人気のモバイルJava、現状と可能性(上)

2001/6/9
May 23, 2001 By LENNY LIEBMANN InternetWeek

 理論上は、Javaは次世代のハンドヘルド向けの技術ということになっている。開発者は、Javaを使えばあらゆる種類の携帯端末の上で動作するアプリケーションを量産できるというのだ。開発だけではない。ミドルウェアとの統合・連携も容易で、ブラウザの上のアプリケーションよりも堅牢なクライアント・サイドのアプレットを持っている。

 だが、クライアント・サイドのJavaも、いくつかの課題を抱えている。PDAや携帯電話のメーカーはJava版の端末の生産を開始したが、その実装は同じではない。また、モバイル・ネットワークの帯域という問題もある。Javaのアプリケーションに対応できるだけの帯域幅を確保できるかは明確ではないし、市場も確立されたわけではない。Javaアプリケーションが長期にわたって開発市場が活性化するほどの数になるかはまだ確実ではないのだ。

 「MapXtreme」というJavaアプリケーション製品を提供しているマップインフォは、クライアントサイドのJavaを用いてリッチな画像と色を実現した。さらに同製品では、ネットワークに接続していない状態でもデータのマッピングが可能だ。同社の開発部門副社長のDwight Cheu氏は「これまでのブラウザベースのアプリケーションでは、接続状態が悪くなるとなにもできなくなる。ワイヤレスのサービスエリアが現在のように狭い場合、これは深刻な問題だ」と説明する。クライアント側にあるアプリケーションを適当なサイズにすれば、ユーザーは支障なくスクロールやドリルダウンといった操作ができ、外出の多いフィールドワーカーや営業マンにとって使い勝手の良いツールとなる。

 同社はプラットフォームベースでもJavaを利用している。同社の顧客から、出先で複数のデバイスを利用したいという要望が強かった。J2ME(Java 2 Micro Edition)はコアのOS上に複数のソフトウェア層を提供しているので、開発者はデバイスのOSの種類を気にすることなくコードを書くことができる。

 「どのプラットフォームが勝者になるのかわからないし、どれかに賭けようという人もいないだろう」とCheu氏。「勝者となるプラットフォームはまだ登場していない可能性だってある。J2MEの仕様に基づいてプログラムすれば、デバイスベンダーがその仕様をサポートする限り、あらゆるデバイスに対応するアプリケーションを提供できる」

 マイクロソフトのWindows CEベースのPDAもデバイスに含まれる。Cheu氏によれば、マップインフォはWindows CE用にもJavaクライアントを提供しているという。「だが、顧客の中にはマイクロソフトの技術に完全に“スタック”してしまっているところがある」(Cheu氏)。こういった顧客に対し、同社ではC、C++で書いたものを提供している。実際、Java対応デバイスは登場したばかり。C、C++、アセンブラ言語で書かれたクライアントサイドのアプリケーションの方が多いのが現状だ。

 Javaのメリットは、デバイスのOSに左右されないこと、それに開発者が多いことだ。C、C++ベースの開発キットも提供されているが、それらに慣れ親しんでいる開発者は少ない。コンパックのiPaqとRIMのBlackberryなどのPDAに金融関係のデータのストリーミング配信を行うweCommのCTO、Oliver Sturrock氏は「Javaにどんな欠点があるにせよ、Javaの開発者が多いことは確か」という。同社では、C++に加え、J2MEのパイロット版を発表した。開発マネージャとして「デバイスを限定するC++の開発キットから部下を解放したい」と同氏は語る。

 車内システムのOnstarでは次世代端末に対応するJavaを評価している。同社の開発者Mike Hichime氏は、米サン・マイクロシステムズと共同でJava APIを作成中だ。同社では、Java APIにより開発者が容易にOnSterのデバイス機能にアクセスできることを目指している。

 Hichme氏は、「Java APIの標準化により開発のスピードは飛躍的に向上する」と見ている。「少しでも多くのアプリケーションを顧客に提供するために、スピードアップは必要だ」

 OnStarには、顧客により異なるデバイスへの対応という課題もある。キャディラックのようなハイエンド型の車は、より洗練された高価な車載システムをインストールしている。Javaは――標準化されたAPIと共に――さまざまなシステムをサポートするためのプログラミングにかかる労力を削減してくれる。

 デバイスの機能へのアクセスコントロールを標準化すれば、OnStarはワイヤレスにはつきもののセキュリティに注力できるという。物理的なコネクティビティがないからといってクラッカーの侵入を防げることにはならないのだ。「Javaによるこれらのメリットを考えると、モバイルアプリケーションのクライアントサイドの技術としてJ2MEへの期待は高い」とHichme氏。

 J2MEはワイヤレスの開発者にとって第1の選択肢となりつつある。Evans Dataによれば、モバイルの開発者のうちPalmは25%、Windows CEは22%であるのに対し、J2MEは30%となっている。

*この記事は一部編集しています。次回掲載予定は6月12日です。

[英文記事]
Java On The Go

[関連リンク]
マップインフォ
weComm

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