ニュース解説

SiSがDirect RDRAMのサポートを表明、その真意

小林章彦
2001/11/16

 2001年11月12日、チップセット・ベンダの大手「Silicon Integrated Systems(SiS)」がRambusからRDRAMのライセンスを取得したことを発表した(SiSの「RDRAMのラインセンス取得に関するニュースリリース」)。SiSは、DDR333(166×2MHzのDDR SDRAM)をサポートしたPentium 4向けチップセット「SiS 645」の出荷を開始したばかり。一方で、IntelはDirect RDRAMをサポートしたチップセットの計画を縮小し、ハイエンドPC向けならびにワークステーション向けには、継続してDirect RDRAMをサポートしたチップセットの提供を行うものの、メインストリームについてはSDRAM/DDR SDRAMを推進する方向に動いている。こうした状況の中、なぜSiSがDirect RDRAMの採用を行うのか、またなぜIntelはたびたびDirect RDRAMに対する態度を変更するのかを考えてみたい。

SiSのDirect RDRAM採用の裏側

 SiSは、今回の発表でDirect RDRAM対応のチップセットを提供することを明らかにした。時期については明言されていないが、2002年後半から2003年になると噂されており、すぐに製品が提供されるわけではなさそうだ。

 SiSは、これまで「製品の発表は早いものの、実際にモノが出てくるまで時間がかかりすぎる」と言われ続けてきた。しかし、自社の半導体工場が順調に稼働し始めたのか、Pentium 4用チップセットのSiS 645では、発表から搭載マザーボードの出荷まで約3カ月と、同じ台湾のチップセット・ベンダ「VIA Technologies」と同等になってきた。ライバルでもあるVIA Technologiesは、Intelとの間でPentium 4のライセンスに関して裁判になっており、大手PCベンダがVIA TechnologiesのPentium 4用チップセットを採用しにくい状況にある。その一方で、SiSのSiS 645は順調に生産が立ち上がっているうえ、市場での評価も比較的良好である。これまで、SiSはどちらかというと、グラフィックス機能を統合したエントリPC向けや、ノートPC向け製品を得意としてきたが、SiS 645はまさにボリューム・ゾーンでもあるパフォーマンスPCへ参入するチャンスにもなっているのだ。

 こうした背景から、SiSがより幅広いユーザーを獲得するため、Direct RDRAMのサポートを考えたとしても不思議ではない。SiS 645の性能については、編集部で製品の評価は行っていないが、各種報道によれば、Intel 845(SDRAM対応チップセット)より速く、Intel 850(デュアルチャネルのDirect RDRAM対応チップセット)よりも若干遅いという結果が出ているようだ。後述するようにIntelのチップセット戦略が迷走している間に、Intel 850を超える魅力的なチップセットが提供できれば、Pentium IIIのころにVIA TechnologiesがIntelの失敗に乗じてトップシェアを獲得したように、SiSもビジネスを拡大できるチャンスでもあるわけだ。そのためには、最速のチップセットを提供する必要がある。その答えが、Direct RDRAM対応であったのではないだろうか。

なぜIntelは迷走するのか

 何度か取り上げているように、Intelのチップセット戦略は迷走状態にある。これにはいくつかの理由がある。そもそもIntelが1996年にRambusとの間で次世代メモリの開発で提携したとき、多くのメモリ・ベンダはあまり乗り気ではなかった。ライセンス自体は、ほとんどのメモリ・ベンダが取得したものの、実際に量産を行ったのはSamsung Electronics、東芝、日本電気の3社のみであった。そのうえ、Direct RDRAMを初めてサポートしたPentium III向けチップセット「Intel 820」の開発は当初の予定より大幅に遅れてしまい、出鼻を挫かれてしまった。その後、やっと製品化にこぎつけたIntel 820は、SDRAMをサポートするIntel 440BXとの性能差がほとんどないうえ、メモリの価格が高すぎるなど、評価は芳しくなく、採用PCベンダはほとんどなかった。

 起死回生、Pentium 4では、万全を期して、当初のプラットフォームはDirect RDRAM対応チップセットのIntel 850に限定し、さらにPentium 4自体のボックス版(量販店でパッケージに入った状態で販売される製品)では64MbytesのRIMMを2枚同梱する、といった気の使いようであった。このような施策によって、メモリ・ベンダがDirect RDRAMを生産し、確実に販売できる道を作ったわけだ。幸いなことに、2000年10月に始まったSDRAMの暴落によって、多くのメモリ・ベンダにとってDirect RDRAMは、確実に儲かる商品となっていた。そのためか、2001年に入り、Rambusとの特許で裁判を続けてきたInfineon TechnologiesがDirect RDRAMの量産を開始、6月末には台湾のWinbond Electronicsが2001年第4四半期からの量産開始を発表していた(「元麻布春男の視点:WinbondのRDRAM量産の持つ意味」参照)。

