ハードディスクの故障を手早くチェックする方法

平野謙/デジタルアドバンテージ
2001/12/05

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 ハードディスクの動作を確認するプログラムとしては、Windows OSに標準装備のチェックディスクやスキャンディスクがまず思い浮かぶ。すでにWindows OSが稼働中のPCがあるなら、そこにテスト対象のハードディスクを接続してチェックを実行すればよいが、こうしたPCがない場合はWindows OSのインストールから行わなければならず面倒だ。

 そこで本稿では、ハードディスク・ベンダが提供しているハードディスクの動作テストを行うツールを利用する方法を紹介する。ここではIBMが提供している「Drive Fitness Test(以下DFT)」というツールを中心に紹介するが、MaxtorやSeagate Technologyなどほかのベンダからも、同様のテスト用ツールが提供されている。基本的に、テスト対象のハードディスクの製造元ベンダが提供しているツールを利用する*1

*1 IBMのDFTは、「IBM以外のベンダ製ハードディスクもテストできる」とマニュアルには記されており、実際テストできた。ただし、IBM製ハードディスクをテストする場合と比較すると、テスト項目のいくつかが制限される。
 
ベンダ名 ツールの名称 備考
IBM Drive Fitness Test ブート・フロッピーが自動作成される
Maxtor POWERMAX DOSのブート・フロッピーが別途必要。Ver.3以上はQuantum製ドライブもサポートする
Seagate Technology SeaTools Disc Diagnostic ブート・フロッピーが自動作成される
Western Digital Data Lifeguard Tools ブート・フロッピーが自動作成される*2
富士通 Fujitsu ATA Diagnostic Tool DOSのブート・フロッピーが別途必要
各ハードディスク・ベンダが提供している動作テスト用ツール
*2 2001年12月上旬に編集部でテストした限りでは、Windows 2000上でブート・フロッピーを作成しようとしたところ、フロッピーへの書き込み時のDMA転送でエラーが生じてしまい、作成できなかった。Windows 9xでは成功した。なおフロッピー作成時には、DOSプロンプトにてUSコマンドを実行して表示モードを英語モードに変更してから、作成プログラム(dlgmaker.exe)を実行する必要があった。

 DFTの使用方法はいたって簡単だ。まず、上表にあるIBMのWebページからセットアップ・プログラムをダウンロードする。これをWindows OS上で実行すると、DFTのプログラム本体を含んだDOSのブート・フロッピーディスクが作成される。このセットアップ・プログラム自体にDOSが収録されているので、Windows 2000などDOSが含まれていないWindows OSでも、DFTのブート・フロッピーは作成可能だ。また、ブート・フロッピーを作成するPCは、ハードディスクを接続したテスト用のPCでなくてもよく、稼動している別のPCでもフロッピーを作成できる。

 あとは、PCにテスト対象のハードディスクを接続してから、作成したブート・フロッピーで起動すればDFTが自動的に立ち上がる。このときテスト対象とは別のハードディスクを接続したままでも構わないが、実際のテストを実行する際にはテスト対象のハードディスクと間違えないように注意しよう。

 とりあえず急いでディスクをチェックしたい場合は、メイン・メニュー画面の[Quick Test]ボタンを押せばよい。この場合、記録領域のテストとしては最初の50万個のセクタ(つまり250Mbytes分)のみがチェックされるため、数分程度の短い時間でテストが完了する。すべての記録領域をチェックしたい場合は[Advanced Test]ボタンを、繰り返しテストしたい場合は画面左上のプルダウン・メニューから[Fitness Test]−[Exerciser]を選択すればよい。各テストの違いは下表のとおりだ。そのほかのDFTの操作に関する詳しい説明は、セットアップ・プログラムと同じWebページにあるマニュアルを参照していただきたい。

テスト方法 テスト内容 テスト時間
Quick Test ドライブの各種機能の検証、過去のエラー発生履歴の分析、メカ部分の動作確認、全磁気ヘッドでの読み書き、先頭の50万個のセクタ・スキャン(不良セクタの検出) 数分
Advanced Test Quick Testに加えて全記録領域のセクタ・スキャン 数十分
Exerciser Advanced Testに加えて、ランダムなセクタ読みだしをユーザーが指定した分だけ繰り返す 繰り返し回数による
DFTの各テストの違い
ハードディスクにエラーが生じていないか手早く確認するなら「Quick Test」が最適だ(一般的にOS本体など重要なファイルが格納されている先頭256Mbytes分に限ってセクタをチェックする)。不良セクタの有無を確認したい場合など、全記録領域をチェックしたいなら「Advanced Test」を実行すればよい。ハードディスクの初期不良の確認などで、負荷をかけた長時間テストをしたいなら「Exerciser」を選んで、繰り返し回数を増やす必要がある。
 
IBMのDrive Fitness Test(DFT)のメイン・メニュー画面
これはDFT Ver.2.3の画面。DFTのブート・フロッピーでPCを起動すると、ライセンス表示やドライブ選択を経てこの画面が表示される。サポートされるドライブはIDEのほかSCSIも含まれる。

 いったんDFTのブート・フロッピーを作成してしまえば、テストにWindows OSは不要だ。空いているPCにテスト対象のハードディスクを接続し、DFTのブート・フロッピーで起動すれば、すぐにハードディスクのチェックを開始できる。また、DFTのようなツールは、ハードディスクの記録領域のチェック(不良セクタの有無の確認)だけではなく、ハードディスク側のインターフェイスやコントローラなどもテストできるので、チェックディスクやスキャンディスクよりも便利だ。初期不良の確認以外でも、ハードディスク障害の有無を確認する場合などでも、DFTを試してみるといいだろう。記事の終わり

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「PC Hints」


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