六本木ヒルズ某社長に教えたい? 通信と放送、融合の実際

2005/4/20

 通信と放送の間に存在する壁を突き崩すのは、マネーゲームではなく視聴者のライフスタイルの変化かもしれない。VoD(Video on Demand)のシステム・インテグレーション(SI)を中心に手掛けるエム・ファクトリーの経営・総務本部財務部部長 長井俊史氏は、通信と放送の融合についてそう予想する。

エム・ファクトリーの経営・総務本部財務部部長 長井俊史氏

 エム・ファクトリーは1997年に起業したベンチャー企業。2003年に六本木ヒルズに移転してからセキュリティ製品やCRMパッケージのSIも手掛けるようになった。IT業界の情報が集まってくる六本木ヒルズの“ヒルズ・アドバンテージ”を背景に、「単なるSIerの枠を超えた“目利き”として、技術提供のみに留まらないワンストップサービスを提供したい」(長井氏)と意欲的だ。

 同じ六本木ヒルズにオフィスを構えるライブドアとフジテレビが繰り広げた買収騒動で、通信と放送の融合が再び話題に上っている。通信と放送の間には、法律や権利関係という高い壁が立ちはだかっている。長井氏も「放送業界が持つ既得権益体制から脱却するのは難しい」と分析する。

 しかし、VoD事業を展開してきた経験から「放送そのものがなくなることはないが、10年以内に両者の融合は果たされるだろう」とにらんでいる。実際、VoD事業は未だに投資フェイズであり、位置付け的には「インフラのおまけ。ユーザー課金によってペイできるものではない」(長井氏)という。

 それでもマーケットはそれほど悲観的ではないという。長井氏は「キラーコンテンツがなくなったといわれているが、それはライフスタイルが変化したことにより国民共通のキラーコンテンツがなくなっただけ。1人1人、あるいはセグメント化された集団それぞれにキラーコンテンツは依然として存在している」という。

 例えば、HDDレコーダーの普及によるテレビ視聴のスタイルの変化が挙げられる。かつては、テレビの放送時間に合わせて家族のだんらんがあった。今では嗜好の多様化もあり、全ての番組をとりあえずHDDレコーダーに録画しておき、自分の都合に合わせて視聴するようになった。この結果、「CMはカットされるし、面白くない番組は途中で見られなくなる。コンテンツが希薄化すれば、CMも希薄化する。制作費を負担するスポンサーにとって今までの放送スタイルでは破綻しつつある」(長井氏)。

 選択肢が多様化していく今日において、相対的に個人が自由に使える時間はどんどん短くなっていく。ユーザーの嗜好は“流されてくる”受動的なメディアから、“選んで観る”能動的なメディアへと変化していくだろう。そのとき、エム・ファクトリーが持つVoDは有力な答えの1つとなる。

(@IT 岡田大助)

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