連載:アニメーションで見るパケット君が住む町(6)
「ネットワークをつなげ、パケットを届ける」ってどういうこと?

綱野衛二
Roads to Node
2009/10/9

6-2  パケット君の配送票

 さてさて、もうちょっと具体的にパケット君とルート君のお仕事を聞いてみましょう。

パケット君「大きく分けると仕事は3つ。『荷物に配送票を貼る』『住所を決める』『経路を決める』の3つかな」

 ふむふむ。では、まずパケット君の貼る配送票を見てみましょう。

  • 送信元住所
  • 送り先住所
  • 荷物種別
  • 個数
  • 保管日数
  • 搬送物
  • 荷崩れチェック

 結構いろいろなことが書かれているのですね。

 まず、住所についてですが?

パケット君「住所については、後で詳しく話すから」

 そうですか。では、荷物種別について聞きましょうか。

パケット君「荷物を運ぶ優先度だね。早く運んでほしい、遅延を許さない荷物の場合などに優先度を高くしておくと、早くつくかもしれないんだ」

 「つくかもしれない」というところが、微妙にいい加減でパケット君らしいですね。

 次が個数です。これは荷物のサイズが運送用の箱よりも大きい場合に、複数個に小包を分割するのですが、そのための情報です。たとえば、3個に分割した場合、「1個/3個口」のように、3個のうちの1つ目、2つ目、3つ目ということを書いておく場所です。

図6-3 小包の分割

 次の保管日数とはなんですか?

パケット君「あ、それは『経路』の話の所で話すよ」

 では、また後で、ということで。

 さて、残りが搬送物、ですが。これは荷物の中身が何処の部門宛なのかを示すものです。TCP課長が扱う荷物なのか、UDP課長が扱う荷物なのか、それとも他の課長なのか、誰が次に受け取るのか、というのを示しているんですね。

 最後が荷崩れチェックで、荷物に荷崩れがないかどうかをチェックするものですね。

 つまり、パケット君の配送票からわかるパケット君の仕事は。

  • 送り元と、届け先の住所を決める
  • 荷物を運ぶ優先度を決める
  • 荷物を箱のサイズに合わせて分割する
  • 保管日数を確認する
  • 次に誰に渡すか決めている
  • 荷崩れをチェックしている

 というところでしょうか?

パケット君「そうだね。大体それぐらいかな、僕の仕事としては」



 第2回「インターネット世界の運送方法」で説明したように、データは、それぞれのプロトコルによる制御情報が付加されます。IPの場合、レイヤ4PDUに「IPヘッダ」を付加して、「IPデータグラム」にカプセル化します。

 IPは次のようなヘッダをつけています。

図6-4 IPヘッダ

 IPヘッダは20バイト+αとありますが、+αはオプションで最大40バイトになります。オプションは通常は使われませんので、IPヘッダは20バイトと覚えてもらっても問題ありません。IPペイロードは最大で65475バイトですが、これはあくまでも「IPパケットとしての最大値」です。実際は後に述べるMTUの制限があります。

 重要なポイントとして、「サービスタイプ」「フラグ・フラグメントオフセット」「TTL」「アドレス」が挙げられます。TTLとアドレスについては後ほど説明しますので、ここではサービスタイプとフラグ・フラグメントオフセットについて説明します。

 サービスタイプは、QoS(Quality of Service)と呼ばれる、通信サービスの品質を設定するための値です。品質とは、「エラーの有無」「遅延の度合」「回線の速度」などを表わす言葉です。

 サービスタイプに値を設定することにより、「処理の優先度」を決定できることになります。ルータは中継する際に、この処理の優先度にしたがって処理を行います。

 フラグとフラグメントオフセットは、パケットの分割(フラグメント化)の際に使用する値です。

 ネットワークでは使用する回線ごとに一度に転送できるサイズが決まっています。たとえば、イーサネットの場合、1500バイトになります。このサイズのことをMTU(Max Segment Size)と呼びます。

図6-5 イーサネットのMTU

 IPは送信の際にこのMTUのサイズにデータを分割して、パケットを生成して送信します。

 ですが、途中で送信時よりも小さなMTUを使用している回線があった場合、パケットをフラグメント化する必要があります。この時に使用する値がフラグとフラグメントオフセットです。

 ですが、このフラグメント化はパケットを分割する処理が必要ということで、ルータに負荷がかかり、遅延を発生させる要因となります。

 なので現在では事前にあて先までの回線でもっとも小さいMTUに合わせて最初からパケットを作成する方法が主流です。

 IPv6ではこの方法をとることが前提となっており、フラグメント化はできないようになっています。


6 パケット君の運送手順 - 主役登場、TCP/IPのメインIPがついに登場!!
  6-1 パケット君登場
  6-2 パケット君の配送票
  6-3 インターネット世界の住所
  6-4 あて先の市までの道を決める
6-5 おさらい 〜 実際のネットワークに当てはめると


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