Itaniumの登場でハイエンド・サーバ市場が変わる?

2.垂直統合型と水平分散型のビジネス・モデル

デジタルアドバンテージ
2000/10/31

 このようにIntelにとって強い逆風が吹き出した市場の中で、IntelはどのようにSun Microsystemsに対抗しようとしているのだろうか。その答えが、「水平分散型のビジネス・モデル」ということになる。Intelは、Itaniumシステムの説明をするときに、必ず水平分散型のビジネス・モデルであることを強調している。水平分散型とは、簡単に言えば複数のハードウェア、OS、ミドルウェア、アプリケーション、システム・インテグレータからユーザーが好みで組み合わせられるというものだ。それぞれのレイヤー内での競争から質の高い製品が安価で供給される、とIntelは主張している。クライアントPCやエントリ・サーバがその好例といえるだろう。システム・ベンダの競争により、ここ数年でクライアントPCやエントリ・サーバの価格が、半額以下に下がったのはご存じのとおりだ。

 複数のPCベンダやソフトウェア・ベンダが競争したことで、安価なPCと質の高いソフトウェアが市場に供給され、それが市場を大きく広げ、さらにPC本体の低価格化と多くのソフトウェアの流通を促進し続けている。Intelは、この水平分散型のビジネス・モデルによって、クライアントPC、ワークステーション、エントリ・サーバの市場で成功している。こうした循環をハイエンド・サーバに適用し、市場構造を大きく変革することで、Sun Microsystemsに対抗しようというわけだ。もちろんIntelが、Sun Microsystems、IBM、HPなどのようにOSまで開発し、サービスを提供することは不可能なので、水平分散型にこだわらざるを得ないという事情もあるだろう。

 こうした水平分散型のビジネス・モデルと対照的なのが、現在のハイエンドUNIXサーバ・ベンダである。現在、この市場でシェアが高いSun Microsystems、IBM、HPの3社とも、ハードウェアとOSを自社で開発している。さらに、ミドルウェアやアプリケーションなどについても、ソフトウェア・ベンダとの協力のもとに動作検証などを行ったうえで提供している。Intelでは、こうしたプロセッサからソフトウェアまでを1社が提供するビジネス・モデルを「垂直統合型」と呼んでいる。垂直統合型の場合、1社ですべてをコントロールすることになるため、可用性の保証が行いやすいというメリットがある(ハードウェアかソフトウェアのどちらの障害によるシステム・ダウンでも、1社で責任をもって解決すれば済む)。半面、競争が起きにくく、製品の価格が下がりにくい、選択肢が限られる、というデメリットもある。ただ、現在のところ、ハイエンドUNIXサーバ市場においては、価格よりも高い可用性が求められるため、垂直統合型の方がユーザーに好まれているという面がある。

垂直統合型と水平分散型のビジネス・モデル

垂直統合型が1社でシステムとOSを供給し、アプリケーションやソリューションまで責任を持って提供するモデルだ。これまでのメインフレームのビジネス・モデルと考えればよい。一方の水平分散型は、複数のベンダがシステムやOS、アプリケーション、ソリューションを提供し、ユーザーは自分の責任でそれらから最良のものを選択するというモデルだ。現在のクライアントPCやエントリ・サーバと同じビジネス・モデルと考えれば分かりやすい。

 Intelとしても、この点をまったく認識していないわけではない。Itaniumシステム向けにハードウェアとソフトウェアの開発の進捗状況や互換性の確認を行う「プラグ・フェスト」を開催し、信頼性の向上に努めている(「プラグ・フェスト開催に関するニュースリリース)。また、システム・インテグレータやユーザーがIAサーバ(Itaniumシステムを含む)でシステムを構築する際に、信頼性の向上を手助けする「インテル ソリューション・サービス」と呼ぶサポート・サービスも開始している(「インテル ソリューション・サービスに関するリリース」)。ただ、プラグ・フェストのような手段では、1社ですべてを賄う垂直統合型に比べて、「可用性」や「システムに障害が発生した場合の責任の所在」といった面で劣るのは間違いない。それでも、既存の保守的な垂直統合型を選択しているユーザー企業が、デスクトップPC分野でIntelが培ってきた手法を受け入れられるかという点に、Itaniumシステムの普及がかかっている。そのためには、水平分散型を生かしてシステムの価格を大幅に下げることに加え、Intel主導による可用性の向上を実現する一方、サーバ・ベンダがシステム運用の責任をとる姿勢を明確に示すべきだろう。

 Itaniumの登場によって、ハイエンドUNIXサーバ市場に大きな変化があるのは間違いない。クライアントPCやエントリ・サーバと同様、この市場でも低価格化の嵐が吹き荒れることになるのか、今度の動向に注目していこう。記事の終わり

関連リンク

プラグ・フェスト開催に関するニュースリリース

インテル ソリューション・サービスに関するリリース
 
 
 

 INDEX

  [特集] Itaniumの登場でハイエンド・サーバ市場が変わる?
    1.Itaniumシステムに積極的なのは日本のコンピュータ・メーカーばかり
  2.垂直統合型と水平分散型のビジネス・モデル
 
「PC Insiderの特集」

@IT Special

- PR -

TechTargetジャパン

System Insider フォーラム 新着記事
  • Intelと互換プロセッサとの戦いの歴史を振り返る (2017/6/28)
     Intelのx86が誕生して約40年たつという。x86プロセッサは、互換プロセッサとの戦いでもあった。その歴史を簡単に振り返ってみよう
  • 第204回 人工知能がFPGAに恋する理由 (2017/5/25)
     最近、人工知能(AI)のアクセラレータとしてFPGAを活用する動きがある。なぜCPUやGPUに加えて、FPGAが人工知能に活用されるのだろうか。その理由は?
  • IoT実用化への号砲は鳴った (2017/4/27)
     スタートの号砲が鳴ったようだ。多くのベンダーからIoTを使った実証実験の発表が相次いでいる。あと半年もすれば、実用化へのゴールも見えてくるのだろうか?
  • スパコンの新しい潮流は人工知能にあり? (2017/3/29)
     スパコン関連の発表が続いている。多くが「人工知能」をターゲットにしているようだ。人工知能向けのスパコンとはどのようなものなのか、最近の発表から見ていこう
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)
- PR -

イベントカレンダー

PickUpイベント

- PR -

アクセスランキング

もっと見る

ホワイトペーパーTechTargetジャパン

注目のテーマ

System Insider 記事ランキング

本日 月間
ソリューションFLASH