ビジネスソフト ヒント×テクニック
経営分析


「売上」に対する先行指標を見つけ出すには?

浦和税理士法人
松波 竜太

2007/5/7

先のことが分からない──それがビジネスだ。しかし、“先行指標”を見つけることができれば、ビジネス展開をするうえで有利になる。先行指標の見つけ方を伝授しよう。

 一般に、売上と販売費/一般管理費の間には、タイムラグのある関係が見られます。例えば「広告宣伝費を増やした次の月には売上が上がる」「接待交際費を使った次の次の月には売上が上がる」といった関係です。

 2つの変量を持つ時系列データで、系列Aよりも系列Bが少し遅れて変化するような関係がある場合、系列Aは系列Bの先行指標であるといいます。

図1 系列Aが先行指標

 このような先行指標を見つけることができれば、「来月の売上を伸ばすために、広告宣伝費を○○万円使おう」という意思決定を行うことができます。

 通常、相関関係を調べる場合、図2のように系列Aと系列Bの同じ期を一対と考えて相関係数を求めます。これによって、系列Aと系列Bには相関関係が見られる、見られないという結果が得られるわけです。

図2 相関を見る場合
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 ところが、図1のような時差相関データは(a1, b1)(a2, b2)(a3, b3)の間に相関があったとしても、通常の相関で取り扱ってしまうと(a1, b0)(a2, b1)(a3, b2)の関係を見てしまうため、相関関係が認められないはずです。つまり、一見相関関係がないと思われるデータでも、何期かずらすと相関関係が認められる場合があるということです。

 そこで今回は、系列Aと系列Bの間に何期かズレのある対応関係があるのか、否かを調べる方法を紹介します。方法としては、ある月と何カ月かずつずらした月との相関係数を調べていき、最大になる組み合わせを見つけるというものです。

 計算は簡単ですが、たくさん計算する必要があるので大変なことは大変だと思います。データを1期ずつずらして繰り返し、相関係数を求めていきます。0期から前後にn−3期分の相関係数を求めなければなりませんので結構、手間は掛かります。

サンプル

 実際にラグ1(ずれが1)の場合を見てみましょう。ラグ1のサンプルとして、系列Aは1から12までの数値を3回繰り返した値、系列Bは系列Aを1期ずらした値になっているデータを用意します。

図3 サンプルとして“1期ずれた”ものを用意した

分析手順

[ステップ1] 平均との差を求める

 まず系列Aと系列Bのそれぞれの隣の列に各値と系列の平均との差(偏差)を求めます。

図4 系列A・Bともに偏差を求める。$B$38はセルB38の絶対指定

[ステップ2] 1期ずらした積和と平方和から、相関係数を求める

 次に「系列Aの101期から311期(青の部分)」と「系列Bの102期から312期(緑の部分)」についてそれぞれ積和を求め、これを「系列A−平均」と「系列B−平均」の平方和で割れば、ラグ1の場合の相関係数が求められます。

図5 1期ずれた積和(SUMPRODUCT関数を使用)を求め、そこから相関係数を算出する

[ステップ3] 2期ずらした積和と平方和から、相関係数を求める

 ラグ2の場合は、系列AとBの範囲をそれぞれ1つずつずらして、「系列Aの101期から310期(青の部分)」と「系列Bの103期から312期(緑の部分)」について、それぞれ積和を求め、これを「系列A−平均」と「系列B−平均」の平方和で割ります。

図6 ステップ2からさらに1ずつずらして(ラグ2)、積和と相関係数を求める

[ステップ4] ほかのラグの相関係数を求め、最大値を見つける

 同様にして系列AとBの範囲をそれぞれ1つずつずらして求めた、ラグ33から−33(マイナス33)の相関係数は以下のようになります。

ラグ 相関係数
33 -0.105477855
32 -0.1002331
31 -0.078671329
30 -0.043123543
29 0.004079254
28 0.060606061
27 0.124125874
26 0.192307692
25 0.262820513
24 0.179487179
23 -0.004079254
22 -0.136363636
21 -0.21969697
20 -0.256410256
19 -0.248834499
18 -0.199300699
17 -0.11013986
16 0.016317016
15 0.177738928
14 0.371794872
13 0.596153846
12 0.358974359
11 0.0495338
ラグ 相関係数
10 -0.180652681
9 -0.333916084
8 -0.412587413
7 -0.418997669
6 -0.355477855
5 -0.224358974
4 -0.027972028
3 0.231351981
2 0.551282051
1 0.929487179
0 0.538461538
-1 0.218531469
-2 -0.040792541
-3 -0.237179487
-4 -0.368298368
-5 -0.431818182
-6 -0.425407925
-7 -0.346736597
-8 -0.193473193
-9 0.036713287
-10 0.346153846
-11 0.737179487
ラグ 相関係数
-12 0.358974359
-13 0.164918415
-14 0.003496503
-15 -0.122960373
-16 -0.212121212
-17 -0.261655012
-18 -0.269230769
-19 -0.232517483
-20 -0.149184149
-21 -0.016899767
-22 0.166666667
-23 0.403846154
-24 0.179487179
-25 0.111305361
-26 0.047785548
-27 -0.008741259
-28 -0.055944056
-29 -0.091491841
-30 -0.113053613
-31 -0.118298368
-32 -0.104895105
-33 -0.070512821
表1 ラグ33〜-33の相関係数

 これをグラフにすると下のようになります。

グラフ1 得られた相関係数をExcelのグラフ機能(集合縦棒)でグラフ化

 今回はサンプルが1〜12の値を3期繰り返しただけの単純なデータでしたので、グラフも規則的な形をしています。結果もサンプルがラグ1なので、当然ながらラグ1における相関係数が一番大きくなっています。ここから、系列Aは系列Bに対して1期先行する指標だということを読み取ることができます。

 このように各ラグの相関係数の大小を相対的に比較して先行か遅行かということを推定していくわけですが、相関係数の値が極端に小さい場合には、先行/遅行のいずれも考えにくいということがあり得るので注意が必要です。

筆者プロフィール
松波 竜太(まつなみ りょうた)
税理士(関東信越税理士会所属)
神奈川大学経済学部卒。大手OA機器商社・会計事務所勤務を経て、現在 浦和税理士法人 代表社員(埼玉県さいたま市)。本業の決算、税務申告・相談を行う傍ら、会計データの統計解析法を研究する。帰納的アプローチにより企業の経営課題を分析し、成果をクライアントである中小企業にフィードバックしている。「多くの中小企業がデータもツールもそろっているのに、それを分析して経営に生かす方法を知らないのは残念。中小企業はもっと生産効率を高めていける」と考えている。「お役立ち会計事務所全国100選 2004年度版(三和書籍、実務経営サービス編)」に選出される。
ブログ:http://www.maznami.biz/

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