ビジネスソフト ヒント×テクニック
経営分析


必要な経費と無駄な経費を選別するには?

浦和税理士法人
松波 竜太

2007/1/23

事業活動を続けるに当たって、必然的に経費が発生する。しかし、無駄な経費もあるものだ。数ある経費の中から売上に貢献しているものを知る分析方法はないだろうか?

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 分かり切ったことですが、利益を生むポイントは「売上を最大に、経費を最小に」です。しかし、まったく経費を使わずに売上を上げるというわけにはいきません。企業活動には必ず経費が発生します。そこで利益に貢献する活動をより多く行い、利益に貢献しない活動をやめるというアプローチが現実的といえるでしょう。

 今回は会計ソフトの時系列データを使い、売上高と経費科目で回帰分析を行うことにより、相関関係を検討材料として利用する方法を解説します。それではExcelの「分析ツール」を使った分析法を見ていきましょう。

分析手順

[ステップ1] 売上高/経費科目データを用意する

(1)弥生会計

  1. [集計表]−[残高推移表]−[年間推移]を選択
  2. メニューバーの[Excelへの書き出し]ボタンを押す
  3. 「新規Excelファイルに書き出す」の損益計算書(および製造原価報告書)をチェックして[OK]ボタンを押す

(2)勘定奉行

  1. [分析処理]−[推移表]−[科目別推移表]を開く
  2. 条件設定画面から[印刷・転送]ボタンを押す
  3. 月範囲を指定(当期)して、[転送]ボタンを押す
  4. 転送条件は「他ソフト編集」「タブ区切り」を指定して[実行]を押す(保存場所は任意、ファイル名は例えばsuii.txt)

(3)PCA会計

  1. [分析処理]−[月次推移表]を選択
  2. [集計期間]を選択
  3. [印刷]ボタンを押す
  4. 「汎用データ」選び、損益計算書をチェックして、保存場所を任意に指定して、ファイル名を指定(保存場所、ファイル名は勘定奉行と同じ)し、[OK]ボタンを押す

[ステップ2] 売上高と経常利益のみを抽出する

 弥生会計06から取り出したデータを基に説明していきます。[ステップ1]の結果、下のようなExcelシートが作成されます。

画面1 弥生会計06のデータを取り込んだExcelシートクリック >> 画像拡大

 計算に必要なのは、売上高とすべての経費ですので、合計行や営業外収益その他の行列を削除します。また、12月以降はデータが入っていませんので、これらの列も削除します。

画面2 必要なデータにまとめるクリック >> 画像拡大

 結果、上のような表ができます。

[ステップ3] 行列を入れ替える

 Excelの分析ツールを使う場合、このような行列の形式では処理ができません。そこで、新しいシートを挿入して行列を入れ替えます。

(1)A1:I37を選択、「コピー」して、新しく追加したシートのA1セル上で右クリックしてショートカットメニューから「形式を選択して貼り付け」を選択します。

画面3 ショートカットメニューから「形式を選択して貼り付け」を選択クリック >> 画像拡大

(2)「形式を選択して貼り付け」ダイアログボックスが開くので、「行列を入れ替える」チェックボックスをONにして、[OK]ボタンを押します。

画面4 「形式を選択して貼り付け」ダイアログボックスの設定

(3)結果、下のような横長のシートが出来上がります。

画面5 行列入れ替え後のデータクリック >> 画像拡大

[ステップ4] データを分析に適した形に加工する

 この分析は売上高と各経費について重回帰分析を利用することにより、

  売上高 経費1×a+経費2×b+…+経費y×y+経費z×z+定数項C
  ↑目的変数 ↑説明変数

という式に当てはめたうえで、売上高と各経費の関係の大きさを測るというものです。

 重回帰分析を行う際には、偏差がない説明変数、つまり期間中ずっと同じ値を取っている経費を計算前に除去しておく必要があります(詳しい説明は省きます)。ここでは、役員報酬・リース料・保険料・[製]給料手当・[製]旅費交通費・[製]地代家賃・[製]賃借料が該当します。

 また、説明変数間で相関係数が1となる、つまり、同時期に同率の値となっている経費がある場合、値が求められませんので、これも除去しておきます。ここでは賞与と[製]賞与が7月にのみ計上されていますので、相関係数が1となってしまいます。そこで、賞与に[製]賞与の値を足して、変数からは除くことにします。