 また、世界最大のメモリ・ベンダとなったSamsung Electronicsは、Direct RDRAMを支持し、量産を続けた結果、Direct RDRAMの価格は1999年当時のSDRAMと同等なレベルにまで下がってきた。さらにSamsung Electronicsは、4バンク構成(4i)と呼ばれるDirect RDRAMを開発し、よりDirect RDRAMの低価格化を実現すると述べていた。Intelも、4iのDirect RDRAMのサポートを表明し、2002年前半には対応チップセットの提供を開始する予定となっていた。これによって、Direct RDRAMがやっと立ち上がるかに見えた。

 しかしDRAM価格の大幅な下落は、メモリ・ベンダを直撃し、いくつかの企業はDRAM市場からの撤退を検討するまでになってしまった(128Mbit品のSDRAMのスポット価格は1ドル前後だが、製造コストは3ドルから4ドルと言われている。つまり、1チップ売るごとに2ドルから3ドルの赤字となるわけだ)。特に東芝と日本電気という、Direct RDRAMを当初から支えてきたメモリ・ベンダが、事実上の撤退を決意したことから、Intelの迷走が再び始まることになる。

 ガートナー ジャパンが10月18日に発表した「2002年世界DRAM市場 前年比19.2%減のマイナス成長に」というレポートによれば、2000年のDRAMシェアは、Samsung Electronics(21.1%)、Micron Technology(18.9%)、Hyundai Electronics(現 Hynix Semiconductor:17.2%)、Infineon Technologies(8.5%)、日本電気(6.7%)、東芝(6.2%)となっている。シェア第2位のMicron Technologyは、DDR SDRAMを推進しており、現在のところDirect RDRAMを実際に量産する予定はないようだ(カタログには載せているが)。第3位のHynix Semiconductorは、経営再建中であり、Direct RDRAMを量産する余裕はない。第4位のInfineon Technologiesは、Direct RDRAMの量産を開始したものの、経営が悪化しており、半導体事業の主力をメモリからロジックへ移行する計画であるという。第5位の日本電気と第6位の東芝は、新聞などでも報道されているように、DRAM市場からの撤退を検討しており、今後のDirect RDRAMの生産計画は不透明だ。つまり、上位のメモリ・ベンダの中で、確実に今後もDirect RDRAMの量産が可能なベンダは、Samsung Electronicsのみなのだ。

 こうした状況下では、いくら性能面や将来性でDirect RDRAMが優れていても、メインストリームのPC向けにサポートを続けるのは難しい。例えば、何らかの事故によってSamsung ElectronicsからDirect RDRAMの供給が止まったとしたら、ほとんどのPCの出荷が止まってしまうことになるからだ。そこでIntelは、ハイエンドPC向けではDirect RDRAMのサポートを残すものの、メインストリームPCではDDR SDRAMでサポートを行うという方針に切り替えたようだ。Direct RDRAMの価格が下がり、安定した供給ベンダが再び現れたら(Micron TechnologyがDirect RDRAMの量産を開始するなど)、ハイエンドPC向けに用意していたDirect RDRAM対応チップセットを、メインストリームPCにまで広げればよい。一方、Direct RDRAMを供給するベンダが、最悪Samsung Electronics 1社のみになったとしても、ハイエンドPC向けであれば、供給量は限られており、影響は少ないということだろう。

 もちろん、今回SiSがDirect RDRAMのサポートを決めたのは、こうした状況を予想してのことと思われる。つまり、IntelがメインストリームPC向けにDirect RDRAM対応のチップセットを供給しないとなれば、そこに大きな市場が生まれる可能性があるからだ。SiSのこの賭けが成功するかどうかは、Intelの迷走と同様、メモリ・ベンダの動向にかかっているといえるだろう。記事の終わり

  関連記事(PC INSIDER内)
WinbondのRDRAM量産の持つ意味
IntelとRambusのクロスライセンス契約に秘められた理由
Pentium 4のDDR SDRAMサポートを先取りする
Rambusの次の一手「Yellowstone」の可能性

  関連リンク
RDRAMのラインセンス取得に関するニュースリリース
2002年世界DRAM市場 前年比19.2%減のマイナス成長に

「PC Insiderのニュース解説」

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