富士通はなぜ、半導体に力をいれるのか?

2004/7/9

 富士通ほど半導体事業に注力している総合IT企業はないかもしれない。富士通 代表取締役会長 秋草直之氏は7月8日、都内で開催している「富士通ソリューションフォーラム」で講演し、富士通が半導体事業に対して燃やす熱意のワケを明らかにした。秋草氏の講演は、富士通の事業戦略を語りながら、“日本(のモノ作り産業)復活のシナリオ”へと展開していく壮大なものだった。

 富士通に限らず、日本の競争力を向上させるために必要な要素は何か。秋草氏はその回答として、“コラボレーションワーク”を挙げ、その重要性について熱弁した。「例えば、高機能IPルータは通信機器なのか、コンピュータなのか。プログラマブルLSIはデバイスなのか、ソフトウェアなのか」。
 
 Information Technology(IT)は融合しながら多種多様な製品を作り上げていく。従来のような、「通信屋」「コンピュータ屋」といった区分けが通用する時代ではなくなった。多層化、階層化、複雑化するITシステムにしても同様だ。「オープン化の時代を迎え、顧客は技術選択の自由を得たが、一方で、システム全体の保証や安全性はトレードオフされているのではないだろうか」。

富士通 代表取締役会長 秋草直之氏

 携帯電話用のLSIは、デザインルールが0.18μmまで進み、従来10個も必要だったチップが1つで賄えるまでに集積技術が進化している。この“System On Chip”思想の本質は、メモリ、プロセッサ、画像処理、暗号処理、アプリケーション・ソフトウェアといった従来分散して存在していた技術を半導体に凝縮してしまうということにある。「これは果たして、半導体ベンダができる仕事だろうか」と秋草氏はいう。「このような高度な実装技術は、IT分野のすべてのノウハウの蓄積があって実現するものだ。それができるのは、日本では富士通しかない」。同社ではこのような戦略を「Integrated Device Manufacture(IDM)」と呼び、強力に推進していく。

 IDMは必ずしも、携帯電話だけの話ではない。同社が蓄積してきたメインフレームの技術を応用し、次世代IAサーバ(PRIMEPOWER)用の90nmLSI開発にも適用される。これは、10層銅配線による高集積・低消費電力のLSIで、米トランスメタ、米Lattice、米インテル、米サン・マイクロシステムズ、独SAP、米マイクロソフトといった大手ITベンダと手を結びながら、次世代のオープン・コンピューティング・プラットフォーム構築を着々と進めている。富士通の最近の提携発表はつまり、半導体を核としたシナリオに基づいているといえる。2005年には65nmプロセスを立ち上げる計画もある。

 さまざまな技術を融合する高度な実装技術こそ、日本が世界に誇る競争力の源泉だと秋草氏はいう。「オープンな時代だからこそ、高い信頼性を維持する製品、サービスを提供していかなくてはならない。品質に対するこだわりは、いまこそ発揮されるべきだ」。日本のモノ作り産業復活を支える企業のトップだけに、講演の内容は「技術の海外流出の歯止め」や「安易なオフショア地域へのアウトソーシングの警鐘」といった、やや偏りがちな議論に傾斜するきらいはあったが、純国産IT総合ベンダの心意気は十分感じられた。

(編集局 谷古宇浩司)

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