あなたは人財、人在、それとも“人罪”!?

2003/10/25

 「1つの事業分野だけでしか強みを発揮できないのでは、投手が4番打者を兼ねる“高校野球”と変わらない。これからはすべての分野で最高の強みを発揮するリソースがそろう“プロ野球”型の企業しか生き残れない。当然そこで働く人材についても当てはまる。一芸に秀でた分野(コアコンピタンス)が求められる」。

IBMビジネスコンサルティングサービス 代表取締役社長 清水照雄氏

 IBMビジネスコンサルティングサービス 代表取締役社長 清水照雄氏は、「AT&Tネットワーク・サミット2003」(主催:AT&Tグローバル・サービス)の講演「不確実時代の企業経営」でこのように語った。米ゼネラル・エレクトリック(GE)のジャック・ウェルチ流の経営手法を紹介しながら、先の読めない時代を勝ち抜く経営手法、次世代に活躍できる人材像について説明した。

 そこで語られたGE流の経営手法とは、業界内で1位の事業分野しか残さず、2位以下なら売却か撤退に踏み切る「NO.1 or Die」という考え方だ。例えばGEは1980年代以降、その屋台骨を支えてきた家電事業が、当時業界内で1位になれなかったという理由で「その事業そのものから撤退」という選択を行った。

 その背景にあるのは、「自社が強みを発揮する事業分野へのシフト」(Invest)、「競争力を持たない非戦略部門の売却」(Divest)を通じ、総合的にすべての分野においてNO.1を目指すという戦略だ。まさにプロ野球ならぬ“メジャーリーグ入り”を狙ったもの。

 さらに「自社が強みを発揮する事業分野へのシフト」とは、具体的にいえば3つの要素に分解できる。それが「価格優位性」「製品力」「顧客親密性」であり、その3つの要素のどれか1つに経営リソースを徹底的に投入するのが望ましいという。

 そうした経営手法がいまの時代に必要とされる理由について、清水氏は「90年代は1つのビジネスモデルで5年間収益を上げられたが、2000年代に入ると、せいぜい2〜3年しかもたなくなったからだ」と指摘した。これをそのまま人材に例えれば、価格優位性とは、同等のスキル・キャリアを持つ人と比べて、少ない給料で高いパフォーマンスを挙げることであり、製品力は高いスキル、知識の持ち主であることだ。

 競争力のある企業とない企業との間で差別化が進んでいるのと同様に、人材についても競争力のあるキャリアを持っているかどうかが重要になってくる。「会社にとって、なくてはならない人(=人財)なのか、ただいるだけの人(=人在)なのか、それとも必要ない人(=人罪)であるのか。経営者にせよ社員にせよ、こうした意識改革をすることが必要である」。

 自社の競争優位の源を見極め、それを強固なものとするには、経営改革が不可欠であるといわれているように、そこで活躍する人材も、自分のキャリアについての強い意識改革が求められる時代になりつつあるのだろう。

(編集局 原田明)

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