技術解説
BizTalk Server 2004の機能と構造(後編)

4.BTS 2004のスケーラビリティ

デジタルアドバンテージ
2004/10/13

 わずかなトランザクションであれば、1台のコンピュータだけでBTS 2004のプロセス処理を完結させることもできるが、大量のメッセージを処理するようなシステムでは、プロセス処理の実用性を高めるために、必要に応じて負荷分散などのチューニングを実施しなければならない。

 前編で述べたとおり、従来のBTSはオーケストレーションを逐次解釈・実行されるスクリプトで記述したが、BTS 2004ではC#やVB.NETなどの言語でオーケストレーションを記述し、コンパイルして実行できるようになり、オーケストレーションの処理性能が大幅に高速化された(マイクロソフトの説明によれば、5倍高速になったとされる)。これにより、オーケストレーションを実行するためのサーバの負荷は大きく軽減された。しかもBTS 2004では、オーケストレーションの実行が軽量化されただけでなく、スケーラビリティの柔軟性が大きく向上している。

 これも前回簡単に触れたが、従来版BTSでは、オーケストレーション・インスタンスの状態(オーケストレーション・インスタンスによって送信されるメッセージや処理の進捗状況など)をメモリに保存していた。このため、実行中のオーケストレーション・インスタンスは、物理的なサーバに依存してしまう。これに対しBTS 2004では、オーケストレーション・インスタンスの状態がSQL Serverデータベースのメッセージ・ボックスに格納されるようになった。これによりオーケストレーション・インスタンスは、特定の物理サーバに依存せず、必要に応じて空いているサーバで実行できるようになった。より効率的な負荷分散が可能になる。

 前回の図「BTS 2004の内部構成」では、BTS 2004エンジンをひとまとめに描いたが、実際にはBTS 2004エンジンを構成するコンポーネント(オーケストレーションやアダプタ)をそれぞれ別のコンピュータに分散配置することができる。例えば次の図は、4台のコンピュータを使って、1つのBTS 2004エンジンを構成したものだ。

BTS 2004のスケーラビリティ
4台のコンピュータを利用して、1つのBTS 2004エンジンを構成した例。「ホスト・インスタンス」はWindowsプロセスで、BTS 2004の各コンポーネントはこのホスト・インスタンスの中で実行される。

 システムAでは、オーケストレーション・インスタンスとReceiveアダプタ/パイプラインのインスタンスが1つずつ実行されている。そしてオーケストレーション・インスタンスの内部では、2種類のオーケストレーションが実行されている(オレンジ色とピンク色)。ここで「ホスト・インスタンス」は1つのWindowsプロセスを意味している。

 システムBでは、オーケストレーション・インスタンスだけが実行されている。システムAでも実行されていた2つのオーケストレーション(オレンジ色とピンク色)がこちらでも実行されている。このように、コンピュータの負荷に応じて、オーケストレーションを複数のコンピュータ上で分散して実行することができる。負荷分散要求は、BTS 2004からオーケストレーション・コンポーネントに対して自動的に送信可能だ。

 システムCには2つのホスト・インスタンスがあり、各インスタンスでそれぞれ異なるSendパイプライン/Sendアダプタが実行されている。このように複数のパイプライン/アダプタを用意しておき、出力先に応じて使い分けることなどが可能だ。ホスト・インスタンスはWindowsプロセスなので、たとえ一方のインスタンスで障害が発生しても、他方のインスタンスは影響を受けない。従って新しくカスタマイズしたパイプライン/アダプタのテストも問題なく実施できる。

 この例では、メッセージ・ボックスを単一のコンピュータ(システムD)で実装しているが、この部分はSQL Server 2000なので、必要なら複数のコンピュータに分散させ、負荷分散や冗長性の増大を図ることもできる。

