MSから見た、OpenOffice.orgが使えない理由

2005/4/13

 マイクロソフトは4月12日、「改めて考えるOfficeソフト、デスクトップOSの価値」をテーマにしたプレスセミナーを開催し、オフィス製品を選択する際は「互換性など可視化しづらいポイントの検討が重要」などと訴えた。マイクロソフトは、同じファイルをMicrosoft Officeと「OpenOffice.org」でそれぞれ開き、レイアウトの崩れなどが発生することを示すデモンストレーションも実施し、Microsoft Officeを利用することのメリットを強調した。

マイクロソフトのインフォメーションワーカービジネス本部 製品マーケティンググループ 土方飛鳥氏

 マイクロソフトはMicrosoft Officeが中心となったシステムから、ほかのオフィス製品に乗り換えることのリスクとして、ファイルの再現性に完全な互換性がないため、社内外のファイルのやりとりの障害になること、マクロやVBAを作り直す必要があること、従業員への再教育のコスト、ヘルプデスクの負荷の増大などを挙げた。マイクロソフトのインフォメーションワーカービジネス本部 製品マーケティンググループの土方飛鳥氏によると、「70%の企業が社内のOffice文書にマクロ、VBAを使っている」という。

 また、マイクロソフトのビジネスプロダクティビティソリューション本部の吉村徹也氏は、同じファイルをMicrosoft Office 2003とOpenOffice.org 2.0ベータで開き、ファイルの互換性を示すデモを行った。PowerPointで作成したファイルをOpenOffice.orgで開くと、文字のずれやレイアウトの崩れが発生。アニメーションの速度設定も変更されているようだった。また、WordやExcelで作成したファイルでも同様で、OpenOffice.orgを開くとレイアウトが崩れたり、グラフが正しく表示されないなどの結果になった。

 吉村氏は、「このまま使うだけならOpenOffice.orgでもいいが、編集後にMicrosoft Office形式で保存し、別のユーザーとファイルのやりとりが発生すると、Microsoft Officeでもレイアウトが崩れて表示されるなどの問題が出る」と指摘した。また、「OpenOffice.orgでレイアウトが崩れると考えて、生産性を上げるMicrosoft Officeの機能を使わなくなり、生産性を損ねる」と説明した。社内外で圧倒的に利用されているMicrosoft Officeの環境の中で、別のオフィス製品を使えば、さまざまな混乱が生じるリスクがある、というのがマイクロソフトの考え。

 マイクロソフトが理想とするオフィス製品の環境は、「クライアント環境の標準化」だ。社内にMicrosoft Officeと別のオフィス製品が混在する環境では、バージョン管理や修正プログラム適用の複雑化で「保守が煩雑になる」(土方氏)。また、部門単位やユーザーごとにソフトウェアを購入することになり、結果的に導入コストが増大する。

 対して、クライアント環境をMicrosoft Officeに統一すれば、セキュリティの維持やユーザーサポートの統合、運用管理の容易化でコストを抑えることができるという。高額と指摘されているMicrosoft Officeのライセンスも、ボリュームライセンスなどを利用することで、バラバラに購入するよりも安くできるとしている。

 ただ、オフィス製品を統一するというマイクロソフトの考えは、ユーザーや他社からは“ベンダによる囲い込み”と映るケースもある。一方で、米アドビシステムズが開発し、文書フォーマットの標準の1つとなっているPDFに対しては、囲い込みの批判はない。アドビがAcrobatを販売しながらも、PDFの仕様を公開し、さまざまなアプリケーションやサーバ製品での利用を認めているからだろう。マイクロソフトもWordのXML形式フォーマット「WordML」の仕様を公表したり、Microsoft OfficeでXMLを出力できるようにしているが、十分な理解を得ているとはいえない。自社製品の普及を図りながら、囲い込みの批判を避けるにはどうすればいいのか。“改めて考える”必要があるのかもしれない。

(@IT 垣内郁栄)

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