ピープルソフトの新製品は“お金持ち管理CRM”

2004/10/1

 日本ピープルソフトは9月30日、CRMパッケージ「PeopleSoft Enterprise CRM 8.9 日本語版」を11月2日に出荷すると発表した。新たに金融向けソリューション「PeopleSoft Enterprise ウェルス マネジメント」に対応したのが特徴。日本ピープルソフトの代表取締役社長 クレイグ・ハリデー(Craig Halliday)氏は「今回のリリースですべての日本の顧客にサービスを提供できる資源を手に入れた」として「ピープルソフトの歴史の中で最大のリリースだ」と述べた。

 ピープルソフトがCRM 8.9の最大のターゲットしているのは、規制緩和で証券仲介など商品のラインアップが増えている銀行などの金融機関。特に富裕層向けの商品の充実を図っている銀行への拡販を考えている。銀行はこれまで商品別に手作りのシステムが乱立し、新たな商品ニーズに柔軟に対応することが難しくなっている。そのシステムに対してウェルス マネジメントを適用することで複数のシステムを連携させる横串を差し込んで、富裕層向けの新たな商品を展開しやすいようにする。

米ピープルソフト 日本・アジア パシフィック インダストリ&プロダクト マーケティング ディレクター レイ・クロス氏

 CRM 8.9で追加されたウェルネス マネジメントは、複数のモジュールの新機能を組み合わせて実現する。1つは「カスタマ ポートフォリオ マネジメント」と呼ばれるモジュールで、銀行が顧客とのこれまでの取引実績を評価し、顧客をセグメント分けする機能がある。作成された各セグメントに対して最適な商品を開発する。マーケティングや営業などで顧客セグメントを共有することで「利益最大化のためにサービスを最適化できる」(米ピープルソフト 日本・アジア パシフィック インダストリ&プロダクト マーケティング ディレクター レイ・クロス[Ray Kloss]氏)という。

 もう1つのモジュールは銀行のテレフォンバンキングやコールセンター、フィナンシャルプランナーによる相談などを支援する「Prescriptive Analytics」(プリスクリティブ・アナリティクス)。プリスクリティブ・アナリティクスは金融機関が持つデータウェアハウスや商品別システムのデータ、カスタマ ポートフォリオ マネジメントのセグメント情報などから顧客の現状を判別し、最適な商品を提案する。電話、電子メールなどによる顧客とのコンタクトから評価、リアルタイムな商品提案までのビジネスプロセスを実現するという。金融業界だけでなく、コールセンターを運営する流通などでも利用できる。

 日本ピープルソフトの執行役員 営業統括本部長 村上智氏は国内の金融機関の現状について「金融自由化によって競争が激化し、手作りのシステムでは対応できなくなっている。富裕層など優良顧客の取り込みが生き残る鍵になっている」と指摘。「パッケージ製品が求められている。CRM 8.9を導入することで専門の知識がないフィナンシャルプランナーでも顧客のポートフォリオを理解し、最適なプランを提案できる」と述べた。銀行のほかに保険やハイテク製造業、通信などにフォーカスするという。

 また、ハリデー氏は米オラクルによる買収提案についてコメントを求められたが、直接のコメントを避け、「ピープルソフトは顧客へのサービス提供と業界のテクノロジリーダーになることにフォーカスしている。われわれの製品の品質については高い自信を持っている」と述べるにとどまった。オラクルによる買収提案については、米司法省が反トラスト法(米独禁法)に違反するとして買収の差し止めを求めていた訴訟で、サンフランシスコ連邦地裁が9月9日(現地時間)、同省の訴えを棄却し、買収成功の可能性が高まったとの見方が広がっている。

(編集局 垣内郁栄)

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日本ピープルソフトの発表資料

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