“自社の最悪のシナリオに対応せよ”、早くも4Gの展開を予想

2002/1/24

 昨年秋、NTTドコモが世界に先駆けて3Gの移動通信システム「FOMA」をスタートさせたばかりだが、すでに国際電気通信連合(ITU)では4Gの規格化が進められている。今回、アクセンチュアと国際大学グローバル・コミュニケーション・センターは共同で、4Gの市場についての研究・予測を行い、「2010年の移動通信業界を見通す4つのシナリオ」として発表した。

 4つのシナリオでは、予想市場規模総額が最高のものと最低のものの間に約8兆円もの差がある。両者は、「自分たちの理想のシナリオを描きつつ、最悪のシナリオに展開するサインを読み取る能力、対応する能力をつけてほしい」として、既存キャリアからISPなどの新規参入組、さらには政府にも注意を呼びかけている。

 今回の共同研究の目的は、3Gおよび4Gの現状把握と将来展望。アクセンチュア 戦略グループ 統括パートナー兼通信・ハイテク産業本部 通信業統括パートナー 程近智氏は、「3G/3G以外の有料無線通信サービスがどのように普及しているかは、4Gのサービス提供に大きな影響を与える」とし、3G/3G以外の無線通信サービスの普及という観点から4つのシナリオを描き出したと説明する。

 この場合の“3G以外の無線通信サービス”とは、無線LANなどの3G以外の無線技術を用いた有料通信サービスで、現存技術に特定しない(以下、「3G以外のサービス」と略す)。なお、同調査では、それぞれのシナリオで想定されるトラフィックの市場規模予測は試算数字が発表されているが、シナリオの確実性については触れていない。研究期間は2001年10月から2002年1月までの4カ月間で、試算対象時期は2001年。対象市場は、3Gおよび3G以外の有料通信サービスの基本料金とトラフィック収入(データ通信+音声通信)を足したもの。

はてしない物語
(既存キャリア主導)

予想市場規模:合計8兆9600億円
(3G:8兆6800億円
3G以外のサービス:2800億円)
覇権争い
(主導権を巡るせめぎあい)

予想市場規模:合計9兆7100億円
(3G:7兆3000億円
3G以外のサービス:9兆7100億円)
神話の終焉
(主導的プレーヤ存在せず)

予想市場規模:合計2兆1700億円
(3G:1兆9400億円
3G以外のサービス:2300億円)
新時代の夜明け
(ISP/新規参入プレーヤ主導)

予想市場規模:合計4兆2700億円
(3G:1兆8600億円
3G以外のサービス:2兆4100億円)
4つのシナリオ
(タテ軸は3Gの、ヨコ軸は3G以外のサービスの普及の度合い)

 4つのシナリオは、2010年まで、3Gの普及および3G以外のサービスの普及状況がそれぞれニッチ(特定セグメントに普及)かマス(市場全体に普及)かで区別したもの。3Gも3G以外のサービスもマスに普及した場合の「覇権争い」、両方ともニッチに終わった場合の「神話の終焉」、3Gがマス・3G以外のサービスがニッチの「はてしない物語」、3Gがニッチ・3G以外のサービスがマスの「新時代の夜明け」と名付けられている(上図参照)。

 前提として、2Gのユーザーがほぼそのまま3Gに移行するなどとしているが、固定網としては、光ファイバが家庭にかなり普及し、定額制のブロードバンドサービス加入も浸透しつつある状態を想定している。

 例えば、「はてしない物語」の場合、業界は既存のキャリア主導で進む。4Gのサービスは、既存キャリアがワンストップで提供することが想定される。収入源としては、トラフィック収入のみに依存するモデルからMC(モバイル・コマース)での代替収入などへ拡大することが想定される。現状から一番想像しやすいシナリオだろう。

 予測の市場規模が最大の「覇権争い」を見ると、ユーザーは複数の事業者と契約し、3Gと3G以外のサービスのそれぞれを使い分け、ニーズを満たしている状態だ。この場合は、既存キャリア、新規参入プレーヤが入り乱れて主導権争いを展開することになる。サービス提供に関しては、既存キャリアがワンストップサービス提供により顧客を囲い込もうとするのに対し、新規参入組はエージェント型として、ユーザーには意識させない形で複数のネットワークを状況に応じて提供することが予想される。

 いずれのシナリオにも実現の可能性はあるわけだが、実現性を大きく左右する要因となるのは、3G以外のサービスがどのように発展していくか。具体的には、「ユーザーのニーズを満たすため、現状のサービスを技術革新などにより解消・克服することができるか、だろう。あるいは、トレード・オフをユーザーが受け入れるような魅力あるサービスを提供できるか、にもかかっている」とアクセンチュア 通信・ハイテク産業本部 戦略グループ マネジャー 大原正道氏。現時点で、通信サービス、サービスエリア、ブランドと多くの点で既存キャリアに劣る3G以外のサービス事業者が、どのようにユーザーを引き付けるのかにかかっているといっても過言ではないようだ。

 「楽観説ばかりが語られているモバイル業界だが、マネジメント次第では危機に陥る可能性があるということを、まずは認識してもらいたい」と国際大学 グローバル・コミュニケーション・センター 中島洋教授。経済書のタイトルともなった“不確実性の時代”といわれる現代では、技術革新へのキャッチアップだけでも大変だが、その先を見越すことも求められているようだ。

(編集局 末岡洋子)

[関連リンク]
アクセンチュア
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター

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