[Analysis]

勝つための業界再編

2005/10/18

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 日本のIT企業の中で明確に勝ちにいくために業界再編を仕掛けるケースが増えている。 小野寺正社長が「NTTグループに対抗する企業グループを形成する」といい切るKDDIのパワードコム合併はその典型だ。

 KDDIの狙いはパワードコムの法人顧客の取り込みと、パワードコムと親会社の東京電力が保有する光ファイバの有効利用。KDDI自体がもともと、対NTTグループを目的に第二電電(DDI)、KDD、日本移動通信(IDO)が合併して2000年に誕生したが、携帯電話事業以外では力不足だった。NTTグループの再々編もうわさされる中、法人やFTTH事業の強化は必須。NTTグループを追撃するという目的がはっきりした合併といえる。

 同じ時期に話題になった楽天による東京放送(TBS)の株式取得と統合提案は、短期的にはポータル最大手のヤフーに勝ちいくことを狙った再編と捉えることができるだろう。TBSが保有する優良なテレビコンテンツをネットで利用し、ユーザーを呼び込む考え。増大したユーザーに電子商取引やオークション、株取引、旅行など楽天グループのさまざまなサービスを利用させることが目的ともいえる。長期的には、楽天はテレビCMへの依存度の高さが指摘されるテレビ局に対して、ネット上での収益機会を提供し、世界的なメディアグループの形成を狙う。

 一方、負けないための再編もある。その典型はシステム・インテグレータ(SIer)などのITサービス業界。ITサービス業界は、ユーザー企業からの値下げ圧力や中国、インドのSIerへのアウトソーシング開発の増大で、厳しい競争を迫られている。このまま座して待てば業界全体が沈没するともいわれる。

 そのため規模が大きいITサービス企業による、中堅企業の買収が続いている。NTTデータはフランスのITサービス企業、Capgeminiの日本法人を買収した。住商情報システムは、住商エレクトロニクスと8月に合併。NECも2004年、アビームコンサルティングに出資し、中国市場でのサービス展開を強化した。急成長している業界では勝つための再編が、成熟しつつある業界では負けないための再編が続く。

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