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ソフトウェア・マイグレーションを支援するVirtual PC 2004が登場

―― 仮想OS環境を利用して旧式のOS+アプリケーションを最新OS環境で実行可能に ――

Michael Cherry
2004/01/05
Copyright (C) 2003, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.

 
本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌「Directions on Microsoft日本語版」2003年12月15日号p.31の「Virtual PC 2004の多様な可能性―仮想OS環境をどう使う?」を、許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。

 Microsoftが初めてリリースするVirtual PC 2004は、ユーザーを最新のWindows環境へアップグレードさせる役目を担っているが、製品の使い道はそれだけではない。

 Microsoftがリリースする初の仮想マシン(ハードウェア・エミュレーション・ソフトウェア)であるVirtual PC 2004が製造工程に入っており、2003年12月に出荷される見通しだ。通常、仮想マシンはソフトウェアをテストしたり、評価したりするために使われる。Microsoftとしては、古いバージョンのOSを必要とする旧式化したアプリケーションを廃棄することなく、最新バージョンのWindowsにアップグレードさせたいという考えがある。その手段として、2003年2月にConnectixを買収することで獲得したVirtual PCを普及させようとしている。Microsoftは、このような形で活用することを念頭に置き、Virtual PC 2004をユーザーにとって魅力的な価格に設定しようとしているが、それでもゲストOSとそこで稼働するアプリケーションのライセンスを購入しなければならない。

仮想マシンのサポート範囲

 仮想マシンは、プロセッサ、メモリ、グラフィックス・カード、ネットワーク・インターフェイス、ストレージ・デバイス(ディスクやCD-ROMドライブなど)を含む完全なコンピュータをソフトウェアによってエミュレートする。仮想化されたこのハードウェアは、1台の物理的PC上にインストールされているOS(「ホストOS」と呼ばれている)上で稼働する複数のOS(「ゲストOS」と呼ばれている)や、アプリケーションへのアクセスをユーザーに提供する(図「Virtual PC のアーキテクチャ」を参照)。

Virtual PCのアーキテクチャ
Virtual PC 2004を使えば、複数のゲストOSとアプリケーションを1つのホストOSが稼働する1台のPC上で稼働させることができる。Windows 2000やWindows XP ProfessionalなどのホストOSは、PC上にインストールされる。Virtual PC 2004は、プロセッサ、ネットワーク、グラフィックス・カード、およびディスク・ドライブやCD-ROMなどのストレージを含む各種コンポーネントに対応する仮想ハードウェアを実現する。ゲストOSは、仮想ハードウェア上で稼働し、ゲストOSとアプリケーションが稼働するための環境を提供する。

 Virtual PC 2004は、Windows 2000 Professional、Windows XP Professional、Windows XP Tablet EditionをホストOSとしてサポートし、MS-DOS 6.22、IBM OS/2 Warp、Windowsの各種バージョン(Windows 9x、Windows NT 4.0、Windows 2000 Professional、Windows Me、Windows XP Professional)をゲストOSとしてサポートする。技術的に見れば、Virtual PC 2004は、Windows Server、Novell NetWare、Linuxなど、ほかのOSも稼働させることができるが、競合製品(とりわけVMWare)とは異なり、MicrosoftにはこれらのOSをサポートする意志がない。これらのOSもVirtual PCで稼働させることが可能である。しかし、ゲストOSとして稼働させた結果として生じる問題は、その原因が仮想マシン側にあるということをユーザーが明示できない限り、Microsoft以外のサポート・チャネルを使って処理しなければならない(Windows XPホスト上でWindows 98やWindows NTをゲストOSとして稼働させた場合の様子については、以下の画面「Windows XP上で動作するVirtual PCの画面」を参照)。

Windows XP上で動作するVirtual PCの画面
Virtual PC 2004を使えば、複数のゲストOSとアプリケーションを1つのホストOSが稼働する1台のPC上で稼働させることができる。上の画面では、Windows XP(ホストOS)が2つの仮想マシンをホスティングしている様子を示しており、一方の仮想マシンではWindows 98(ゲストOS)が、もう一方の仮想マシンではWindows NT 4.0(もう1つのゲストOS)が稼働している(※転載の都合上、モノクロ画面データを使用)。

