モノ/ヒトをつなぐこれからの「場」のデザイン


最終回 人と地域を結ぶリレーションデザイン


株式会社内田洋行
次世代ソリューション開発センター
UCDチーム
2008年9月2日
ユビキタス空間において求められるユーザーインターフェイスの形とは何か。若手技術者と若手クリエイターが、ユーザー中心の視点に立った空間デザイン論を考える(編集部)

 さまざまな視点から私たちの「場づくり」について紹介してきた本連載も、今回で最終回になります。最後は、第3回で紹介した目的地案内システム「Cochira」に続き、ちょっとユニークなプロダクトを用いた駅空間における「場づくり」について紹介します。

 ターゲットは無人駅

「ユーザーに理解してもらうには、ユーザーを巻き込む」

 これは私たちの考えるUCD(User-Centered Design:利用者の行動を中心に置いたデザイン)の基本思想の1つです。今回は、無人駅の情報提供において、このことを実施したプロジェクトを紹介したいと思います。

 本連載の第3回で紹介したCochiraというプロダクトを覚えているでしょうか。Cochiraは主に複雑化する都心の駅空間において、直感的な案内を指向したプロダクトでした。

 しかし、全国の約40%は、地方ローカル線を中心に存在する無人駅です。都心の駅がハード的にもソフト的にも日に日に発展していく一方で、無人駅では、木造建築で50年を越す駅も珍しくありません。

 その多くは有人駅時代の施設をそのまま利用しているため、使われていない駅務室や休憩室といった不要な施設が残っています。また、運行情報などの案内設備もままならず、天候の悪いときなどでも利用者は電車が来るかどうかをヤキモキしながら待っています。

 このように、無人駅の多くは利用者にとって優しくない駅として存在しているのです。「このような無人駅を、ソフト的にもハード的にも“利用者にとって優しい駅”にしたい!」。このような思いから、今回紹介する開発プロジェクトは始まりました。

 鉄道を中心とした「人の温かみ」の存在

 思いが共有できれば、あとは実現に向かって動くのみです。まず、無人駅の現状を知るためにフィールド観察調査を実施しました。フィールド観察調査には、プロダクトデザイナー、ソフトウェアエンジニア、ハードウェアエンジニア、コンテンツデザイナー、JR東日本関係者など、このプロジェクトにかかわるメンバー全員が参加しました。

 調査の舞台は、JR久留里線の駅です。始発駅から終着駅(木更津駅から上総亀山駅)までのいくつかの駅をめぐり、それぞれが感じたことをメモに書き留めていきました。



写真1 小櫃駅(上)、東横田駅(下)

 フィールド観察調査を実施することで、駅施設の老朽化といった目に見える問題のほかに、現場に行かなければ分からないことも発見できました。それは、久留里線には、鉄道を中心とした「人の温かみ」が存在することです。

 ある駅を観察しているときに、電車に乗り遅れた親子連れを乗せるために、駅を発車した電車を止めて、その親子を乗せている場面がありました。また、地元のボランティアの方々が運営されている駅(馬来田駅)は、とても清潔な印象で、駅前にはかわいらしい花が植わっているなど、ほかの無人駅にはない人の温かみを感じられました。このようなことは、現地に足を運ぶフィールド観察調査なくしては発見できないことでした。

 フィールド観察調査の結果から方向性を導き出す

 フィールド観察調査で、それぞれが書き留めたことを整理し、今回のコンセプトを構築するためのキーワードを洗い出す作業を行いました。「パンフレットラックやごみ箱は、都心と同じものでよいのか。無人駅に合った形があるのではないか」とか、「久留里線周辺の風景には魅力がある。その魅力の表出の仕方を考えよう」など、駅の設備のことから駅周辺の情報発信の方法までさまざまな課題や個々人の思いが挙げられました。

 また、プロジェクトメンバー全員が共通して感じたのは、ボランティアによって支えられている馬来田駅が「地域の人びとが愛着を持って支えている駅であり、都心の駅に感じられない温かみがあった」ということです。そこで、「このような感覚をモデル化して、多くの問題を抱えるほかの無人駅のNext Standardにできないか」という1つの方向性を導き出しました。

図1 初期段階のアウトプットイメージ

 
1/3

Index
人と地域を結ぶリレーションデザイン
Page1
ターゲットは無人駅
鉄道を中心とした「人の温かみ」の存在
フィールド観察調査の結果から方向性を導き出す
  Page2
馬来田駅のことをもっと知りたい
コンセプトの構築
それぞれを「結ぶ」
  Page3
ITかかしの置かれた「場」
これからの「場づくり」におけるRFID×UCD

モノ/ヒトをつなぐこれからの「場」のデザイン


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