日本版SOX法に「急いた議論とのんびり議論」、八田氏が懸念

2006/10/20

 青山学院大学大学院教授で、金融庁の企業会計審議会 内部統制部会 部会長を務める八田進二氏は10月19日、都内で開催中の「Biz Innovation 2006」で講演し、2008年4月1日からの事業年度が対象となる、いわゆる日本版SOX法について「個人の考え」としたうえで、「急(せ)いた議論とのんびりした議論の2つがあるが、私はこの2つともノーと考える」と語り、内部統制の構築が義務付けられる企業に対して、適切な対応を適切なタイミングで行うことの重要性を訴えた。

青山学院大学大学院教授の八田進二氏

 日本版SOX法は6月に成立した金融商品取引法の一部。2008年4月1日以降の事業年度から上場企業は、財務諸表の適正性を確保するための体制について評価した「内部統制報告書」を作成、提出し、監査法人の監査証明を受けなければならない。

 日本版SOX法については、金融庁の内部統制部会の作業部会が対応のガイドラインとなる「実施基準」を策定中。実施基準は内部統制の目的や要素について個々の論点を示す「枠組み」と、「評価対象」、監査の基準を示す「監査方法」の3項目で構成する。金融庁は金融商品取引法の成立直後にも実施基準を公表することを当初は計画していたが、いまだ公表されていない。八田氏は「年内、遅ければ来年初で作業を進めている」と講演で話した。

 実施基準の公表遅れの影響もあり、企業の対応方針は迷走気味。八田氏が懸念するのは、日本版SOX法を、2002年に制定された米国の企業改革法(米国SOX法)の日本上陸と受け取って、米国企業の対応方針を自社にも適用する企業が現れていることだ。これが八田氏の言う「急いた議論」だ。

 日米のSOX法はCOSOフレームワークを採用するなど根幹は同じ。しかし、日本版SOX法は企業のコスト負担を考慮に入れて、全社の内部統制の評価を最初に行って評価対象のプロセスを絞り込むリスクベースのトップダウンアプローチや、監査人が企業の内部統制を直接監査するダイレクト・レポーティングの非採用を決めている。米国SOX法は2002年の制定後も適用のスケジュールが頻繁に変更になったり、ルールが見直されるなど「問題が多い」(八田氏)。その米国SOX法を手本に日本版SOX法の対応を進めると、企業は道を誤る可能性があるというわけだ。

 一方、「のんびりした議論」は、同じく企業に対して内部統制の構築を求めた今年5月施行の新会社法の内容が「ふたを開ければたいしたことがなかった」(同氏)ことをきっかけに起きている。新会社法の内部統制が肩透かしだったことから、日本版SOX法についても先を急がずに実施基準の確定を待ってから、と一部の企業が考えているのだ。しかし、八田氏に言わせれば新会社法の内部統制は「トップの保身の内部統制」。対して日本版SOX法は「市場向け、外向けの内部統制だ。財務諸表と範ちゅうは狭いが、内部統制の整備をきっかけに企業の経営力を高めることを狙っている。(新会社法の対象となる大会社だけでなく)中小企業にも影響する」。

 新会社法と日本版SOX法では、内部統制の立ち位置、狙いが異なる。八田氏は「2007年度は(日本版SOX法の)試しの監査になる。いろいろな問題を露呈させて2008年度に突入してもらいたい。決して悠長に構えていることはできない」と語り、企業に早期の対応を呼びかけた。「どの会社でも何らかの内部統制はすでにある。それを担当者に伝えるための規程、規則があり、これも文書化だ。この内部統制を大前提に踏まえて必要とされる文書、記録の保存があってしかるべきだ」と八田氏は強調し、「経営者主導の内部統制」を訴えた。

(@IT 垣内郁栄)

[関連リンク]
金融庁 内部統制部会
日本版SOX法ポータル

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