[Interview]
ブロケード、シスコに反撃ののろしを上げるマクデータ

2004/10/15

 マクデータとブロケード・コミュニケーションズの2社によって率いられているSAN(Storage Area Network)向けのファイバ・チャネル・スイッチ市場は、シスコ・システムズの登場などで新たな局面を迎えている。技術的にも、従来のファイバ・チャネルにTCP/IP技術をミックスしたソリューションの登場で、100km超の距離間でのディザスタ・リカバリ(災害復旧)やミラーリングを実現したほか、仮想化、複数ベンダ間でのソフトウェアを含む互換性の実現など、転換期にあるといえる。

 ハイエンドを中心にトップを走るマクデータは、2003年末にベンチャー企業の米ニーシャン・システムズを買収したことで、ファイバ・チャネル〜IPネットワーク間のブリッジとなる製品を手に入れた。マクデータの最新戦略について、米マクデータ会長・社長兼CEOのジョン・ケリー(John Kelley)氏とアジア太平洋・日本地域のゼネラル・マネージャ兼副社長のポール・ラス(Paul Rath)氏に話を聞いた。



――世界市場の現状は?


米マクデータ会長 社長兼CEOのジョン・ケリー氏

ケリー氏 日本を含むアジア太平洋地域の成長率は60%超と、予想を上回る伸びを見せている。特に日本は、もともと世界で2〜3位の市場規模がありながら、これまでのところあまり積極的に取り組みを行っていなかった。現状での地域別シェア比は、北米が6割、欧州が3割で残りの約1割がアジア太平洋地域となっている。アジア太平洋地域の伸びは高く、比較的横ばいの北米とは対照的だ。今後の目標は、北米とそのほかの地域の売上比率を5:5にしていくことにある。

――日本市場と北米市場の違いは?

ラス氏 両者に大きな違いはない。ただあえて分けるとすれば、北米ではハイエンド製品が強く、日本などのアジア太平洋地域ではミッドレンジ製品が強いといえる。ハイエンドからローエンドに降りていくのは、製品ラインを広く用意するだけなので比較的容易だが、その逆は機能的に補完しなければいけない部分も多く、課題は大きい。マクデータでは8000サイト近いデータセンターへの製品導入実績があり、ここで培った信頼性を武器に、ミッドレンジ市場へと切り込んでいくつもりだ。

――ミッドレンジに強いブロケードや、新参者であり強敵のシスコらにどう対抗するか?

ラス氏 もともとミッドレンジでのシェア比率は、ブロケードの約9割に対してマクデータの約1割という状況だったが、新製品の展開により、一時期は5:5に近い状況まで持っていくことに成功した。ハイエンドでは依然としてマクデータが強く、100%近いシェアを持っている。これを武器に、弱点となる分野を次々と補強していきたい。

ケリー氏 2004年は、ブロケードとシスコの攻勢によって、ミッドレンジ市場のシェアが減少する状況になった。2005年はそれを盛り返して、シェアをさらに拡大していきたいと考えている。特にIPストレージなど、すべてのソリューションを一括で提供できるシスコは強敵だ。ハイエンド・ルータ分野で同社と競合するジュニパー・ネットワークスなどと技術提携を行い、シスコに対抗できるネットワーク管理や製品連携の仕組みを作ることで、マクデータのハイエンド市場でのシェアを生かしたイニシアチブを取っていく。

――マクデータの日本市場での課題は?

同社アジア太平洋・日本地域のゼネラル・マネージャ兼副社長のポール・ラス氏

ラス氏 ブランド認知力がまだまだ低いことが、本格的な市場展開のネックとなっている。日本では、日立製作所、IBM、EMCといったOEMパートナーのほか、需要の高い「金融」「通信」「政府機関」の3つを中心にダイレクト・セールスを仕掛けていく戦略を取っている。ユーザーは製品を買うのではなく、ソリューションを買っている。OEMなどチャネル・パートナーとの提携が、市場機会の拡大につながると考えている。

ケリー氏 ここ数週間の間に、マクデータは重要な発表をいくつか行っている。中でもIBMとのマクデータ製品(ディレクタ、スイッチ)のOEM販売契約を大きなものだ。この提携が、前述のブランド認知力の弱さをカバーし、今後中国やインドといった市場への製品展開に当たっての強力な後ろ盾になるものと考えている。そのほかQLogicとの提携で、IBMのブレード・サーバ向けに、マクデータのスイッチ製品との接続を実現するブレード・モジュールを提供していく。QLogicは、HBA(ホスト・バス・アダプタ)市場でトップ・シェアを誇っている。同製品により、既存のSANとブレードの接続が容易になる。そして、NAS(Network Attached Storage)やDAS(Direct Attached Storage)の分野で大きなシェアを持つ米ネットワーク・アプライアンスがSAN市場への参入を計画していて、同社製品群とマクデータのSAN管理ツール「SANavigator」で連携させていく予定だ。この3つの提携が、今後のマクデータの大きな収益源となるだろう。

――ディザスタリカバリ市場での戦略は?

ケリー氏 2003年末に買収したニーシャンの「Eclipse」を、2004年の5月からようやくマクデータ・ブランドで販売することができた。これにより、従来のファイバ・チャネルの弱点でもあったリモート拠点間でのSANの相互接続が容易となった。この技術の応用例の1つであるディザスタ・リカバリ市場の規模は、IDCの調査によれば今後5年間で10億ドルに達するという。Internet 2のインフラを使ったヒトゲノム解析のシステム構築実験では、サンディエゴとワシントンD.C.の2点間を800Mbytes/secの転送速度で結ぶことに成功している。そのほか、医療分野でのX線データ送信など、いろいろ応用が期待される分野が存在しており、積極的に攻めていきたい。

ラス氏 日本の事例では、NTTドコモが日本のデータセンターと、サンディエゴ、ノースカロライナの北米2拠点を結ぶ、計3拠点間でのディザスタ・リカバリ・ソリューションの展開を進めている。地震などの自然災害の多い日本では、国内に複数拠点を用意しても、その複数拠点が損害を受ける可能性がある。そこで、このような形で別の拠点との高速ミラーリングを実現することで、ディザスタ・リカバリの信頼性をアップさせている。日本では他のメーカーもこのソリューションに興味を示しており、今後の広がりが予想される。

(鈴木淳也/Junya Suzuki)

 

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米マクデータ

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