相次ぐ買収で変貌するEMCのいま

2005/3/19

米EMC 上席副社長 兼 チーフ・マーケティング・オフィサー デビッド・マイラム氏

 米EMCの、ストレージベンダから総合ソフトウェアベンダへの脱皮戦略の核は買収である。同社が最近買収した企業は、米レガートシステムズ、米ドキュメンタム、米VMwareなど15社にものぼる。これらの企業買収は「Information LifeCycle Management(ILM)」のコンセプトに基づいて行われている。コンテンツ管理、バックアップ、データの仮想化といったILMを構成するさまざまな要素を補完する機能を網羅することで、同社は企業内で格納するデータ管理に関して総合的なソフトウェアシステムを提供しようとしている。そして、このことは、同社をハードウェアベンダからソフトウェアベンダへと脱皮させるということも意味するのである。

 同社の売上高に占めるソフトウェアとサービス事業の売上高は、2000年時点の26%から53%(2004年)にまで拡大している。米EMC 上席副社長 兼 チーフ・マーケティング・オフィサー デビッド・マイラム(David Milam)氏がライバルとして想定する企業で挙げる名前はマイクロソフトやオラクル、SAPなどのソフトウェア企業だけであるという徹底ぶりである。「世界のソフトウェアベンダのなかで5位以内の売上高をあげるようにならなければならない」とマイラム氏はいう。同社の調査によれば、EMCは、米シマンテック(ベリタス)、米コンピュータ・アソシエイツに次いで、7位である(2004年12月16日時点)。その上には独SAPが控えている。

 当面、EMCがライバル視する企業として筆頭にあがるのは、バックアップ市場で強みを発揮するシマンテック(ベリタス)ということになるだろう。マイラム氏はシマンテックについてこのようにコメントする。「シマンテックはあくまでセキュリティベンダである。シマンテックはベリタスを買収することで確かにデータ管理の製品ラインアップを確保したが「ILMについての言及は聞いたことがない」(マイラム氏)。北米市場を中心に、同社は“Safe Switch”プログラムというベリタス製品からの乗り換えキャンペーンを展開している(日本では行っていない)。マイラム氏は「少しずつだが、バックアップ市場で確実に(ベリタスの)シェアを獲得している」と気を吐く。

 度重なる買収行動によって、EMCのILM関連製品におけるラインアップに「ほとんど漏れはなくなった」(マイラム氏)が、データの完全な消去を行える機能など、買収を行う余地はまだある。買収のターゲットは必ずしも北米に限らない。DBを横断的に検索する製品を有するaskOnceはフランスの企業で、SAPとEMCのストレージ・ソフトウェアを統合するミドルウェアを持つdolphinはドイツの企業だ。同社の買収戦略は今後やや下火になるようだが、やむことはなさそうだ。マイラム氏は「EMCの動向に注目していてくれ(Stay Tune!)」とコメントしている。

(@IT 谷古宇浩司)

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EMCジャパン

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