合理的なだけじゃ、つまらない?

チームラボが「オモロさ」を追求する理由

2008/05/09

 Web系の企業には、ユニークな特徴を持つところが多い。企業風土、サービスの内容や、サービス名そのものがユニークなこともある。こうした独特さは、どのようにして生まれているのか。おもしろ系の代表として、オモロ検索エンジン「SAGOOL」、不動産情報検索サイト「いえーい」など、ユニークなサービスを提供するチームラボに話を聞いた。

“Bダッシュ”の気持ちよさ

 チームラボが開発するユニークなサービス・プロダクト群を貫くのは、企業理念とでもいうべき“ある思い”だ。

 「携帯電話のボタンは、誰かと話をしたいから押すわけで、その行為自体に価値はない。しかし、打つことそのものにまったく別の価値を与えてみるとどうなるだろう。“打っていること自体が気持ちいい”という主観が発生するのではないだろうか」(チームラボ 代表取締役社長 猪子寿之氏)。

lab01.jpg チームラボ 代表取締役社長 猪子寿之氏

 猪子氏は、この感覚こそ日本文化そのものだと話す。例えばコンピュータ技術を利用して、アメリカ人は仕事の業務効率を向上させるツールを次々に開発した。技術を「合理化」や「効率化」に生かしたのである。一方、日本ではどうか。キーワードの1つとして猪子氏は「ファミコン」を挙げた。日本人は、スーパーマリオブラザーズにおける「“Bダッシュ”(Bボタンを押すとマリオが速く走る)の気持ちよさ」にこだわりを見いだしたのである。

 「この日本的な感覚を最新技術と結びつけ、サービスや製品としてアウトプットできれば、『「オモロい」』のではないか」。猪子氏はこう考える。

検索が気持ちいい「サグールテレビ」

 行為そのものに価値を見いだすという思想を具現化すると、どのような“カタチ”になるのだろうか? 1つの解答として同社が導き出したのは、Webインターフェイスの革新である。

 「チームラボレコメンデーション」というプロダクトがある。顧客データや顧客購買履歴、顧客行動履歴などのデータを解析することで、見込み購買商品を自動的に抽出し、顧客にリコメンド(推薦)する。同社では、これら仕組みを「ユーザーのニーズを“くみとってオススメする”」と表現する。

 このプロダクトが組み込まれたサービスのユーザーは、自身の購買履歴やクリック履歴などの行動履歴を元に、システム側から(このユーザーに)適すると思われる商品を推薦してもらえる。使用回数が増えれば増えるほど、データが蓄積され、推薦の精度は向上するだろう。ユーザーの目的は「何かを買う」ということのはずだが、推薦の精度が向上し、自分の嗜好にマッチした商品が推薦されるようになればなるほど、「買い物をする」という行為そのものがおもしろくなってくる。

 あるいは、「次世代動画検索サービス『サグールテレビ』」というサービスがある。動画投稿サイトのデータを対象とした検索サービスだが、その特徴は、再生動画を見ながら、ほかの動画を検索できるという点だ。再生待ち動画を追加しておくことで、ほぼ自動的な動画閲覧が可能なほか、リコメンデーション機能により、ユーザーの嗜好に合いそうな動画が「ずるずる」と紹介される。ユーザーの動画閲覧という目的はいつしか弱まり、彼は動画の検索自体をおもしろく感じるだろう。

新しい価値を生み続けることが重要

 常識にとらわれず、常に新しくておもしろい技術を生みだしていきたい。これは創業当時からのチームラボの理念である。

 「サービスが生まれるプロセスにも仲間と共に考えだす『オモロさ』がある。それをアウトプットに生かしたい。いいアイデアが生まれたら、まさにその時にアイデアを具現化する必要があると思う」と猪子氏はいう。「行為そのものに価値を見いだす」。この思いが同社のユニークなサービス開発を支えている。

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(@IT 上口翔子)

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