[Analysis]

次世代IT業界に必要なのはルネサンス的な「普遍人」?

2005/09/13

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 60年前、コンピュータ・サイエンスという海のものとも山のものとも知れぬ学問を世界中に広め、市場創出の一助を担ったように、 IBMはいまサービス・サイエンスという新学問の世界展開を計画している。サービス・サイエンスとは、情報技術に関する専門知識の習得に加え、ビジネス戦略、経営科学、社会科学、法律学、認知科学など多岐にわたる領域を幅広くカバーすることが求められる新しい学問だ。同分野の研究においては、文系・理系という従来型のジャンル区分は意味をなさなくなる。同社は学術機関や企業などと手を組み、すでに新たな人材育成の仕組み作りに乗り出している。

 情報技術産業における経済活動の基盤が、製造物の販売から、付加価値の販売に変化し始めたのは1990年代初頭。パラダイム・シフトの波に乗り遅れ、業績の悪化に苦しんでいたIBMはルイス・ガースナーの改革によって生まれ変わった。約10年前、40万人いた従業員は現在では30万人に減っているが、「当時から残っているのは実は9万人に過ぎず、そのほか(の21万人)はまったく新しい人員」(日本IBM 執行役員 東京基礎研究所所長 久世和資氏)だという。現在の30万人(の従業員)という数字は、単に10万人の人員削減を行った結果だというわけではない。ここには、時代に必要とされる能力の入れ替えを行ったという意味が隠されている。とはいえ、日本法人においては、幸か不幸か、それほど人材の流動性が激しいわけではない。

 21世紀初頭の情報技術産業に求められる人材とは? ITアーキテクトのような(いい意味での)領域侵犯型の職種が求められるようになってきていることからもうかがえるように、どうやら、ルネサンス的な「普遍人」(uomo universale)が必要とされているようだ。

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