[PalmSource Japan Forum 2002開催]
自由度の高さで優位性を強調するパーム

2002/3/29

 Palm OSプラットフォーム開発者の会議「PalmSource Japan Forum 2002」が、3月28日から29日までの2日間にわたって東京都内で開催される。期間中に行われるセッションに先駆け28日、昨年米パームより分社化したばかりの米パームソースの代表取締役兼CEOのデビット・ネーゲル(David C. Nagel)氏による基調講演が行われた。

20万人を超えたPalmデベロッパ人口

左からデビット・ネーゲル氏、スティーブ・サコマン氏

 ネーゲル氏は講演の冒頭で、PalmPilotの発売から6年間で2100万台以上の販売実績があり、登録された開発者も20万人を超えていることを明らかにした。さらに、この1年間でPalm対応のアプリケーションが1万3000〜1万4000にも達し、さらにe-Bookという新しいコンテンツの数も5000以上と爆発的に増加しているとした。エンタープライズソリューションについては、「数字は把握していないが、全開発者のうち30〜40%がエンタープライズソリューションの開発を行っているようだ」と述べた。

 「これまで、Palmはコンシューマ向けと思われてきているが、そうではない。IDCやJupiterの調査によれば、2位を大きく引き離して、エンタープライズソリューションにおけるハンドヘルドとしてPalmが選ばれている」と、ネーゲル氏は語る。同氏はその理由の1つとして、Palm OSのカスタマイズの容易さを挙げ、「1つのデザインで、すべての市場のニーズにこたえられるとは考えていない」と強調した。

 その実例として、東京大学医学部附属病院において採用された米Symbol Technologiesの業務用端末を挙げた。この端末は、無線LAN、バーコードスキャナを内蔵し、さらに1.2mからの落下に耐え、IP54防塵・防滴規格に準拠し、見た目も通常のPalmデバイスとは一線を画している。

 一般のアプリケーションについては、「PalmPilotを作った当時も、そしていまも、PIMはキラーアプリケーションである。しかし現在、Information、Communication、そしてEntertainmentの3つの分野でキラーアプリケーションが生まれつつある。特に、無線LAN、Bluetoothといった新しいワイヤレス技術の嵐により、ショートメッセージサービス(SMS)、インスタントメッセージサービス(IMS)などがキラーアプリになる可能性を秘めている」とした。

ARMに移行のPalm OS 5は6月にリリース

 ネーゲル氏に引き続き、同社のCTOのスティーブ・サコマン(Steve Sakoman)氏が、英語版、日本語版共に今年6月にリリース予定の「Palm OS 5」について語った。

 サコマン氏は「Palmの発展は自分たちだけではできないと認識している。時には技術を買収することでロードマップを加速させている。パームソースはあくまでパズルの1コマであり、パートナー企業と一体となっていかなければならない」と述べた。

 Palm OS 5では、これまでの68000系のCPUからARMアーキテクチャのCPUへの移行を行う。これにより、これまでの2〜30倍のパフォーマンス向上が見込める。また、このパフォーマンスの向上を利用して、エミュレーションによりこれまでのアプリケーションとの互換性を保っていくという。また、Palm OS 5では、ARMアーキテクチャへの移行だけでなく、セキュリティ、マルチメディア、ワイヤレス通信にも積極的に取り組んでいくとした。

 講演では、テキサス・インスツルメンツ、インテル、モトローラ各社のARMアーキテクチャのCPUによるデモンストレーションも行われ、そのパフォーマンスの高さを見せつけた。

 基調講演後の記者会見では、分社化についてコメントした。分社化は米国だけではなく、今後数年間で日本も含めた世界規模で行っていくという。また「ARMアーキテクチャの高性能なCPUの採用で、Palm OS搭載デバイスの価格が高くなるのではないか」との質問には、「もともとフットプリントが小さく、Pocket PCなどと比べて必要とするDRAMやFlash ROMの容量が少ないため、現状と変わらないだろう」(サコマン氏)とのこと。

 「日本では、大手PCメーカーのPDAはほとんどPocket PCを採用している。今後日本ではどのように事業展開していくのか」との問いには、「Pocket PCでは、OS側の制限が非常に厳しいため、どの製品もみんな似たようなものになっている。Palm OSは自由度が高いため、差別化を図ることが可能だ」(ネーゲル氏)と、競合他社への優位性を強調した。

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