BTS 2004によるビジネス・プロセス・デザインを実体験

 以上、BTS 2004の内部構成などを中心に概要を説明してきた。プログラマにせよ、システム管理者にせよ、業務担当者にせよ、これまでに説明してきたことは、BTS 2004に触れるための基礎知識として役立つはずだ。しかし説明を読んだだけでは、BTS 2004を利用したビジネス・プロセス・デザインの世界を理解するのは困難であり、ひいてはBTS 2004の本当の価値を知ることもできない。やはりこれには、BTS 2004をインストールして実際に触ってみるのが王道だ。

 幸いマイクロソフトは、BTS 2004やSQL Server、Windows Server 2003などのサーバ・ソフトウェアの120日間試用版を提供している。これを利用すれば、高額な投資をしなくても、BTS 2004に触れることができる。

 テスト用のコンピュータを用意するのが困難なら、ソフトウェアで仮想的なコンピュータを実現するVirtual PC/Virtual Serverを使ってBTS 2004環境を構築することもできる(Virtual Server 2005日本語版はまだ製品化されていないが、早期評価版を入手することができる)。サポート技術情報によれば、Virtual Server環境へのBTS 2004のインストールは未サポートだが、Microsoft BLOGの担当者の書き込みによれば、快適に実行できるとのことだ。

 さらにマイクロソフトは、BTS 2004でのビジネス・プロセス・デザインを体験できるように、一連のステップをシナリオに従って実行できるようにした「BizTalk Server 2004デモキット」を公開している。

BizTalk Server 2004デモキットの実行例
提供されるシナリオに従って、ステップ・バイ・ステップでBTS 2004を利用したビジネス・プロセス・デザインを体験できる。

 デモキットは非常によくできているのだが、残念ながらこれを実行するための環境構築は簡単ではない。デモキットを実行するには、次のソフトウェアのインストールやService Packの適用が必要だ。

  • Office 2003 Professional Edition
  • Windows Server 2003
  • BizTalk Server 2004
  • Visual Studio .NET 2003
  • SQL Server 2000(SP3a)+Analysis Services(SP3a)
  • Microsoft XML Core Services(MSXML) 4.0(SP2)
  • Microsoft XML Core Services(MSXML) 3.0(SP4)
  • SQLXML 3.0(SP2)
  • Microsoft Office Web Components 10
  • Q831950(SQL Server 2000向けパッチ)
  • BizTalk Server 2004 Rollup Package 1

■手軽な動画デモ
 コンピュータの手配や環境を構築している時間がないという場合は、動画(.WMVファイル)ベースのデモンストレーション(約20分)も用意されている。英語版のみで、英語が得意でなければ細かい説明を聞き取るのは困難だが、メニュー操作やダイアログの操作などといった画面の動きを見ているだけでも、BTS 2004の世界をおおよそつかむことができるだろう。

 このページには、デモを実際に体験するためのアプリケーション・キットを含んだファイルもあるが、.WMVファイル形式のデモだけを収めた20040408BizTalkSWDemo.exeの方をダウンロードしてインストールする。

 このデモでは、InfoPathをクライアント・アプリケーションとして、Webサービス・インターフェイスを介して、ごく単純なオーケストレーション処理をデザインし、実行している。

BTS 2004でSOAを体験

事例研究(三菱重工 神戸造船所)

 互いに自律できる情報システム同士を連携して、情報システムの疎結合化をさらに一段進める概念としてSOA(Service Oriented Architecture)が注目を浴びている。マイクロソフトの優れたところは、抽象的な概念を提唱するだけでなく、それを実体験できる製品やプラットフォームを提供してくれることだ。BTS 2004は、マイクロソフトのSOA戦略を担う中核製品になるはずだ。従ってマイクロソフトが提唱するSOAの中身を知りたければ、BTS 2004に実際に触れてみればよい。

 バラ色かどうかは分からないが、情報システムが進化すべき方向性を知るためのヒントが得られるかもしれない。End of Article

 

 INDEX
  [技術解説]
  BizTalk Server 2004の機能と構造(前編)
    1.BTS 2004の基本機能と活用シナリオ
    2.BTS 2004エンジンのしくみ
  BizTalk Server 2004の機能と構造(後編)
    3.エンタープライズ・シングル・サインオン機能
  4.BTS 2004のスケーラビリティ
 
 技術解説


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