代は意外に短かった。同社が後継のファイルフォーマットとして「XRF」(XML Report Flie)を投入したからである。文字から推察できるとおり、これはXMLを利用したファイルフォーマットだ。「ROF」という製品を持ちながら、XRFを開発した経緯を、ビーエスピー・プリズム 取締役 執行役員 CS本部長 東賢一氏は次のように語る。

ビーエスピー・プリズム 取締役 執行役員 CS本部長 東賢一氏(右)と執行役員 開発本部長 上家富隆氏(左)

「帳票は企業にとって大事な資産で、再利用する機会が多いものです。そのため5年、10年のスパンで保管されることも少なくないのですが、ハードウェアやOSが進化し続ける中、正直いって既存の帳票ツールで作成した帳票フォームの可読性を保証し続けるのが大変でした。

 何かメンテナンスしやすい形はないかと考えたところ、XMLなら再利用性が高く、価値あるデータとして取っておくことができると考えたのです。『XRF』をリリースした当初はまだXMLでデータを管理しようという企業はあまりありませんでしたが、複雑なデータ構造を持った帳票を利用されている企業ほど、その意義を理解してもらうことができました」

 その「XRF」は、厳密にはソリューション名で、大きく3つの製品から構成されている。

 「XRF Designer」は、帳票フォーム作成エディタで、いわゆる帳票設計ツールである。フォームパーツの部品化など開発工数を削減する工夫とともに、可変帳票、フルカラー対応、グラフ機能の標準装備、バーコード(2次元を含む)対応など、さまざまな特徴を持つが、連続帳票や固定帳票などドットプリンタ用の帳票設計が可能なのは、メインフレームからのオープン環境への移行を支援してきた同社ならではの機能といえるだろう。

画面1 保険見積もり作成の画面例
画面2 商品購入代金払込書の作成例
画面3 カード利用明細の作成画面例

 「XRF Composer」は帳票ファイルを生成するライブラリである。「XRF Designer」で設計した帳票フォームをここに登録しておき、ユーザーアプリケーションからの指示に応じて帳票を生成する。A4、1000ページ分のデータを0.3秒で電子帳票化可能だという。

 ファイルサイズは、標準的に利用されている電子帳票の1/300だ。Javaのクラスライブラリとして提供されており、Webアプリケーションへの組み込みもできる。ファイル生成時、給紙トレイの指示、オフセット印刷の有無、画面表示時にけい線を表示し、印刷時にはけい線を表示しないプレプリント機能、カラー切り替え、用紙サイズなどといった印刷制御情報も指定でき、配信先での印刷方法が制御できる。

 「XRF Reader」は、XRFファイル専用のリーダーである。クライアントPCにこれがインストールされていれば、直接印刷が指定されているXRFファイルは、画面を表示することなく即時印刷実行させることができる。出荷指示票やピッキングリストなど、最終出力がペーパーと決まっている場合などに便利に利用されている。

 また、XMLでデータを保持しているために検索が項目単位で高速に行え、それを複数項目組み合わせて実施することも可能だ。XRFファイルのデータをXML形式で抽出してExcelなどに持っていき、そこで二次加工することもできる。これも元がXMLなのだから当然といえば当然なのだが、現場でデータ分析を行いたいときなどに有効だ。

 ただし、クライアントPCにインストールする必要があるため、消費者向けのクライアント環境が管理できないアプリケーションなどには「XRF」は適さない。その場合は、「XRF Composer」で標準的な電子帳票を生成する機能を持っているので、そちらを選択することができる。

   帳票基盤システムとしての完全性を追求

 多くの帳票ツールベンダは、ここまで製品をそろえると、次は作成した電子帳票を文書として一元管理する方法を考えるものだろう。しかし、ビーエスピー・プリズムはあくまで“帳票出力基盤”としての完全性にこだわったようだ。

 「DURL」「XRF」とともにラインアップされているのは、Web対応ドキュメント配信・印刷サーバを提供する「PrintStation」というソリューションである。このソリューションの中核をなしているのが、帳票配信をつかさどる「JointBase」と自動印刷を担当する「JB PrintLauncher」である。

 この両者で、帳票印刷のみならず配信運用をサポート、インターネット環境下での自動即時印刷を実現する。WordやExcelといった帳票以外のファイルの配信システムとして機能させることも可能。印刷出力までの処理フローが複雑になる場合は、「PRISM Data+」という製品を利用すれば、GUIベースでフローを設定することができる。

 2006年10月、プリズムはビーエスピー・プリズムとなり、ビーエスピー・グループの一員となった。今後はビーエスピー、ビーエスピー・ソリューションズとのグループ連携の下、帳票基盤システムのコンサルティングから帳票ライフサイクル全体をサポートするパッケーソリューションを提供していく。

 その典型的な例がビーエスピーの提供するログ管理ソリューション「Loganizer」との連携で、帳票基盤システムをめぐるセキュリティ強化が求められる中、誰がいつどの帳票をどのプリンタのどの給紙トレイに出したかといった詳細な記録を取れるようになる。

 また、近々発表される「DURL」の新バージョンでも、セキュリティ面の強化には力を入れているという。「理想は、帳票生成指示から最終アウトプットが必要な人間に届くまで、まったく人を介在させずに完全機械化し、改ざんの余地をなくすこと」(東氏)。

 帳票基盤システムの世界では長い実績を誇るビーエスピー・プリズムだが、まだ突き詰めるべきことはあると、ビーエスピー・プリズム 執行役員 開発本部長 上家富隆氏は語る。

「結局、システムというのは何かの業務を早く終わらせたいから使うもの。作業効率の向上を考えたら、印刷出力のスピードはもちろんのこと、ユーザビリティー、システムフローなど改善できる点はいくつもある。マウスを動かす距離一つまでこだわった製品に進化させていきたい」




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