 Microsoftは、次のような方法でConnectixの製品を改良した。まず、最大で4つの(仮想)ネットワーク・アダプタのサポートを追加し、構成ファイルにはXMLを使用している。さらにソフトウェアの集中的なテストを行って、仮想マシンやゲスト側に問題が起きてもホストに影響が及ばないようにした。

 新たに登場するVirtual PC 2004は、すでに出荷されているVirtual PC for Macと同じ製品ラインに入る。Virtual PC for Macは、Mac OS XやMac OS 9をホストとして使い、MacユーザーによるWindowsアプリケーションの稼働、Windowsネットワークへのアクセス、Windowsユーザーとのファイル共有などを可能にする。

仮想PCとしての多様な用途

 Virtual PC 2004は、さまざまな用途に対応しており、古いアプリケーションのサポートはもちろん、ソフトウェアのテストや評価、問題の再現、トレーニングといった、より本来的な役割もこなすことができる。

●古いアプリケーションのサポート
 Microsoftは、この役割をVirtual PC 2004の最も有効なシナリオとして推奨している。このシナリオでは、Windows XPなどの新しいOSでは稼働しないアプリケーションを使っているユーザーが新しいOSに移行できるようになり、移行後はVirtual PCを使って古いOSとアプリケーションをホスティングする。

●ソフトウェアのテスト
 開発者が、複数のコンピュータを使ったり、1台のコンピュータに複数のブート・パーティションを設定したりすることなく、各バージョンのOSでアプリケーションのテストとデバッグを行うことができる。

●ソフトウェアの評価
 管理者とユーザーが、複数のコンピュータを使うことなく、また業務で使用しているコンピュータに影響を与えることなく、Windows XPで稼働するOffice 2003といった新製品を評価できる。

●問題の再現
 ヘルプデスクがユーザーをサポートする場合、ヘルプデスク側では用意していない旧式の環境やOS上で遭遇した問題をVirtual PC上で再現し、対応策をユーザーに示したり、ほかのサポート・グループに問題解決を依頼したりすることができる。

●トレーニング
 講師が、講座と講座の合間に長時間コンピュータをダウンさせることなく、教室内で素早く実習用のカスタム環境を再構成できる。

サーバ版とLonghornへの対応

 Microsoftは、「Virtual Server」と呼ばれるVirtual PCのサーバ版をリリースする予定だ。この製品は、Windows Server 2003をホストとして使用し、DOSからWindows、NetWare、Linuxまで、x86アーキテクチャに対応する主なOSがすべてゲストとして稼働する(Virtual PCと同様、NetWareとLinuxがゲストとしてサポートされる)。Connectixは、サーバ製品でLinuxをホストOSとしてサポートしていたが、Microsoftがこれを継承することはないようだ。仮想サーバは、古いアプリケーションのホスティングなど、Virtual PCと同じシナリオをサポートするが、サーバ統合のためのプラットフォームになることもできる。

 また現在のVirtual PC 2004は、「Longhorn」をゲストOSとして稼働させるようになっているが、DirectX 9をサポートするグラフィックス・カードが必要な新しいグラフィックス・サブシステム「Avalon(開発コード名)」はサポートしない。Avalonのサポートは、既存のVirtual PCグラフィックス・カード・エミュレーション機能には盛り込まれていないが、将来追加される可能性はある。

Virtual PC 2004の出荷情報

 Virtual PC 2004はすでに製造工程に入っており、2003年12月に出荷されるはずだ。

 Virtual PCの小売価格は129ドルになると見られており、MSDNに加入している場合には無料で入手できる。また、OpenやSelect、Enterprise Agreementなどのライセンシング・プログラムを利用すれば、大口購入割引が利用可能だ。さらにMicrosoftは、既存のConnectixユーザーに対して、送料を負担するだけで新バージョンにアップグレードできるサービスも提供する予定である。End of Article

参考資料

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本記事は、(株)メディアセレクトが発行するマイクロソフト技術戦略情報誌「Directions on Microsoft日本語版」から、同社の許可を得て内容を転載したものです。『Directions on Microsoft 日本語版』は、同社のWebサイトより定期購読の申込みができます。
 
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