IPAの新組織「SEC」で“日の丸ソフト”の夜は明けるか

2004/9/30

 情報処理推進機構(IPA)は9月29日、効率的なソフト開発のための環境を整備し、ソフトベンダ、ユーザー企業を支援する新組織「ソフトウェア・エンジニアリング・センター」(SEC)を10月1日に設立すると発表した。ソフト開発支援については、これまでも国の意向を受けてさまざまな組織が実施してきたが、目覚しい成果を挙げたとはいえない。SECの所長に就任する鶴保征城氏は「日本のソフトウェアの競争力強化を目指して産官学の連携拠点になる」とSECの役割を説明したうえで、「業界が何を求めているかを的確に理解し、解決策を提供したい」と意欲を見せた。

左から経済産業省の商務情報政策局情報処理振興課 課長 小林利典氏、IPA 理事長 藤原武平太、SEC 所長 鶴保征城氏

 SECはIPAの職員10人とソフトベンダなどの出向者20人の計30人で主に運営。加えて取り組むプロジェクトごとに協力企業からスタッフが120人程度参加する。

 SECは3つのプロジェクトを設定し実施する。「エンタープライズ系ソフトウェア開発力強化」「組み込みソフトウェア開発力強化」「先進ソフトウェア開発プロジェクト」の3つだ。

 エンタープライズ系ソフトウェア開発力強化には、ソフトベンダ、ユーザー企業、大学などから約50人が参加し、ソフト開発におけるベンダとユーザー企業の共通の定量的な手法を開発する。「ソフト開発に統一的なものさしが欠けているため、納期遅延や不具合、コストオーバーが発生している」(鶴保氏)。具体的には、企業の過去のソフト開発プロジェクトのデータを収集し、その品質や規模、工期、生産性などを測定し、定量データベースを作成する。そのデータを収集するためのフォーマットを標準化し、さまざまな企業に対して利用を促す。SECでは初年度に1000件以上の開発データを収集したいとしている。

 また、ユーザー企業がベンダにソフト開発を依頼する場合の見積もりに関するフレームワーク作りも行う。実際にユーザー企業が使っている見積もりの手法を収集し、成功例を分析する。ユーザー企業が適切な見積もりを出せるようにし、コスト超過や品質低下を防ぐ狙いがある。さらにソフト開発プロセスの標準化や、ベンダとユーザー企業で共有できるガイドラインの確立も目指す。初年度は特に要求仕様や見積もりなど上流工程にフォーカスしたガイドラインの作成を行う。

 組み込みソフトウェア開発力強化は約70人が参加し、携帯電話やデジタル家電、自動車の電子システム、工業用ロボットで利用される組み込みソフトに関するエンジニアリング手法の確立と人材の育成を目指す。初年度は高品質な組み込みソフトを開発するためのスキルセットの設定や、プロジェクトマネジメントを適切に実施するためのチェックリストの開発などを行う。組み込みソフトを開発するうえで必要になるスキル項目の洗い出しやスキル評価方法の確立なども図り、エンジニアの人材育成につなげる。

 先進ソフトウェア開発プロジェクトは、上記のエンタープライズ系ソフトウェア開発力強化と、組み込みソフトウェア開発力強化から得られた効果的なソフト開発手法を基に、実際にソフト開発を行う。ソフトベンダや自動車メーカーなどが中心となって、今後3年をめどに次世代交通システムの共通ソフトウェア・プラットフォームを開発する計画。開発を通じて、SECで確立したソフト開発手法の有効性の検証も行う。

 経済産業省は今年度、SECに対して14億8000万円の予算を投入する。来年度も28億円を要求していてSECに対する期待度は高い。経済産業省の商務情報政策局情報処理振興課 課長 小林利典氏は日本のソフト開発の現状について「工学的な知識に基づく手法が確立されていない」と指摘し、「(SECが)ソフトウェア工学を確立し、産業界が受け入れていくことが重要だ。SECに対しては技術と人材を輩出する場としても期待している」と述べた。

(編集局 垣内郁栄)

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情報処理推進機構の発表資料

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