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連載:キーパーソンに聞く(2)

ASBJ 加藤委員「日本はIFRSの基準作りに直接参加を」

垣内郁栄
IFRS 国際会計基準フォーラム
2009/9/17

30年にわたってIFRSに関わってきた加藤厚氏。2009年4月からは企業会計基準委員会(ASBJ)常勤委員としてIFRSに取り組む。加藤氏にIFRSのこれまでと、これからのIFRSについて聞いた

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――世界の会計基準は今後どうあるべきでしょうか。日本と米国の動き次第ではIFRSでほぼ統一されそうな方向ですが、このままでいいのか、それとももう少し次世代を見込んだ動きがあった方がいいでしょうか。

加藤氏 私の夢は、真に国際的に統一された会計基準(これを仮に「国際統一会計基準」と呼ぶことにします)の実現です。「国際統一会計基準」というのがいまのIFRSなのかというと、私は必ずしもそうではないと思います。これはあくまでも私の個人的な考えですが、現在のような体制でIFRSを作っていても、いずれ破綻が起きると思いますし、すでにいくつかの問題が指摘されています。

 IASBは形態としては国際組織ですが、IASC時代から、ずっと欧州に本部が所在し、IASC時代の議長は、白鳥栄一氏を含め各国人が担当して来ましたが、IASBになってからは英国人だけです。欧州が中心になって前身のIASも現在のIFRSも作られているということは、どんなメカニズムを構築しても、所詮は欧州から抜け出せないと考えることができます。いろいろなガバナンス構造やモニタリング機構が作られていますが、それでも結局は欧州を基盤とした組織なのではないでしょうか? そういう環境で作られた基準は、国際会計基準といっても欧州の基準という枠からはなかなか抜け出せない、つまりEUを中心とした欧州の意見や政治家、組織の圧力を受けて意思決定せざるを得ない局面が多いのが実情ではないでしょうか。今回の金融危機に遭遇して、このような点を改めて認識させられた人々が多いのではないかと思っています。

 将来的にはこの体制を完全に改めて、欧州と、カナダ、南米を含む米州地域、アジア・オセアニア地域の3極が対等になって「国際統一会計基準」作りに参加する新しいメカニズムを作らないと、本当の意味での国際基準にはならないでしょう。夢のような話ですが、私は、将来は、現在のようなIASBに代わる新しい組織を作ることを提案しています。その組織は前述の3極が持ち回りで運営するのです。本部所在地は、3極の中から選び3〜5年のインターバルで動かし、議長も3極の持ち回りにするくらいにしないと、特定の地域の影響や政治の影響からは抜け出せないでしょう。

――このような議論が始まる予感は?

加藤氏 始まるとすれば2011年以降でしょうね。2011年までには、現在のIASBのトウィーディー議長を含め、かなりのIASBボードメンバーが代わります。さらに、IASBとFASBの間のMoUプロジェクトや東京合意も完了するので、まさに新しい時代が到来することになります。私は、このような新しい時代における会計戦略には、日本がリーダーシップを取っていくべきだと思っています。その点、日本では2015年〜2016年にはIFRSが強制適用になる可能性が高いと思われるので、もしその時期をターゲットに新しい組織を作るのであれば、2011年当たりから動き出す必要があると思います。

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