[Integrate Tokyo 2001開催]
OMG会長、プラットフォーム非依存のMDAを語る

2001/10/11

 10月9日より、都内でインテグレーションに関するイベント「Integrate Tokyo 2001」(主催:OMG ジャパン、IDG ジャパン)が開催中だ。10日には、オブジェクト・マネジメント・グループ(以下、OMG)会長兼CEO リチャード・M・ソーリー(Richard Mark Soley)氏が基調講演を行い、OMGの提唱する次世代アーキテクチャ「モデル駆動型アーキテクチャ(MDA)」について語った。

リチャード・M・ソーリー氏 「MDAは大きな進化となる」

 コンピューティング環境の変遷は目覚しい。現在、インターネットに接続することは難しいことではなくなったが、サービス、つまりアプリケーションへの接続は困難を極める。ソーリー氏は電源プラグの例を用いて、アプリケーション接続に関する標準の必要性を説いた。「電源プラグは登場して120年たっても、北米方式の電源プラグをそのままイタリアに持っていっても使えないようにさまざまな標準がある。われわれは、情報システムを同じような状態にしたくないのだ」(ソーリー氏)。

 情報システムを取り巻く現状を見てみると、プログラミング言語、OS、ネットワーク、それぞれにさまざまな“標準”が存在する。「このような環境のヘテロジニアス(異機種混合)性は永遠になくならない」とソーリー氏は言う。「技術や標準は今後も短いサイクルで次々と登場する。いまある技術を用いて開発したアプリケーションは、数年もすれば“レガシー”になっているのだ。だからといって、次にどの技術が普及するものになるかはだれにもわからない」。ソーリー氏の言葉にあるように、環境に普遍性や永続性を求めることは不可能だ。

 そこで、ヘテロジニアスが永続する環境で相互接続性を実現するためにOMGが今年3月に採用した手法がMDAだ(「OMG、新アークテクチャ「MDA」採用を発表」参照)。これはモデリング主導のシステム開発やライフサイクル管理を実現するアーキテクチャで、着目点はインターフェイスの相互接続にある。1989年にソフトウェアのインテグレーション技術を策定する目的で設立された同団体は、これまでCORBA(Common Object Request Broker Architecture)やUML(Unified Modeling Language)などの技術を提供してきたが、新モデルのMDAでは、CORBAをも含むあらゆる技術に対して非依存型のアプリケーション構築を実現するという。

 MDAでは、UML やMOF (Meta-Object Facility)、CWM (Common Warehouse Meta-model)などのOMG のモデリング標準技術を用い、CORBAやJavaなどのプラットフォームに依存しないアプリケーションのアーキテクチャを設計する。このソフトウェア・モデルをプラットフォームにマッピングすることにより、新技術が登場しても再利用が可能となる。プラットフォーム層の上にセキュリティやディレクトリといった機能が、最上位層に産業に特化した標準技術が乗ることになる。現在、各プラットフォームへのマッピング・ツール(プロファイル)を作成中で、UMLの最新バージョン2.0は、来年中にも完成する予定という。

 現在、同モデルを用いた事例としては、米ウェルスファーゴ銀行や米政府によるGCPR(Covernment Computer-based Patient Records)プロジェクトなどがあり、今後3年間で5億ドル規模の市場に成長し、米国での浸透率は33%になるとの予測があるという(米調査会社Cutter Consortiumによる)。

 最後にソーリー氏は、「MDAは20年後も動くソフトウェアを実現する手法だ。現在、ソフトウェア周りの業務の90%がインテグレーションといわれている。MDAは、この最大の課題を解決する手助けとなる」と述べ、その利点を強調した。

(編集局 末岡洋子)

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OMG ジャパン
Integrate Tokyo 2001

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