[ステップ5] 分析ツールを使って計算する

 [ツール]−[分析ツール]から[回帰分析]を選択します(※)。表示された「回帰分析」ダイアログボックスで、「入力Y範囲」に売上(セルB2:B9)、「入力X範囲」に経費(セルC2:AC8)を範囲指定したいところなのですが、Excelの回帰分析ツールは説明変数を15項目までしか設定できませんので、取りあえずC2:Q9を指定します(画面6)。

画面6 回帰分析ダイアログボックスクリック >> 画像拡大
[ツール]メニューに分析ツールがない場合は、[ツール]−[アドイン]から[分析ツール]をチェックして、CD‐ROMなどから追加セットアップを行ってください

 「入力Y範囲」は目的変数、「入力X範囲」は説明変数です。「ラベル」にチェックを入れると指定範囲の先頭行をラベルとして認識します。また、このほかの設定は分析結果の精度を検証するためのチェックです。

 これらを確認してから[OK]ボタンをクリックしますと、分析結果が新しいシートに表示されます。

画面7 ステップ4の結果、出力されたシートクリック >> 画像拡大

[ステップ6] 適切な説明変数を選択するため総当たり法を行う

 回帰統計の補正R2(決定係数、回帰分析の精度を示す)を確認します(ここでは1)。また、分散分析表内のP-値(危険度を表す数値で、大きいほど説明変数として不適切)を見て数値の高いものを見つけます(ここでは計算エラーを起こしており、#NUM!が示されています)。

 重回帰分析の場合、説明変数が不適切だと解が求められません。反対に、説明変数が適切だと補正R2(精度)が高くなります。より良い重回帰式は「説明変数の個数が少なくて、かつ精度の高い」ということになります。

 ただし、Excelにはどの説明変数を採用すればよいかを自動的に判別する機能がないため、P-値を頼りに適切な説明変数を割り出し、補正R2が最も高くなる説明変数を割り出すことになります。

 最も精度が高くなる説明変数の組み合わせを求める方法には、変数増加法・変数増減法などがありますが、最も明快なのは「総当たり法」という方法です。総当たり法とは、その名のとおり説明変数のあらゆる組み合わせの重回帰式を求める方法です。

 今回は、計算結果のみご確認ください。

画面8 ステップ6の結果、出力されたシートクリック >> 画像拡大

 補正R2が0.999847と高くなっていることを確認します。この組み合わせの結果が最も補正R2が高くなります。

 今回の計算では説明変数として、荷造運賃・修繕費・水道光熱費・支払手数料・[製]外注加工費・[製]消耗工具費を選択することが適当だといえます。

[ステップ7] 説明変数の目的変数への影響度から対策となる仮説を立てる

 荷造運賃・修繕費・水道光熱費・支払手数料・[製]外注加工費・[製]消耗工具費の係数をグラフ化して、目的変数への影響度を見てみます。

画面9 係数をグラフ化するクリック >> 画像拡大

 このグラフから、売上高へのインパクトは支払手数料が一番大きく、支払手数料が1円支出されると売上高が約1750円小さくなることが分かります。また、そのほかの経費についても同様ですが、[製]外注加工費だけはわずかですが、増加すると売上高も大きくなります。

 この分析はあくまで相関関係を表すものですので、売上が多いときに[製]外注加工費の支出が多いのか、[製]外注加工費が売上高に貢献しているのかは分かりません。

 ただ、この回帰分析の結果を検討材料として、現場の状況・財務データとの検証を行うことは、経費の切り詰めなどを漠然と議論するよりは極めて有用と考えられます。

筆者プロフィール
松波 竜太(まつなみ りょうた)
税理士(関東信越税理士会所属)
神奈川大学経済学部卒。大手OA機器商社・会計事務所勤務を経て、現在 浦和税理士法人 代表社員(埼玉県さいたま市)。本業の決算、税務申告・相談を行う傍ら、会計データの統計解析法を研究する。帰納的アプローチにより企業の経営課題を分析し、成果をクライアントである中小企業にフィードバックしている。「多くの中小企業がデータもツールもそろっているのに、それを分析して経営に生かす方法を知らないのは残念。中小企業はもっと生産効率を高めていける」と考えている。「お役立ち会計事務所全国100選 2004年度版(三和書籍、実務経営サービス編)」に選出される。
ブログ:http://www.maznami.biz/

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