オピニオン:ビジネス連携の未来
第1回 新しい企業の在り方がBtoBを求める

深瀬 正人
BizTalk Server 2000プロダクトマネージャ
マイクロソフト
2001/10/10

BtoBは将来に対する踏み絵なのか?

 ある日、マネージャ会議に出てみると、企画書に1つの言葉がありました。それは「BtoB (Business to Business)」という言葉です。「BtoBを利用して、より競争力を向上させる必要がある」と書いてあります。さて、皆さんはこれを目にして、何を考え、何を思うでしょうか? 確かに、世間ではBtoBやXMLの文字を毎日どこかで見かけるようになりました。しかもこうした技術は「導入しなければ乗り遅れる」と、まるで将来に対する踏み絵のようにいわれています。しかしBtoBを導入することで、企業はどのように変わっていくのでしょうか? 今後のビジネスの役に立つのでしょうか? このコラムでは、こうしたことについて考えていきたいと思います。

コア・コンピタンスが求めるBtoB

 1990年代後半になぜ、この「BtoB」という言葉が出てきたのでしょうか? BtoBのもともとのコンセプトは、企業間のFAXなどによる紙でのやりとりを少なくして、コンピュータ同士がデータを直接やりとりできれば、社内システムへのデータの反映も自動的にできるし、データ入力のための人件費が必要なくなり効率が良くなる、と米国で考えられたのが出発点だといわれています。当時企業間に存在していたEDI(電子データ交換)は、受発注のための情報のやりとりが中心でしたし、非定型なデータのやりとりは不得手でした。そのため受発注以外のデータも企業間で連携したい、というニーズがあったようです。

 しかし、現在BtoBが注目されている本当の理由はこうした単純な効率化だけではないと私は考えています。それは米国において、コア・コンピタンスだけを持ち、非常に身軽で収益性の高いビジネスモデルが1990年代を通じて徐々に確立されてきたことから起きたのだと考えています。

 つまり、自らの企業内で多くの事業を総合的に賄い、極端にいえば商品の材料のほとんどが自給可能で、ほかの企業とやりとりすることが少ない──多くの企業がそのような時代は、BtoBなど導入する必要はなかったのです。取引先企業(顧客)からの受注情報がEDIなどで送られてくればそれで済んでいたのです。

 しかし、上記でも書いたようにコア・コンピタンスだけを持つ企業が増えてくるに従い、当然、ほかの取引先企業とのコラボレーションによってビジネスを進める必要が出てきます。企業間取引がより活発になり、単なる受発注情報のやりとりだけでは、事が運べないようになってきます。

プロセスの構築こそ今後の課題

 例えば、CPUの設計だけを行って製造は外部の企業に任せる企業や、電化製品の企画、設計だけを行い、製造をEMSに代表されるような専門業者に任せる企業などが登場してきています。こうした企業他社との連携が不可欠な業態が増えてくるにつれ、一連の業務プロセスの中には、それぞれコア・コンピタンスを持つ企業が並ぶようになってきています。今後もその流れはより加速し、多くの企業でさまざまな企業との連携が重要になってくるでしょう。つまり、いままでのビジネスの在り方と根本的に異なる「プロセス」の構築が、これからのビジネス課題となってくるのです。

 そのような中で、企業間連携は単なる取引企業との受発注データの交換だけで済むのでしょうか? そうではありません。例えば、ある企業のコア・コンピタンスが商品を企画し、販売するという場合、その周りには、部品の調達先企業、商品を製造する企業、流通を請け負う企業、決済を行う金融機関などたくさんの企業が存在しなければなりません。こうした企業を活用して、他社に先駆けていかに素早く商品を市場に投入するか、在庫を極力増やすことなく需要に見合う数量を投入できるか、などを実現する必要があります。

 これらは、企画→設計→部品調達→製造→在庫→流通→販売、というようなプロセスを複数の企業にわたって経るわけですが、このプロセス全体をいかに効率化するか、というのがBtoBの最終的な目標になってくると思います。それにより、企業の競争力も上がり、製品、俊敏性、価格、さまざまな点で他企業に対する優位性を確保することが可能なのです。

 しかも、設計の段階であっても、部品を製造する企業や商品製造を行う企業と図面や仕様について頻繁にやりとりする必要があります。ここでもBtoBは活かされ、企業間で情報を共有する必要が出てきます。

 もちろん、業務で連携する場合には、それぞれの企業の業務システムにB toB経由でデータを投入しないといけないわけですから、BtoBと企業内のシステムとの連携も必要になってきます。現在では、ERPや業務パッケージを導入して、企業内部の業務処理効率は格段と改善されてきているので、あとは企業間の連携をどのように活用していくかで企業の今後が決まっていくのだと考えられます。

新しい企業の在り方に対応する

 いま、そしてこれからは、20世紀とは異なることが起きていくはずです。21世紀はいままでのやり方や考え方が根本的に変わっていく世紀です。そのように考えられている方も決して少なくないと思います。

  新しい方法、新しい企業と企業の在り方、すべて始まったばかりの21世紀において、多くのものを再構築する必要があります。その中でBtoBは最も注目され、革新的な場面で利用され得るものと考えています。そして、それを実現する技術として、インターネットやXMLは大いに活躍すると思います。

 次回は、今後BtoBをどのように導入すればよいのか、どのような問題点があるのかなどを考えてみたいと思います。

筆者紹介
深瀬 正人

東京都出身。中央大学法学部卒業。1994年、NTTデータ (当時NTTデータ通信)に入社し、金融システム事業本部で金融ネットワーク関連の仕事を行う。その後、1997年にマイクロソフトに入社。プロダクトマネージャとして、電子商取引システム製品の製品担当を担当。現在は、BizTalk Server、およびHost Integration Serverなどを担当。。

次回は11月上旬の予定です。



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